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「Windows as a Serviceの認知を広げたい」、日本マイクロソフトがWindows 10の法人向けビジネスを説明

「デバイス」「セキュリティ」など4つが注力ポイント

 日本マイクロソフト株式会社は7日、Windows 10の法人向けビジネスの現状について説明。「当社がダイレクトアプローチしている大手法人ユーザーについては、WaaS(Windows as a Service)の仕組みの理解や認知、適用が広がってきたと考えている。いまでは配信方法をどうすべきか、というところに関心が移行している」と語る一方、「中小企業においては、WaaSの認知については、まだまだ課題が残る」とも指摘。今後、パートナーを巻き込んで、WaaSの認知を浸透させている必要性を示した。

Windows as a Service
Anniversary Update

新たなサービスサイクル「WaaS」

 WaaSは、Windows 10で導入している新たなサービスサイクルの考え方。Windows 10は、まず、Windows Insiderへの公開を経てCB(Current Branch)がリリースされ、その後約4カ月後にCBB(Current Branch for Business)がリリースされて、法人などでの利用が促進されることになる。

 また、LTSB(Long term Servicing Branch)と呼ぶミッションクリティカルなどの特定用途向けも用意され、8月2日に公開されたWindows 10 Anniversary Updateでは、10月1日にLTSBの提供が開始されることになる。LTSBは、今後2、3年に1回のペースで新たなものが提供される予定だ。

 またCBは、春と秋の年2回のペースで提供されることになり、さらにCBBのサポートは、2世代先のCBが提供された時点で終了することになるが、実際には60日間程度の猶予が設定されているという。

 ただしこれまでのNovember Update(2015年11月)、Anniversary Update(2016年8月)では、このサイクル通りではなく、イレギュラーな形になっているのが現状だ。

WaaSのサイクル

 法人企業においてWindows 10を使用する場合には、WaaSの仕組みを導入することが前提となっており、法人側も、これまでにない対応が求められている。

 WaaSの配信方法では各社がそれぞれの状況に応じて、WaaSに対応したアップグレードの配信方法を模索しており、配布ポイントを大規模拠点に配置したり、展開当初は中央拠点にのみ配置したりといったように、すでにいくつかの事例が明らかにされている。

 法人におけるWindows 10の利用促進を図るには、WaaSに準拠した新たな仕組みを構築するとともに、新たな運用ルールを社内に浸透させる必要があるといえるだろう。

WaaSアップグレード配信方式の採用実例

法人向けWindows 10ビジネスの4つの柱

 現在、日本マイクロソフトでは、法人向けWindows 10ビジネスにおいては、「デバイス」「セキュリティ」「サービス」「ライセンス」の4つを柱として展開していることを示す。

法人向けWindows 10ビジネスの4つの柱

 日本マイクロソフト Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャーの浅田恭子氏は、「PCおよびタブレットの出荷は、2016年から成長に転じると予測されており、Windows 10搭載デバイスがこれに貢献することになる」と前置き。

 「Windows 10搭載デバイスでは、クールなデザイン、新たなエクスペリエンス、優れたパフォーマンスという3つの価値を提供することができる。Surfaceを導入したユーザーからは、格好いいデザインのデバイスを利用することは、企業のイメージ向上にもつながるとの声が出ており、これまでにはないニーズを生んでいる。また、タッチやペンだけでなく、CortanaやWindows Helloを活用した、いままでにない入力方法や、デバイスの新機能を活用した連携により、デバイスの価値を高めている。さらに、GPUの搭載や高解像度ディスプレイの搭載により、社内でしかできなかったような仕事が、外出先でもできるようになった。さまざまな形状のWindows 10搭載デバイスが、さまざまなメーカーから投入されているのが日本の市場の特徴であり、選択肢の幅を提供することができる」などと述べた。

多種多様なデバイスが提供されている
クールなデザイン、新たなエクスペリエンス、優れたパフォーマンスという3つの価値を提供
Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャーの浅田恭子氏

 さらに、Windows 10 Mobileの法人利用についても言及。「Windows 10 Mobileは、ビジネスモビリティのコアに位置づけられるものであり、今後もアップデートやサポートをしていく姿勢に変わりはない」とし、「開発部門は米国レドモンドに集約し、ビジネスモビリティエクスペリエンスの強化に注力。パートナーデバイスによるエコシステムも強化していく。マイクロソフトがモバイル事業をやめることはない」(浅田氏)とした。

 国内では12社から14機種のWindows 10 Mobile搭載スマートフォンが投入されており、三井住友銀行や北国銀行が導入。Windows 10搭載デバイスの活用と組み合わせて、営業力強化やワークスタイル変革につなげているという。

 Windows 10 Mobileが選択される理由としては、「Windows基幹システムとの親和性」「最新セキュリティ脅威への対策」「Continuumの活用による新たなワークスタイルの創造」の3点を挙げた。

Windows 10 Mobileへのコミット
国内で提供されるWindows 10 Mobileスマートフォン(発売予定含む)
法人への導入事例
Windows 10 Mobileが選ばれる理由

 2つめのセキュリティに関しては、Windows 10 Anniversary Updateによって、安心、安全で、セキュアなWindows環境が実現できたことを強調。「守るだけでなく、侵入されることを前提にして、いち早く脅威に対応できるようにしている」と述べたほか、3つめのサービスについては、Forrester Consultingの調査をもとに、「法人では、検証などに約4年をかけてから新たなOSを展開していたが、Windows 10では2年間で展開されるようになるだろう。Windows 10は2016年からは2年目に入ることになり、パイロット導入とともに、本格導入が開始される時期になる」などと語った。

 大手製造業のミッションクリティカル度が高いシステムでは、年2回の機能アップデートと月1回のサービス更新プログラムの実行において、自動化した形でのテストを必ず実施しているが、ミッションクリティカル度が低いものにおいては、手作業でのテストや検証をしない、といったルールを採用する例もあるという。

Windows 7のセキュリティ機能(左)とWindows 10のセキュリティ機能(右)
Windows 10の展開・導入
大手企業での採用例

 さらに、Universal Windows Platformを活用することで、アプリをさまざまなWindows 10デバイスで活用できるメリットも、法人導入にはプラスに働くとした。

Universal Windows Platform
Windows 10ソリューションパートナー

 なお、現在、Windows 10ソリューションパートナーとして、アイキューブドシステムズ、インヴェンティット、ウチダスペクトラム、NECネッツエスアイ、大塚商会、ジェナ、デル、東芝、日本ビジネスシステムズ、ピーエスシー、富士ソフトが参加。自社サービスと連携したソリューション提案を行っているという。「今後、Windows 10ソリューションパートナーは増えていくことになる」とした。

 最後の「ライセンス」の観点では、2016年8月1日から、Windowsのボリュームライセンスを、Office 365 Enterpriseプランとあわせたものに変更。Windows 10 Enterprise with SAは、Windows 10 Enterprise E3へと名称を変更したほか、同E3に、Windows Defender ATPを利用する権利を加えたものをWindows 10 Enterprise E5として新たに設定したことを説明した。

 さらに新たな製品として、CSP(Cloud Solution Provider)向けのサブスクリプションモデルとして、「Windows 10 Enterprise E3/E5 for CSP」を9月1日から投入。これまではWindows 10をオープンライセンスとして購入してもらう必要があったが、CSP向け製品では、Windows 10をサブスクリブションとして提供することになるという。

 またWindows 10 Enterprise Edition搭載のデバイスを含めて、トータル管理サービスをサブスクリプションモデルで提供するSurface as a Serviceを提供する考えも示した。

Windows 10の新しいライセンス
Windows 10 Enterprise E3/E5 for CSP
Windows 10 Enterprise E3 in CSPで実現するソリューション
デジタルトランスフォーメーション

 なお、SkylakeにおけるWindows 7および8.1のサポート終了時期を一部延期したことについては、「Windows 10の法人向けビジネスへのダメージはあるが、顧客の声を聞いた上での判断。今後、すべての企業にWindows 10を使ってもらいたいと考えている」などと述べた。

 日本マイクロソフトでは、今年7月からスタートしている同社2017年度において、重点分野として6つの領域を掲げるが、「法人分野でのWindows 10の普及」は、「お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進」「クラウド利用率の増加」などとともに、そのひとつに位置づけられている。