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「RED HAT FORUM」を包んだ熱気、レッドハットの勢い
(2014/10/15 06:00)
レッドハット株式会社は23日、「RED HAT FORUM 2014」を都内で開催した。
基調講演には、同社 代表取締役社長の廣川裕司氏や、米Red Hat 社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏に加え、招待講演として日産自動車のCIOである行徳セルソ氏が登壇。さらにエグゼクティブセッションとしてANAやJAL、NTT Com、中部電力も登場した。
また、個別のセッションやレッドハットによるミニセミナーに至るまで、OpenStackなどのプライベートクラウド技術が、新技術というより実際のエンタープライズ基盤として大きく取り上げられていた。
メインフレームやWindows Serverからの移行を促進
オープニングスピーチを兼ねて基調講演の最初に登壇した同社 代表取締役社長の廣川裕司氏によると、イベントに今年は3000人以上の登録者があり、年々急成長しているという。
レッドハット株式会社も成長を続けている。現在、設立から15年となる。50四半期連続で右肩上がりの成長をグラフで示し、その背景に「100万人を超える開発者が集まる、圧倒的なOSSの開発力」があると説明。「ビッグデータやクラウドなども、その中核がオープンソースから生まれている。これをわれわれは『オープンイノベーション』と呼んでいる」と語った。
また、同社がUNIXからの移行を中心として市場を拡大してきた一方、日本市場の特異性としてメインフレームがまだ多く残っていることを指摘。メインフレームからの移行を促進するために2013年に設立した「オープンソースインテグレーションセンター」について、「すでに4~5社がメインフレームからの移行を決め、移行を表明しているところが50社ある」と紹介した。
同時に、2015年にサポート終了となるWindows Server 2003の移行先市場も狙っており、「Windows ServerからRHEL 7への移行支援プログラム『ウィンドウズサーバ移行サービス』を本日開始した」とアナウンスした。
ユーザー企業主導でイノベーションが起こる
米Red Hat社CEOのジム・ホワイトハースト氏は、「いま何が変わっているのか。なぜテクノロジーがいまのようになっているのか」として、ITのイノベーションとそこにおけるRed Hatの役割について語った。
ホワイトハースト氏はまず、ハードもソフトもクローズドだった1980年代から、オープンスタンダードが生まれた1990年代を経て、インターネットの2000年代やクラウドの2010年代にはインターネットやOSSなどによって“真のオープン”が実現したと話し始めた。
それによって何が起こったか。氏は「金融機関がLinuxカーネルに手を入れて投資に最適化することも行なわれている。いわゆるWeb 2.0企業は、自分たちでOSSに手を入れたり新しく開発したりしている」と指摘。「ITのユーザーはベンダーより先に問題に気付き、ベンダーが解決するのを待っていない。ユーザー主導でイノベーションが起こっている」と論じた。
「産業革命でも、勝ったのは生産機械メーカーではなく、それを使って大量生産した企業だった。ユーザー企業が目の前の問題を解決していくという、小さな変化を積み重ねて、それが大きな波となる」(ホワイトハースト氏)。
しかし、このロジックでは、Red Hatも否定してしまうことにもなりかねない。ホワイトハースト氏は続けて、「もう一つ言っておきたいのは『テクノロジーの選択=革新の選択』ということだ。OSSには多数の選択肢があり、その中から適性なソリューションとなって勝ち残ったものがデフォルトのテクノロジーとなっていく」と語った。
ホワイトハースト氏はOSSのマイナスの面として、多くの企業に合わせて開発されたものではないことを挙げ、「ユーザー企業のニーズを吸い上げて改善していくなど、企業と開発コミュニティを橋渡しするのがRed Hatの役割だ」と説明した。
「OpenStackはもともとNASAが自分たちのために開発した。そこにRed Hatをはじめ多くの企業が、ユーザー企業のユースケースに合わせてコードをコントリビュートして作っている」(ホワイトハースト氏)。
もともとRHELも、日々変化するLinuxの開発に参加し、安定した製品としてサブスクリプション形式で提供するビジネスだ。「Red Hatは、パワフルなイノベーションの上にさらなる価値を提供する」と氏は自社を位置づけた。
ホワイトハースト氏は最後に、変化していくテクノロジーに対して、パブリッククラウドからプライベートクラウドまでのさまざまな選択肢を使ってユーザー企業がコントロールする「オープンハイブリッドクラウド」が重要であると主張。さらに、「企業や組織は単独ではテクノロジーの将来を予測できない。しかし、コミュニティの中から伸びるテクノロジーを見つけ、それを企業が活用できる形に落とし込むのがわれわれの役割だ。企業とコミュニティとわれわれが『連帯』することで、予測が可能となる」と語った。