【JPC 2010基調講演】マイクロソフトのクラウド、2011年度の注力分野

樋口社長の意気込みと膨らむパートナーの期待


代表執行役社長の樋口泰行氏
パートナーを最重視。「すべてのパートナーに新たなビジネスチャンスが」

 マイクロソフト株式会社は8日、Microsoft Partner Conference 2010 Tokyo(JPC 2010)を開催。代表執行役社長の樋口泰行氏が大勢集まったパートナーへクラウドに関するメッセージを語った。

 同社クラウド関連パートナーは驚くほどの急増ぶりだ。JPCに応募した人数も前年の1000名強から2100名に倍増。会場となった東京ドームシティのJCBホールは、当日台風9号による大雨の中でも、2、3階席まで埋まる大盛況となった。

 登壇した樋口社長は、「クラウドの流れにいち早く対応する必要性。それを日米ともに強く実感している。顧客はMicrosoftやパートナーのデータセンターにデータを預けることになるので、今まで以上に信頼が重要。そのためには、顧客やパートナーと同じ気持ちにならなければならない。しかし、これまでは逆にマイクロソフト社員の顔が見えないというご指摘をいただくことも多かったので、2009年からは組織の壁を壊し、製品をただ説明するだけでなく、血の通ったコミュニケーションを図る営業の基本に立ち返る努力をしてきた」と、この2年間を振り返る。

 その結果、「お客さまと向き合って親和性を高めようという社内の意識改革がだいぶ進んだ。また、Cheef Quality Officerを設置して品質ガイドライン化を徹底したことで、米国本社でも品質の意識が高まり、日本の品質に応えるのが一番の近道だとの認識も広がった」と手応えをにじませた。

 着々とクラウド事業に向けた基盤を整えるマイクロソフト。2011年度(マイクロソフトの会計年度は7月から)以降は、より中長期的な視点で日本市場へのコミットメントを開始する。そこには「クラウドといっても、日本においてすべてを海の向こうから実現できるとは思っていない。日本のお客さまの細かい要望に応えるためには、日本でしか解決できないことがある」との思いがあり、だからこそパートナー重視の姿勢を貫くわけだ。その万全な体制を整えるために、「3~5年のスパンをかけて挑んでいかなければならない」と意気込みも強い。

2011年度の注力分野
クラウドビジネスの加速に向けて

 具体的な2011年度の注力分野としては「クラウドビジネスの加速」「ソリューションビジネス推進」「PC活用の拡大」を挙げる。

 クラウドビジネスの加速では、「社内体制の強化」「パートナーシップの推進」「オファリングの拡充」を図る。社内体制の強化としては、「同社の社員の90%がクラウド関連事業に従事」という話がここ最近の講演からも有名な話だが、「全社員に自身がどうクラウドにかかわっていくか、何かしらのコミットを求めている。また法人向けクラウド専任部隊を設立し、日本の水準での品質チェックを必須とする取り組みも進めている」(同氏)とさらなる取り組みを紹介。

 パートナーシップの推進では、「認定パートナーのクラウド対応促進を図る。現在450社だが、2011年度内に1000社へ、3年後には全パートナー7000社を目標に広げていく。その中で新たなクラウド協業も創出し、いずれはオンプレミスと同等の規模までビジネスを拡大していく」(同氏)という。

 オファリングの拡充では、Windows Azureのボリュームライセンス、BPOS新バージョン、Dynamics CRM Online、PC集中管理オンラインサービスのWindows Intuneなどを提供予定。「ぜひ楽しみにしてほしい」(同氏)とした。

 いずれもパートナーが基本軸となる。2つ目の2011年度注力分野であるソリューションビジネス推進でも、「オンプレミスとクラウド双方でパートナーと一緒に付加価値サービスを提供していく。これもロングタームな話で会社対会社の関係のほか、ミドルウェアやプラットフォーム、他社製品との連携を進めるためには、より粒度を細かく技術者同士の交流も進める必要がある」として、パートナーとのWin-Winを強調している。

“クラウドプレイヤー”としてのマイクロソフトの優位性

 では、クラウドプレイヤーとしてのマイクロソフトの優位性とは何か。

 樋口社長は、オンプレミスで培った圧倒的な経験を挙げる。同社のクラウド製品は、オンプレミスと同じ開発環境・操作性を実現している点が特長だ。そのためオンプレミスの経験がそのまま生かせるわけで、「クライアントはWindows 7、サーバーはWindows Server 2008、クラウドにはWindows Azure。これらがシームレスに連携し、既存資産からの移行、連携、差し戻しが非常に簡単になっている」(同社)ことが他社との差別化要素となる。その上で「Microsoftはプラットフォームベンダーなのであくまでオープンに、個々のカスタマイズはパートナーとの連携で」というのが基本姿勢だ。

 Microsoft Worldwide Partner ConferenceやTech・Ed Japan 2010などのイベントでもクラウドを語ってきたマイクロソフト。それ以降、BPOSやAzureの採用を報じるニュースは後を絶たず、顧客やパートナーの期待が現実の行動となって表れ始めている。

 すでにMicrosoft Online Serviceの導入実績は、全世界で4000万ユーザーを突破し、日本でも有料サービスの利用者が25万ユーザーを超えた。パートナーも400社を突破、と好調さを伝える数字は枚挙にいとまがない。しかし、何よりも、台風による暴風雨をものともせず会場を埋め尽くしたパートナー参加者の数と熱気が、その好調さとかかる期待を如実に物語っている、そう感じられる樋口社長の基調講演だった。

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