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NFVでインフラは変わるか? インテルが進める未来のネットワークへの取り組み
ワイヤレスジャパン2015基調講演
(2015/5/28 06:00)
通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン2015」が、5月27~28日に東京ビッグサイトで開催されている。
27日の基調講演では、インテルの平野浩介氏が「NFVで変わるネットワークの未来 ~モバイルビジネスの成長を支えるインテルの取り組み~」と題して登壇。IoTなどを背景としたNFV(Network Function Virtualization)の必要性と、そこへのインテルの取り組みを語った。
NFVとは、通信キャリアなどのネットワーク機器の機能を、専用ハードウェアではなく、汎用サーバー上のソフトウェア技術によって仮想的に提供すること。NFVにより、迅速で柔軟な構成変更を実現し、集約率の向上にも役立つと言われている。
平野氏はまず、IoT(Internet of Things)について、シーメンスの高度駐車場管理システムやサンノゼ市のスマートシティなどの例をまじえて紹介。10年で、同じ性能のプロセッサの価格が60分の1に、ネットワークの価格が40分の1になったことを挙げ、「成熟度とインフラ、ビジネスモデルがちょうどかみ合ったタイミングでIoTが伸びている」と語った。
しかし、IDCのデータによると、現在ネットワークに接続しているデバイスが2014年時点ではまだ15%なのに対し、2020年に向けて急速に加速。2015年の150億デバイスから、2020年には500億台に急増するという。そのため、トラフィックの負荷が問題になると平野氏は指摘した。
さらに、現在のインフラの課題として、固定化された機器の組み合わせとなっているネットワーク、迅速な新サービスのプロビジョニングの必要、利用効率が上がらないストレージ、用途を決められたサーバーによるサイロ化されたシステム構成、エネルギー効率、そしてトラフィックの6つを挙げた。
「そのひとつの解がNFVです」と平野氏は言い、インテルのソフトウェア・ディファインド・インフラストラクチャ(Software-Defined Infrastructure:SDI)のビジョンと取り組みを紹介した。
このビジョンでは、ネットワークやサーバー、ストレージなどのリソースをリソースプールとして細分化。そしてサービス要件から自動的にアプリケーションを配置するオーケストレーションソフトウェアが、アプリケーションの属性をもとにリソースを自動的にアプリケーションに配分すると説明して、「こうした自動化技術が1~2年で実用化されるのではないかと思う。インテルではProof of Concept(PoC、概念実証)としていくつか開発している」と語った。
こうしたソフトウェア・ディファインド・インフラストラクチャを実現するための取り組みについて、「技術」「エコシステム」「オープンスタンダード」「ビジネス」の4つの柱から平野氏は語った。
「技術」としては、ネットワーク市場におけるインテルの技術として、CPU、ネットワークインターフェイス(NIC)、ソフトウェアの3つを紹介した。
特に、ソフトウェア化による性能低下の問題を解決するためにLinux上で高速なネットワーク処理を実現するソフトウェアキット「DPDK(Data Plane Development Kit)」を説明。「Xeonはコントロールプレーンには使われていたが、データプレーンにはまだ使われていなかった。データプレーンをソフトウェアで実現することで、NFVやSDNを推進する」と語った。
続いて「オープンスタンダード」。前述したインテルのDPDKがオープンソースで公開されているほか、OpenStackやOpen vSwitch、Open Daylightなど多くのソフトウェア・ディファインド・インフラストラクチャ関連ソフトウェアがオープンソースとなっている。そのほか、NFVやService Function Chainingなどがオープンスタンダードとして推進されている。平野氏は「通信技術は互いに接続するため、標準化が求められる」とし、さらに「標準化されることで競争が生まれ、コストが下がる。そこにエコシステムが生まれてネットワークインテグレータが育つ」と語った。
そして「エコシステム」としては、通信事業者やデータセンター事業者に向けたソリューションを開発する業界を横断した取り組み「インテル・クラウド・ビルダーズ」プログラムを紹介した。現在135社のパートナーが参加しているという。
この3つから、新しい「ビジネス」の創出が求められる。平野氏はこれについて「現在、モバイルは先進国で普及しているが、IoTはこれから。このIoTが新しいビジネスとしてNFVをけん引していくのではないか」と述べた。
こうしたNFVやSDNは、通信キャリアで実用段階に入りつつあり、商用利用がはじまるタイミングだと平野氏は言う。パイロット検証ではすでに世界で30件以上の事例があり、実際にNFVで通信インフラを作るという発表もいくつかなされているという。
通信キャリアでの導入イメージとしては、モバイルネットワークのコアシステムのEPC(Evolved Packet Core)を仮想化する例を紹介。その要素として、DPDKによるパフォーマンス向上も挙げた。平野氏は「専用ハードウェアのEPCを設置していたが、これをソフトウェアで実現する。これまでプロビジョニングには時間がかかっていたが、ソフトウェアを動かすハードウェアまで自動設定できれば、迅速にできるようになる」と語った。
最後に平野氏は「クラウド、IoT、ビッグデータが実用段階になり、2015年はソフトウェア・ディファインド・インフラストラクチャに移る最初の年となる。インフラを使った新しいビジネスがこれから花開く」と語って講演を終えた。