米HP、webOS搭載のスレートPC「TouchPad」をアジア地域で初公開
コネクテッド・ライフを提唱し、クラウドでシームレス活用
米Hewlett-Packard(以下、HP)は23日(現地時間)、中国・上海のShanghai World Financial Center(SWFC、上海環球金融中心)において、アジア・パシフィック地域の報道関係者およびアナリストを対象としたプライベートイベント「A NEW HP WORLD」を開催。webOS 2.0を搭載したタブレット端末「HP TouchPad」などを公開するとともに、同社の事業方針などについて説明した。
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中国・上海の上海環球金融中心で開催された「A NEW HP WORLD」 | 会場となった上海環球金融中心。101階建ての高層ビル |
■アジア太平洋地域で初めてWeb OSを公開
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パーソナルシステムズグループ アプリケーション&サービス担当のSteven McArthur上席副社長 |
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アジアパシフィック地域で初公開されたHP TouchPad |
HP TouchPadは、HPが昨年買収したPalmの「webOS」を搭載。2月9日にサンフランシスコで世界に先駆けて公開されていたが、アジア太平洋地域では今回が初めてのお披露目となった。
米HPのパーソナルシステムズグループ アプリケーション&サービス担当のSteven McArthur上席副社長は、「HP TouchPadは、新たな価値とエクスペリエンスを提供する製品。そして、HPが新たに提案するコネクテッド・ライフの先駆けになる」と位置づける一方、「HPは、約120種類のプリンタ、約120種類のPCを出荷しており、これらの製品との連動も、TouchPadの大きな特徴になる」などとした。
北米では今年夏の出荷が公表されているが、中国市場では年内と表現。日本市場については未定とした。
さらに、近い将来、webOSを搭載したPCの出荷計画があることも明らかにした。
加えて、開発キットの提供により、他のプラットフォーム向けに開発されたアプリケーションの移植を容易にしており、「開発環境を整備することで、すでに数100以上のアプリケーションがwebOS上に移植されている」などとした。
新たにHPが提案する「コネクテッド・ライフ」は、HPのハードウェア、ソフトウェアソリューションと、webOSを活用することでのイノベーション促進や新たな体験、さらにエコシステムを構築することで、シームレスなネットへの接続性を実現。リッチなアプリケーションを提供することにより、他社との差別化を図るものになるという。
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パーソナルシステムズグループ チーフテクノロジーオフィサーであるPhil McKinney副社長 |
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Windows 7搭載のスレートPCは北米市場向けにすでに出荷されている |
「個々のデバイスを利用するだけでなく、あらゆるデバイスがクラウドを通じてシームレスに連携することができる世界が訪れる。例えば、HP TouchPadと、webOSを搭載したスマートフォンのVeer、Pre3は、『SYNERGY(シナジー)』と呼ばれる当社独自の技術によって、双方のデバイスを重ねただけでデータの連携が可能になり、1人のユーザーが複数のデバイスを利用する環境で効果が発揮できるようになる。こうした点からコネクテッド・ライフの実現が可能になる」(米HP パーソナルシステムズグループ チーフテクノロジーオフィサー Phil McKinney副社長)などとした。
なお、webOSの今後の展開については、「基本姿勢としては、Windows 7のエンハンス機能のひとつとして提供するものであり、Windowsを置き換えるものでも、当社がWindowsビジネスをやめるというものでもない。パーソナルシステムズグループが展開するPCビジネスの99%はWindowsをベースとしたシステムの売り上げであり、マイクロソフトとの関係は変わらない。さらにwebOSを他社にライセンスすることも考えていない」(McKinney副社長)とした。
同社ではWindows 7搭載のスレートPCをすでに北米市場向けに発売しており、HP TouchPadはこれと一線を画し、webOSのみを搭載している。
また、「webOSは、コンシューマだけでなく、コマーシャル領域も狙っていくものとなる。当社には250社のエンタープライズアカウントがあり、こうしたユーザーに対して、エンタープライズが求めるセキュリティを確保した製品を投入していきたい」などとした。
さらにMcKinney副社長は、「12億ドルを使ってPalmを買収したのは、この分野で1位になるため。2位や3位になるために買収したわけではない。5年前には、HPはPC分野でも3位、4位だったが、それがいまは1位になっている。マーケットシェアや売上高など要素はいろいろとあるだろうが、とにかくwebOSでナンバーワンとなることを目指す」とした。
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webOSを搭載したスマートフォンのPre3 | webOSを搭載したスマートフォンのVeer |
■複数のデバイスがシームレスに接続し世界とつながっていく環境へ
一方、基調講演のなかでは、パーソナルシステムズグループ アジア太平洋・日本地域担当のJos Brenkel上席副社長が、コンシューマ製品ではデザイン、イノベーション、エクスペリエンスの3つが、コマーシャル製品では、イノベーション、エクスペリエンス、エコシステムがそれぞれキーワードになることを示しながら、「常にネットワークに接続される状態が提供されることになり、また、ポケットやバッグのなかに入っている複数のデバイスがシームレスにつながり、それによって人々が世界とつながる環境ができあがる。人々の生活をどう変え、企業の経済的進化をどう支援できるか。今回のイベントでは、それを実現するために、HPが今後1年間に発表する製品、サービス、技術を紹介していく」とした。
また、コンシューマ領域では、HP TouchPadのほかに、最大傾斜度60度を実現するHP TouchSmart 610 Consumer PCや、webOSを搭載したスマートフォンのVeerおよびPre3を発表。FOSSILとの協業によって開発した、あらゆる情報を集約できる腕時計のプロトタイプも披露した。
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パーソナルシステムズグループ アジア太平洋・日本地域担当のJos Brenkel上席副社長 | 壇上で公開されたwebOSを搭載したスマートフォンのVeer |
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McKinney副社長が披露したFOSSILと共同開発した腕時計のプロトタイプ | 最大傾斜度60度を実現するHP TouchSmart 610 Consumer PC |
さらに、HPの製品に触れたり、製品に対する問い合わせができたりする「トータルケアセンター」を、3月13日に中国・北京に開設するのを皮切りに、今後1年の間に、アジア太平洋地域に展開する計画を明らかにした。日本については、「量販店でHP Directplus Stationを設置しており、同様の役割を果たすことから、具体的な計画はない」という。
■これからの10年のトレンドは?
一方、Phil McKinney副社長は、「The Connected Life」をテーマにこれから10年の技術トレンドを、「Social Dynamics」、「Personal Entertainment」、「Intelligent Network」、「Gadgets」、「Ubiquitous Content」の5つの観点から予測。
10年後となる2019年には、「Social Dynamics」の領域では、ビデオによるコラボレーションが最も好まれるようになるVisual Collaborationの時代となり、「Personal Entertainment」では自分の好みを理解してデバイスが動作したり、必要な情報を自動的に入手したりできるIntelligent Solutionsの時代になるという。
また「Intelligent Network」ではネットワークが常に接続され、全世界のどの地域にいても、水や空気のようにネットワークサービスを利用できるPervasive Connectivityの時代に、「Gadgets」では持ち運んでいるデバイスがひとつに集約されるAmbient Intelligenceの時代、「Ubiquitous Content」ではデバイスが相手の名前などを認知し、最後にメールした日や会った日を理解し、人とのコミュニケーションを支援するAugmented IQの時代になるとそれぞれ定義。「こうした時代に向けて、HPは技術の進化に取り組む」とした。
A NEW HP WORLDでは、中国の地元報道関係者のほか、日本、韓国、台湾、インド、タイなどから約200人の報道関係者が参加。2月23、24日の2日間にわたって、新製品の発表や、HPのパーソナルシステムズグループのエグゼクティブによる方針説明などが行われた。