オラクル、Solaris 11の機能を解説するイベントを開催

IPS、ZFS、仮想ネットワークなどを説明、Solaris 11 Expressもアピール


日本オラクル株式会社 システム事業統括 兼 事業推進統括 専務執行役員 大塚俊彦氏

 日本オラクル株式会社は19日、エンタープライズOS「Solaris 11」の新機能を紹介するセミナー「クラウド時代を担う新世代OS Solaris 11」を開催した。

 Solarisはオラクルが買収したサン・マイクロシステムズにより開発されたUNIX OS。次期バージョンである「Solaris 11」が2011年内にリリースを予定されており、そのプレビュー版にあたる「Solaris 11 Express」が2010年11月に公開されている。

 冒頭のあいさつで、日本オラクル株式会社 システム事業統括 兼 事業推進統括 専務執行役員の大塚俊彦氏は、買収にともなう不安視に対して「Solarisはオラクルといっしょになることで、投資を継続し加速していくとラリーエリソンが約束している」とコメントした。


「Solaris 11 Expressは本番環境にも使える」


オラクル・コーポレーション インフラストラクチャ&マネジメント・プロダクト・マーケティング シニア・ディレクター Charlie Boyle氏

 オラクル・コーポレーション インフラストラクチャ&マネジメント・プロダクト・マーケティング シニア・ディレクターのCharlie Boyle氏は、「データセンターの進化を導くOracle Solaris 11」と題して講演した。

 Boyle氏はSolarisのミッションとして、性能、可用性、セキュリティ、管理の4つを挙げ、Solaris 11では、すべてが向上しうまくいくと語った。また、大塚氏と同様に「オラクルの買収により利用が加速する」とコメントしたうえで、パフォーマンスやスケーラビリティの向上、アップデート時のダウンタイムを最小限に短縮する拡張性、データ暗号化などのセキュリティ、強化されて仮想データセンターも構築できるようになった仮想化、柔軟性のあるプライベートクラウド構築などの最新の機能を紹介した。

 2010年に公開された「Solaris 11 Express」の対象ユーザーについて、Boyle氏は、「評価目的で無償で使うだけでなく、本番環境に使うこともできる。ほかのリリースと同じように商用サポートも受けられる」と語った。そのサポートについては、オラクルの一部になって「Oracle Premier Support」と「Oracle Solaris Premier」の2つに統合されたことを説明した。

 また、12月にSPARC上のSolarisがデータベースOLTPのトランザクションを計測するTPC-Cベンチマークを記録したと話したあと、その技術を基にした高性能サーバーの「SPARC Supercluster」や、基幹向け高性能サーバーの「SPARC Exalogicエラスティック・クラウド」といったサーバー機を紹介。さらにSPARC Mシリーズの投資を続けると説明した。

 最後に再びオラクルの買収に触れ、「われわれは、1つの会社として動いている。ハードウェアもソフトウェアもベストオブブリードで価値を提供する」と語って講演を終えた。

SolarisのロードマップSolarisのサポート体系。「Oracle Premier Support」と「Oracle Solaris Premier」の2つに



新機能を俯瞰的に解説


日本オラクル株式会社 システム事業統括 ソリューション統括本部 プロダクト&パートナーソリューション本部 マスター・プリンシパル・セールスコンサルタント 大曽根明氏

 日本オラクル株式会社 システム事業統括 ソリューション統括本部 プロダクト&パートナーソリューション本部 マスター・プリンシパル・セールスコンサルタントの大曽根明氏は、「Oracle Solaris 11 Express技術概要」と題して、Solaris 11(Express)の新機能と変更点を俯瞰(ふかん)的に解説した。

 まず、インストーラが一新された。GUIのインストールとテキストのインストールがサポートされるが、テキストのインストーラはまだ開発途中で設定できる項目が限られるという。多数のサーバーにインストールするための自動インストール機能も、従来のJumpStartではなく新しくAutomated Installerを開発した。

 パッケージ管理システムも新しいIPS(Image Packaging System)に変わった。IPSはネットワークからバイナリをダウンロードし、依存関係を自動的に解決してインストールし、GUIにも対応するという、最近のLinuxのような「いま風のパッケージシステム」だという。Automated InstallerもIPSを利用している。

 IPSはZFSの機能を前提としている。例えば、アップデート時にZFSのスナップショットをとってクローンした環境にパッチをあてる「ブート環境」の機能を持つ。これにより、ダウンタイムが最小になるほか、パッチに不具合があっても元のブート環境を起動することで元に戻る。

新しい自動インストール機能「Automated Installer」安全にアップデートするための「ブート環境」

 仮想化としては、ゾーンを拡張してIPSとの統合や、ゾーン単位の管理権限の委譲、管理ツールの強化などが紹介された。また、Solaris 10からの移行のためSolaris 10コンテナが最初から入っているという。

 大曽根氏が「ZFSと同じように業界にインパクトを与えるのではないか」と語る、Crossbow技術によるネットワーク仮想化は、1つのNICを完全に仮想化し、各ゾーンから専用の仮想的なNICに見せる。データセンターのネットワークを1台のサーバーの中に仮想的に再現することもできると説明された。NICの機能を最大限に活用し、最近のNICが持つ複数のリングバッファをゾーンごとに割り振ったり、帯域制限をかけたりといったこともできるという。

Solaris 10の実マシンを、Solaris 11上のSolaris 10コンテナに統合実ネットワークをサーバー内の仮想ネットワークに統合

 Solaris 10のアップデートリリースから登場したZFSファイルシステムも強化されている。Solaris 11ではインストーラがZFSに依存しているため、唯一のルートファイルシステムになる。重複排除などの機能も追加されている。

 ストレージではほかに、カーネルレベルでCIFSをサポートするほか、COMSTAR(SCSIターゲットを作るフレームワーク)によりサーバーをSANストレージにする場合を高速化した。

ZFSで重複排除をサポートSCSIターゲットを作るフレームワークCOMSTAR

 セキュリティ面では、デフォルトではrootがユーザーではなく役割になり、直接rootでログインできないようになった。

 パフォーマンスでは、NUMAのメモリと同様にI/OのメモリやバスとCPUの関係を考慮するNUMA I/Oをサポート。また、DISM(シェアードメモリ)の割当時間を短縮することにより、Oracleデータベースの起動時間を大幅に短縮したという。IPSによるアップデートの高速化のため、再起動時にハードウェアの初期化を回避してOSのみを再起動する技術も議論されていることも説明された。

セキュリティの拡張パフォーマンス向上

 ユーザーインターフェイスはLinuxに近づき、GUIがGNOMEベースのJDSから、通常のGNOMEに変更される。ログインシェルもデフォルトがbashになるほか、コマンドラインツール類もデフォルトのパス設定でGNUツールが優先するようになる。

 サポート中止もある。x86 32bitカーネルは終了する予定。GUIのCDE環境や、Zone lxブランドがなくなるほか、以前から廃止がアナウンスされていたOpenWindowsライブラリなどが正式になくなる。

 最後に注意が必要なこととして、Solaris 10からの直接更新はいまのところできないこと、OpenSolaris 2009.06からの更新は注意が必要であることが説明された。


IPS、ZFS、仮想ネットワークをそれぞれ解説

 大曽根氏の解説した新機能を、さらに各分野ごとに掘り下げた技術説明も行われた。

 日本オラクル株式会社の黒田俊介氏は、新しいパッケージシステムであるIPSを具体的に解説。実際にローカルに複製サーバーを立てたり、そこからパッケージを検索したりインストールしたりするところをデモした。

 日本オラクル株式会社の野崎宏明氏は、ZFSファイルシステムの最新機能を、暗号化機能と重複排除を中心に解説した。暗号化機能も重複排除もZFSに内蔵されているので、両社を組み合わせて使うこともできるという。

 オラクル・コーポレーションのNicolas Droux氏は、Crossbowによるネットワークの仮想化を解説した。仮想スイッチ機能や帯域幅制限、統計情報、不正パケット禁止、CPUプールへの割り当て、などの機能を持つ。また、オープンネットワークプラットフォーム技術により、仮想ネットワーク内でファイアウォールやルーター、ロードバランサー、ブリッジなどを構成できることも説明した。

日本オラクル株式会社 システム事業統括 ソリューション統括本部 プロダクト&パートナーソリューション本部 シニア・スタッフ・セールスコンサルタント 黒田俊介氏日本オラクル株式会社 システム事業統括 ソリューション統括本部 コミュニケーションソリューション本部 シニア・セールスコンサルタント 野崎宏明氏
オラクル・コーポレーション ソフトウェア・デベロップメント SolarisコアOS シニア・プリンシパル・ソフトウェア・エンジニア Nicolas Droux氏
関連情報
(高橋 正和)
2011/1/20 12:21