2~4ソケットサーバーで使える低価格・12コアの「Opteron 6100」


 3月29日に発表された、AMDのサーバー向けCPU「Opteron 6100(開発コード名:Magny-Cours)」は、リアルに12コアを搭載したCPUだ。3月17日にインテルが発表したXeon 5600番台が6コア(ハイパースレッディング機能で、仮想的に12コア)なので、サーバー仮想化やVDI環境での利用を考えると、非常に強力なCPUが登場したといえる。今回は、このOpteron 6100を紹介する。


Opteron 6100のアーキテクチャ

Opteron 6100のスペック

 Opteron 6100は、昨年発表された2ソケット向け6コアCPU「Opteron 2400シリーズ(開発コード名:Istanbul)」をベースにしたCPUだ。このOpteron 2400シリーズのCPUダイを2個搭載(マルチチップモジュール:MCM)したのが、Opteron 6100となる。これにより、8コアCPU(4コア×2)、12コアCPU(6コア×2)を実現している。

 CPUモジュールも、ほとんどIstanbulと同じモノが使われている。このため、コアごとに1次キャッシュ128KB(命令64KB+データ64KB)、コアごとに2次キャッシュ512KB、CPUモジュール全体で3次キャッシュ6MBとなっている。CPUモジュールが、Opteron 6100に2個入っているため、3次キャッシュは12MBとなっている。ちなみに、CPUモジュール間は、HyperTransport 3.0で接続されている。

 ただ、3次キャッシュは、全体で12MBとなっているが、MCMで構成されているため、6MB×2個分というべきだろう。1つのCPUモジュールが使用できる3次キャッシュは6MBしか利用できない。


Opteron 6100のCPUモジュールのデザイン図。Opteron 6100は、このCPUモジュールが2つマルチチップモジュール(MCM)で接続されているOpteron 6100の2つのCPUモジュールは、HyperTransport 3.0で接続されているOpteron 6100は、x16のHyperTransport 3.0が4組でている。このため、4ソケットのシステムを組んでも、すべてのCPUが1対1で接続される

 命令セットに関しては、Istanbulからの拡張はまったくない。また、仮想化支援機能のAMD-Vに関してもまったく同じだ。CPUのアーキテクチャとして進化するには、次世代のInterlagos(開発コード名)を待つしかない。また、インテルのXeon 5500/5600シリーズなどに入っている、Turbo Boost(負荷に応じて、CPUコアをクロックアップする機能)は、今回のOpteron 6100には入っていない。

 新しい仮想化支援機能としては、Opteron 6100側ではなく、昨年発表されたSR5600シリーズチップセット側でI/O仮想化機能がサポートされた。SR5600シリーズチップセットは、昨年の11月ごろに発表され、一部のOpteron 2400シリーズなどのサーバーで利用されていた。しかし、多くのサーバーベンダーは、Opteron 6100対応のサーバーから採用していくようだ。

Opteron 6100は、1CPUあたり4つのメモリチャンネルが用意されている。これにより、2ソケットサーバーで、最大24枚のDIMMメモリが搭載できる

 Opteron 6100で機能強化されたのが、メモリコントローラ部分だ。Opteron 2300/2400シリーズでは、DDR2 Registeredが使用されていたが、Opteron 6100から、メモリをDDR3に変更した(インテルがDDR3を採用したことで、メモリのコストが低下してきたことも大きな理由だろう)。

 また、Opteron 6100のメモリチャンネルは4本となっている。チャンネルあたり3本のDIMM(CPUあたり最大12本のDIMM)を搭載できるので、8GB DIMMを使用すれば、CPUあたり最大96GBのメモリを搭載できる。また、ローコストなUnbuffered DDR3メモリもサポートされている(ただし、Unbuffered DDR3を使用する場合、チャンネルあたり1本のDIMMとなる)。

 Opteron 6100で改良されたメモリコントローラは、1チャンネルあたり2本のDIMMをDDR3 1333MHzで動かすことができる(AMDのリファレンスデザインにおいて)。また、1チャンネルあたり3本のDIMMを搭載しても、1066MHzで動作する。もちろん、Low Voltage(LV) DDR3もサポートされている。なお、このOpteron 6100を最も高いパフォーマンスで動かすには、メモリを4本セットで増設する必要がある。チャンネルごとのメモリ枚数が異なると、動作するもののパフォーマンス的にデメリットが生じる。

 Opteron 6100は、2~4ソケット向けCPUのため、サーバー全体では2ソケットシステムで最大24本のメモリが搭載できる。メモリのコストを考えず8GBを24本使用すれば、192GBものメモリを搭載したシステムになる(4ソケットだと384GBになる)。ここまで、メインメモリの容量が大きくなれば、仮想化の集約率をさらに高めることができる。

Opteron 6100で強化された機能

 命令セットなどの機能強化は、Opteron 6100では行われなかった。しかし、パワーマネジメント関連では、いくつかの機能が強化されている。

 Opteron 6100では、C1EのPower Stateをサポートした。これにより、CPUコアアイドル時に、より低省電力のモードに移行する。さらに、CPUの発熱が高くなれば、自動的にCPUのクロック数を落とすP Statesがサポートされた。このあたりの機能は、デスクトップCPUでは当たり前になっているものなので、やっとサポートされたといえる。

 さらに、新しいAdvanced Platform Management Link(APML)がサポートされた。APMLは、Opteron 2400シリーズでもサポートされていたが、Opteron 6100では、パワーや温度をモニタリングするPTM機能、CPUをリモートで管理するRPMI機能がAPMLに追加されている。


魅力的な価格設定が特長のOpteron 6100

 12コアCPUとなったことだけが、Opteron 6100の特長ではない。価格設定もOpteron 6100の特長となっている。

 AMDはサーバー用CPUとして、1ソケット向けのOpteron 1300シリーズ、2ソケット向けのOperon 2300/2400シリーズ、4/8ソケット向けのOpteron 8300/8400シリーズを用意していた。しかし、4/8ソケット向けCPUはハイエンドサーバー向けとなり、市場全体で5%ほどのシェアしかなかった(2ソケットサーバーは75%を占めている)。

 そこで、2010年以降は、サーバー用CPUを1~2ソケット向けのOpteron 4000シリーズ(開発コード名:Lisbon)、2~4ソケットのOpteron 6000シリーズの2種類のサーバーCPUに整理した。

 つまり、2ソケットサーバーでOpteron 6000シリーズを使えば、Opteron 4000シリーズのCPUを4つ搭載したサーバーと同等になる。また、4ソケットサーバーでOpteron 6000シリーズを使えば、Opteron 4000シリーズを8つ搭載したサーバーと同等になる。このため、2/4ソケットのOpteron 6000シリーズは、以前のOpteron 8300/8400シリーズと同等の拡張性を持っているといえる。


Opteron 6100は、パフォーマンスや省電力性だけでなく、コスト面でも大きなメリットがある2010年以降、AMDはサーバーCPUを1/2ソケット向け、2/4ソケット向けの2種類に整理する。これにより、ボリュームゾーンの2ソケットサーバーのパフォーマンスアップと低コスト化を図る2011年には、次世代アーキテクチャのBulldozerコアを使用したInterlagos CPUがリリースされる。今回採用されたG34ソケットで、そのままInterlagos CPUが動作する予定だ

 価格の面でも大きく変更された。

Opteron 6100の価格。最も高価な12コアのOpteron 6176 SEでも1386ドル、最も安い8コアのOpteron 6128だと266ドルだ

 Opteron 8300/8400シリーズは、CPU1個あたり3000ドルを超えており、非常に高価だった。これに対し、今回発表された12コアのOpteron 6174(2.2GHz)は1165ドルと、非常にリーズナブルな価格設定となっている。また、8コアのOpteron 6136(2.4GHz)だと744ドル、同じく8コアのOpteron 6128(2.0GHz)だと266ドルとデスクトップCPU並みの安さだ。

 つまり、これまで4/8ソケット向けCPUと同等性能のCPUを、2ソケット向けCPUと同等の価格帯で販売することになる。


Opteron 6100のパフォーマンスは?

 Opteron 6100は、以前のSocket Fと異なり、新しいG34ソケットを使用している。このため、マザーボードも一新されている。

 発表の時点では、Opteron 6100に対応したサーバーは出荷されていない。そのため、AMDが発表会で使用したプレゼンテーションから、Opteron 6100のパフォーマンスを見てみる。

 SPECintやSPECfpなどのベンチマークで見ると、Opteron 6174(2.2GHz)は、昨年発表されたOpteron 2435(2.66GHz)と比べて2.2倍ほどのパフォーマンスを示している。

 Opteron 6174は、CPUダイを2個搭載され、CPUコア数が2倍になっているためパフォーマンスは、2倍になるのは当たり前と思いがちだ。しかし、CPUコア数が2倍になったとしても単純に2倍のパフォーマンスになるとは限らない。やはり、Opteron 2400のIstanbulコアがメモリにDDR2を使用していたのに対して、Opteron 6100のMagny-CoursコアになりDDR3を採用したので、システム全体のパフォーマンスがアップしているようだ。

 パフォーマンスと電力消費量を比較したデータを見ると、12コアのOpteron 6174とXeon 5680(Westmere-EP)は、ほぼ同じベンチマーク結果を出している。ただし、Opteron 6174は、消費電力が80Wに対して、Xeon 5680は130Wとなっている。それに価格的にもOpteron 6174のほうが安い。

 このデータに関しては、パフォーマンス面とCPUの価格に関しては、納得できる。しかし、消費電力に関しては、CPUが使用する最大値ということなので、実際には各CPUを搭載したサーバーに負荷をかけて、システム全体の消費電力を測ってみないと、一概にOpteron 6100が優位に立っているとは言い切れないだろう。

 とはいえ、これだけのパフォーマンスを持っていて、低価格なサーバーCPUというのは魅力だ。特に、CPUコア数が増えるため、仮想化する場合には、1台で多くの仮想マシンを動かすことができるだろう。


ADMが行ったSPECintとSPECfpのベンチマーク。12コアのOpteron 6174(2.2GHz)は、6コアのOpteron 2435(2.66GHz)の2.2倍のパフォーマンスが実現しているAMDのデータでは、Opteron 6100は、省電力性、パフォーマンスなどを考え合わせても、最もコストパフォーマンスのいいCPUだ
Opteron 6100の登場により、省電力性とパフォーマンスを高めつつ、コストを低下させているOpteron 6100は、昨年発表された6コアのOpteron 2400シリーズと消費電力は同じでも、パフォーマンスは1.6倍に達している

仮想化に最適なOpteron 6100

 Opteron 6100は、CPUコア数が今までとはケタ違いに増えるため、仮想化せずに1つのOSだけを動かすのはもったいないサーバーだ。仮想化を前提としたCPUといえる。

 さらに、4ソケット向けと2ソケット向けに同じCPUが採用されるので、Opteron 6100を搭載した4ソケットサーバーは今までと比べて非常に安い価格で購入できるだろう。最も安い8コアOpteron 6128(2.0GHz)を使用した2ソケットサーバーは、30万~40万円で購入できる可能性もある。安いからといって、パフォーマンス面で難があるわけではない。CPUコア数としては、16コア(8コア×2)のサーバーだ。6コアOpteron 2400搭載のサーバーと比べると、コア数が増えながらサーバーコストが安くなる。

 もう一つ重要なのは、Opteron 6100で採用されたG34ソケットは、2011年にリリースが検討されているInterlagos CPUでも使用できるという点だ。Interlagos CPUは、新しいBulldozerコアを使用した新世代のCPUだ。Interlagos CPUは、CPUコア数としても12/16コアとなり、パフォーマンス的にはOpteron 6100(Magny-Cours)をしのぐモノになるだろう。長期にわたり使用するサーバーとしては安心感が出てくる。


2010年以降のサーバーCPUロードマップ。2/4ソケットのG34ソケット、1/2ソケットのC32は、2011年にリリースされる次世代CPUのInterlagosやValenciaでも使われる2011年のInterlagosやValenciaでは、新しいCPUアーキテクチャのBulldozerコアが使用されるBulldozerコアは、2つの整数演算ユニットと1つの浮動小数点演算ユニットを1つのモジュールとしてコアが作られている



関連情報
(山本 雅史)
2010/3/30 00:00