仮想化道場

VDIの検証ラボでGPU仮想化を推進するデル

 デルが、2月末より東京支社に設置した「デルGPUソリューションラボ」は、GPGPUやGPUを利用したVDI環境のテストができるラボということで、多くの顧客が、システムの導入前にさまざまなテストを行っている。

 今回は、GPUソリューションラボの設備をお借りして、GPU仮想化を使ったVDIシステムについてテストした。

デルでは、東日本支社(三田)のデル ソリューションセンター内に、GPU仮想化の環境を用意している(以下、2013年に開催された、デルのグラフィック仮想化セミナーの資料より)

ワークステーションのVDI化を検討するワケ

 デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 部長 馬場健太郎氏によれば、GPU仮想化によるVDI導入のモチベーションとしては、「3.11などの大災害や、重要なCAD/CAMデータが盗まれるという事件がここ数年起こっているため、ワークステーションをデータセンターに設置されるサーバーに集約して災害対策を行う、あるいは簡単にデータが盗まれることを防ぎたい」(馬場氏)といったことが挙げられるという。

 多くの企業の環境では、開発効率を考えて、個々のエンジニアのデスクに設計用のワークステーションを配置しているケースが一般的だろう。しかし設計用ワークステーションは、セキュリティ面などからネットワークもオフィス向けのLANと切り離されていたり、メールソフトが入っていなかったり、インターネットへのアクセスができないようになっている。このため、設計用ワークステーションとは別にオフィス作業向けのPCをもう一台用意している企業も多い。

 確かに、セキュリティ面などを考えれば、こういった区別は必要だろうが、エンジニアすべてに2台のコンピュータやデスクスペースを用意するのは面積的にも大変だ。

 また、「重要なデータが入った設計用のワークステーションがデスクの足元にあるというのも、セキュリティ的にも大きな問題があります。3.11のような大災害でなくても、火事でデータが消失するケースもありますし、ワークステーション本体が消失しなくても、スプリンクラーが作動して消火用の水が散布され、ワークステーションがショートしてデータが消失することもあります。また地震が起これば、ワークステーションが破損することもあるでしょう」(馬場氏)といったリスクも、考慮されるようになった。

技術がニーズに追い付いてきた

 ワークステーションのVDI化を実現するための技術が進展してきたことも、導入を検討する企業が増えた一因だという。

 「GPUの機能をフルに利用するCAD/CAMソフトを利用するエンジニアリング ワークステーションには、VDIは不向きといわれてきました。このため、サーバーを使ってワークステーションを集約するVDIよりも、データセンターにワークステーションを設置してリモートで利用する形態が多かったのです」(デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 ビジネスデベロップメントマネージャの田上英昭氏)。

 しかし、VDI向けGPUカードのNVIDIA GRIDや、それに対応した仮想化製品の登場により、GPU仮想化のVDIソリューションが現実的なものになってきた。

 「GPU仮想化のVDIソリューションを使えば、複数台のワークステーションをサーバーに統合することができます。コスト的にメリットもありますし、フレキシブルな運用が可能になります。例えば、数百台のワークステーションで設計を行っている企業でも、設置されている数百台すべてがフルで稼働しているわけではありません。GPU仮想化とVDIを使えば、必要なユーザーに必要なGPUパワーを届けることができます」(田上氏)。

 一方で、副次的なメリットも生まれている。

 「ストレージに関しても、ワークステーションのローカルストレージでなく、サーバーファームの高い性能を持つストレージシステムが利用できるため、アクセス性能も高くなっています。ワークステーションのローカルストレージにCAD/CAMのデータを保存しないというポリシーを運用している企業においては、膨大なデータがネットワーク上に流れるため、ネットワークのトラフィックが逼迫(ひっぱく)するということもありますが、GPU仮想化によりVDIなら、クライアントPCやシンクライアントとの通信は画面データだけにあるため、ネットワークを圧迫するようなトラフィックにはなりません」(以上、田上氏)。

 このようなメリットがあるため、GPUの仮想化によるVDIを真剣に検討する企業がさらに増えてきたのだ。

(山本 雅史)