仮想化道場

ARMプロセッサとGPUに賭けるAMD

 日本がゴールデンウィークでお休みの間に、米AMDが今後のプロセッサに関するロードマップを一新した。

 今回の発表で最も大きなトピックは、x86プロセッサとARMプロセッサのピン互換を実現する(Project SkyBridge、開発コード名)ことだ。AMDでは、2015年のリリースを検討しているこの計画を、「Ambidextrous Computing」と銘打っている。

 本稿では、これを踏まえ、米AMDが発表したロードマップをひもといていこう。

64ビットARMプロセッサOpteron A1100が登場

 現在、AMDのx86プロセッサでは、メインストリーム向けのKaveri(開発コード名)が2014年1月に発表されている。一方、PS4やXbox Oneに使われている省電力プロセッサとしてTemash/Kabini(いずれも開発コード名)を提供しているほか、これらの後継プロセッサとしてMullins/Beema(同)も発表されている。

 KaveriとMullins/Beemaは、すべてGPUを内蔵したAPUで、GPUだけでなくメモリインターフェイスやPCI Expressなどを内蔵しているため、ボード上で必要となるチップセットは少なくなっている。

 特に、省電力プロセッサとなっているMullins/Beemaでは、タブレットなどのコンパクトなフォームファクターに対応するためSoC化されており、プロセッサ外部にチップセットは必要ない。

Mullins/Beemaは、省電力向けのx86プロセッサ。Puma+コアとGPUを内蔵したAPUになっている

 ARMプロセッサとしては、Opteron A1100(開発コード名:Seattle)という、ARM Cortex-A57ベースの64ビットプロセッサを2014年1月に発表している。

 64ビットのコアを4つもしくは8つ搭載したプロセッサになる予定で、GPUは入っていないが、AMDが買収したMicroServerベンダーである、SeaMicroのファブリックチップ(Freedom Fabric)や、10Gigabit Ethernet(GbE)×2ポート、メモリインターフェイス(DDR3/4 1866、最大128GBまで対応)、ストレージインターフェイス(SATA3×8ポート)、PCI Express Gen3 x8などを内蔵したSoCとなっている。

 さらに、ARMのセキュリティ機能の「TrustZone」(ARM-5ベースのセキュリティチップが搭載されている)、暗号化やデータ圧縮用のコプロセッサも内蔵されている。ちなみに、TrustZoneは、Mullins/Beemaでも採用されている。

 なおOpteron A1100は、すでにサンプルがサーバーベンダーに提供されているため、ハードウェアの設計などはほとんど終了している段階だ。

 今後、64ビットARM版向けのOSやアプリケーションの開発を待ってから、Opteron A1100プロセッサを採用したサーバーが、サーバーベンダーから発表されるだろう。AMDでは、第2四半期に量産提供するとしているので、そこから計算すると、実際にサーバーベンダーからOpteron A1100を採用したサーバーがリリースされるのは、秋から冬ごろになるのではと予想している。

2014年は、x86プロセッサとしてはKaveriとMullins/Beema、ARMプロセッサとしてはSeattleがリリースされる。3つのプロセッサで、ピンはまったく異なる
Opteron A1100は、ARMの64ビットコアのCortex-A57を最大8コア搭載し、メモリは最大128GB(DDR3/DDR4)をサポート。10GbE、SeaMicro Freedom Fabricなどが搭載されたSoCとなっている
ARM TrustZoneなどセキュリティ機能が入っている
Opteron A1100を使ったサーバー。マザーボードはマイクロATX。Facebookなどが提唱して作られたOpen Compute Project仕様のボードだ

(山本 雅史)