大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

リーダーにはメジャーリーガー級を起用? Dell SecureWorksがこれから日本で大暴れする理由

買収されたことで日本にも展開可能に

 Dellによる買収後、SecureWorksは、大きな変化を遂げている。

 ウィンクラー氏は、「Dellによる買収後のSecureWorksは非常にエキサイティングだ」と前置きしながら、「Dellのリソースを活用することで、インフラへの投資が加速されるとともに、市場への展開についても体制が強化された。それまでにはできなかったことが、Dellが持つ全世界での実績と投資能力により、実現されている」とする。

 従来は、北米および欧州の一部市場だけでビジネスをしていたが、Dellによる買収後、欧州市場への幅広い展開をはじめ、中東、アジア、豪州などの新たな市場への展開を開始。その一方、新たなサービス提供も開始している。SecureWorksの事業規模は、Dellによる買収後、3倍に拡大。社員数も750人から1600人に拡大した。現在、全世界75カ国以上でDell SecureWorks事業を展開。150業種以上の約4000社にサービスを提供している。

 日本での事業展開も、従来のSecureWorksの事業規模では実現しえなかったものだ。デルのリソースを活用することで展開できたといっていいだろう。

 「Dellの買収以降、変わった好例のひとつが、日本にSOCを開設したこと。セキュリティ対策は止めることができない。眠ることがないサポート体制が必要。日本でも、専任スタッフにより、24時間365日のセキュリティ監視が可能になり、検知、予測、対応、防御といった一連のプロセスをすべて提供できる」(ウィンクラー氏)。

 そして、2015年1月から、Dell SecureWorks Japanのジェネラルマネージャーにモルツ氏が就任し、日本に常駐。日本におけるDell SecureWorksの事業拡大をリードすることになる。

 この人事は、あえて例えるならば、現役のメジャーリーガーが、鳴り物入りで日本球界入りしたともいえそうだ。

 モルツ氏は、2003年にSecureWorks(当時)に入社。それ以来、12年間にわたり、SecureWorksの事業拡大に貢献してきた。北米のScureWorksのエグゼクティブチームの一員としての役割を担うとともに、セキュリティエバンジェリストとしても著名な人物で、1年間のうちに40週間は世界各地を飛び回り、サイバーセキュリティに関する講演や会議に参加。情報セキュリティに関する著書も多い。

 また、営業現場や経営に関する経験も豊富で、24歳のときには、CRMおよびSFAのソリューションを提供するEmerging Market Technology(EMT)を起業。その後EMTは事業を拡大して、Zland Corprationに事業を売却した経験もある。この経験をもとに、テレマーケティングやセールス、サービス戦略に関する著書や論文もあるという。

 こうした経験を持つ人材が、日本におけるDell SecureWorksの事業拡大を直接指揮することになる。1月に家族を連れて来日。腰を据えて、日本市場開拓に挑む。これは、日本のデルにとっても予想外の大型人事だったといえるだろう。そして、日本のデルの要請ではなく、アトランタに本拠を置くDell SecureWorksの強い意向が働いた人事だという点にも注目したい。それだけ、Dell SecureWorks自らが、日本市場を重視していることの証しだ。

 ウィンクラー氏は、「ジェフは、成長に対する強い意志を持つとともに、長年の経験と知識、そして、デリバリーに対する能力に長けている。また、サイバーコミュニティにおいても著名なジェフが日本に常駐することで、日本のサイバーコミュニティにおいても、Dell SecureWorksの知名度を一気に高めることができる。まず日本において、Dell SecureWorksの事業を成功させることが最優先課題。2、3年でその成果をあげ、その経験をもとに、また別の地域での事業拡大に取り組んでもらいたい」と期待する。

 日本でのDell SecureWorksの事業運営にかかわる陣容は、昨年時点でわずか6人だったが、2015年1月に、モルツ氏が赴任してから、6週間で12人の新たなエンジニアを採用。今後もさらに拡大させていく考えを示す。

 「日本の優秀なセキュリティ専門家を、ぜひ採用したい」と、モルツ氏は積極的な姿勢を示す。

(大河原 克行)