節目の年にインテルに的を絞ったNECのサーバー事業



 2004年度を振り返ると、NECのサーバー事業は、まさに節目の1年だったといっていいだろう。

 NECがメインフレーム事業に乗り出してからちょうど30周年、スーパーコンピュータ事業に参入してからは20周年、そして、IAサーバーであるExpress5800シリーズを発売してから10周年という節目を迎えた1年だったからだ。

 この節目となる年に、NECはいくつかの新たな方針を示したといえる。

 では、NECは、どんな方針を示したのか。

 見逃せないのは、昨年8月に発表した「プラットフォーム最適化ソリューション」により、サーバー製品群のすべてをインテルプロセッサによってラインアップすると明確に定義したことだ。

 ACOS-4では、Itanium 2の搭載によるIPFプラットフォームの採用や、インテルチップを搭載したUNIXサーバー「NX7700i」を新規に投入。さらに、IAサーバーでもExpress5800シリーズでEM64Tプラットフォームを採用すると発表するとともに、ブレードサーバーでもEM64T対応を発表するといったように、あらゆるサーバー製品群でインテルアーキテクチャを採用した。

 節目の年に、NECがとったサーバー事業の新方針は、まさに、インテルとの運命共同体という選択肢だったといっていい。


メインフレームでの方向性示す

Itanium 2を搭載したメインフレーム「i-PX9000」

 とくに、30周年を迎えたメインフレームのACOS-4で、Itanium 2の採用を発表するとともに、今後もIPFをベースとして、メインフレーム事業を進化させる考えを明確にしたのは特筆できるだろう。

 IPFへ移行後も、これまでACOS-4上で利用されていたアプリケーションおよび周辺機器とは、完全なバイナリ互換を維持。過去のACOSユーザーの投資資産を保護することができる。また、HP-UX、Linux、Windowsも、CPUやメモリを共有させて同時に動かすことを可能とし、社内に分散したリソースの融合も可能となる。

 ACOSの将来性に不安を抱いていたユーザーに対して、長期的に活用できるプラットフォームを提供することをコミットしたといえるものだ。さらに、ユーザーが必要に応じてオープンに移行できる環境を整えたことも大きなポイントだといえる。

 このように、同社ではユーザーが投資したACOS資産を継続維持できること、そして、オープン環境へ移行する体制が整ったことを強調するが、それに加えて、もうひとつのポイントも強調する。

 それは、メインフレームで培った安定稼働というノウハウを引き続き継続している点だ。

 30年間にわたるメインフレーム事業で培ってきたビジネスコンティニュティを実現するためのあらゆるノウハウが、IPFベースのACOSシリーズにも継続されている、というのだ。

 NECがいうように、メインフレームとしての絶対的信頼性を、IPFベースでいかに実証でき、それをユーザーの共通的認識として早期に定着させられるかどうかが鍵といえる。


10年を迎えたIAサーバーも進化

10年間の取り組み

水冷方式を採用した「Express5800/110Ca」

ブレードサーバー「Express5800/120Ba-4」

 もうひとつの注目点は、10年の節目を迎えたIAサーバー「Express5800シリーズ」の進化だ。

 とくに、10月には、Express5800シリーズの製品ラインアップを一新。57機種を一気に投入して見せたのも過去には例がないものだ。

 ここでは、IAサーバーとしては、業界初の水冷サーバーを投入。従来、CPUファンの回転で45~50dBだったサーバーの騒音を、CPUファンを排除することで、30dB以下の静音化を実現し、一般オフィスだけに留まらず、店舗や図書館、病院といった騒音が嫌われる場所においても、サーバーを設置できるようにした。

 同社では、すでにメインフレームやスーパーコンピュータで、水冷技術を実用化した実績を持っており、このノウハウをIAサーバーに生かした格好だ。

 さらに、低消費電力に対応した製品としては、ノートPC並の25Wの省電力化を実現したブレードサーバーを投入。データセンターなどの大量のサーバーを導入する案件にも威力を発揮する製品を品揃えした。

 ここには、ノートPCなどで培った集積技術、省電力技術が生かされているといえる。

 そのほか、防塵対策などを向上させたサーバーをラインアップするなど、あらゆる場面に導入できるIAサーバーを品揃えして見せた。

 これに加えて、同社独自の「VALUMOウェア」によって、「可視化」、「コスト削減」、「柔軟性強化」、「経営基盤強化」という4つの観点から、サーバー統合や運用プロセス管理に至るまでの一貫サービスを提供。サーバーのリソースを動的および静的に分配することが可能になり、効果的なサーバーリソースの活用も行えるようになり、これも、Express5800シリーズの安定稼働を支えることになる。

 過去9年のうち、8年間をトップシェア維持してきたNEC。2位のデルとの差は年々縮まりつつあるが、10年目となる新年度も、一新したラインアップと、独自ミドルウェア群との組み合わせで、トップシェア獲得に強い意欲を見せている。


Linuxで基幹システムに挑む

 NECのサーバー事業においては、Linuxへの対応をより明確に打ち出した点も大きなポイントだ。

 これまでにも、すでに1200サイト、2万5000台のLinuxサーバーを出荷し、約25%の市場シェアを獲得しているNECだが、今年度は、Linuxを用いたミッションクリティカルシステム分野への取り組みにさらに加速がついたといえる。

 NECでは、「NEC エンタープライズLinuxソリューション for MC(ミッションクリティカル)」を発表。さらにサーバー、ストレージ、ミドルウェアを含めたトータルシステムとしての高可用性を実現する「システムサポート/HAサポート」の対象にまでこれを広げ、サービスの側面からもLinuxを強力にサポートする体制を整えている。

 加えて、NX7700iでもLinuxによるミッションクリティカル環境への対応を実現。さらに、VALUMOウェアでも、Linuxへの対応を加速させ、自律的運用や、高可用性などを実現する考えだ。

 Linuxを大規模ミッションクリティカル分野に活用するという動きは、先進的ユーザーに限られたまだひと握りのものだといえるが、この分野に対して、早い段階からコミットすることで、Linuxのリーディングカンパニーとしての印象を高めたい考えだ。


2005年度はどうなるのか?

 NECは、4月から始まる新年度において、2004年度に打ち出した新たな製品群を核に、サーバー事業を加速する考えだ。

 Express5800シリーズにおいては、EM64Tをベースとした製品群の強化が想定されるのに加え、IPFベースのハイエンドサーバーも引き続き強化されることになるだろう。

 さらに、オンデンマンドやアウトソーシング、グリッドなどに対応した製品群の品揃え強化も視野に入れている。

 一方で、海外への展開をいかに強化するか、サーバー事業における収益性をいかに改善するかといった課題があるのも事実。

 いずれにしろ、インテルプラットフォームをベースに方向性が明確になったNECのサーバー事業は、これをベースとした全方位での製品強化を進めることになるのは間違いなさそうだ。

関連情報
(大河原 克行)
2005/3/28 14:56