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デルのパートナービジネスは今度こそ本気なのか? 8月に就任した松本光吉副社長インタビュー

 デルが、日本におけるパートナービジネスを、本気になって加速させる考えだ。

 8月1日付けで、デルの執行役員副社長に松本光吉氏が就任。パートナー事業本部長を兼務し、デルが最重点課題に掲げるパートナー事業の拡大を陣頭指揮することになる。パートナービジネスを加速するための技術営業の増員なども進め、100人規模の人員を新たに採用。2018年までに、パートナービジネスを倍増させるとともに、日本におけるパートナービジネスの構成比を5割程度にまで引き上げる考えだ。

 松本副社長は、2010年4月にインターネットイニシアティブ(IIJ) 執行役員、マーケティング本部長に就任。2014年4月からは、IIJ America Inc. President&CEOとして北米事業を統括し、情報通信業界での活躍が直近の実績だ。

 だが、もともとは、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)で長年の経験を持ち、2001年には同社執行役員に就任。コンパックコンピュータとの合併プロジェクトを担当するとともに、営業およびパートナー戦略の企画に従事した。2002年以降、サーバ事業部長、企業向け製品営業統括、法人PC営業・マーケティング統括を歴任し、コンピュータ業界のパートナービジネスにも経験を持つ人物だ。

 松本副社長は、「グローバルでは、すでにPC以外の販売比率が半数を超えている。これは、ソリューション販売が中心の企業へと転換していることを意味するとともに、パートナーを通じたビジネスが半分以上になっていることも意味する。ダイレクトビジネスモデルのデルというイメージは、すでに実態とは異なっている」と前置きし、「日本においても、すでに3割がパートナービジネスによるもの。グローバルと同じ体制に向かって進んでいる」と語る。

デルの執行役員副社長、松本光吉氏

ソリューション強化がパートナー展開につながる

 米Dell本社は、2007年以降、買収戦略を加速。これまでに2兆円規模の買収投資を行っており、ソリューションプロバイダーへの転換を図っている。そして先ごろ、米EMCの買収を発表。買収金額は670億ドル(約8兆円)とされ、IT業界最大の買収として話題を集めている。

 こうした買収によるソリューションプロバイダーへの転換にあわせて、デルは、パートナーとの連携を強化。これが、ここ数年で、パートナービジネスが一気に拡大した要因のひとつとなっている。

 「セキュリティ、ネットワーク、ストレージ、仮想化といったソリューション製品群の品ぞろえが増えるとともに、よりユーザー企業に密着した提案が行えるSIerやVARなどの役割が重視されている。だが、デルにとっては、SIerやVARを支援できる体制が整いきっていない反省がある。ここに力を注ぐ必要がある」とする。

 デルでは、現在、SIerやVARを支援するために、技術営業担当者などを対象に、100人の新規採用を進めており、年内には採用をほぼ完了。パートナーに向けた支援体制を強化する考えだ。

 「各社が実施している認定制度取得に向けたコンサルテーションや教育支援、提案および見積もり支援などを提供する体制強化に力を注ぐ。国内ベンダーに比べると、まだまだパートナー支援体制が弱い。さらに、デルが持っているソリューションを伝えきれていない部分もある。経験を持ったエンジニア、コンサルタント、ソリューションに実績を持つ技術営業担当者などを積極的に採用し、早急に、パートナー支援体制を強化したい」と語る。

(大河原 克行)