大河原克行のキーマンウォッチ

「The Most Complete Cloud」を打ち出し、クラウド事業を加速する~日本マイクロソフト・樋口泰行社長 (3つのクラウドのデータセンターがそろった)

3つのクラウドのデータセンターがそろった

――いよいよ、日本において、Microsoft Azureに続き、Office 365、Dynamics CRM Onlineを加えた3つのデータセンターが国内に設置されます。これによって、日本マイクロソフトのクラウドビジネスはどう変化しますか。

 2月から順次進めてきたAzureのデータセンターの拡張の上で、そのリソースを活用しながら、新たにOffice 365およびDynamics CRM Onlineのデータセンターサービスを開始するというのが、今回の国内データセンター開設の発表内容となります。

 そして、Azureのデータセンターに関しては、全世界において1000億円規模で投資を行い、それを今後も倍増近い勢いで投資をしていくことを米本社が発表しています。日本においても、こうした戦略にのっとって投資が継続的に進められることになります。

 大手ユーザーの場合には、海外法人ではクラウドを利用していても、国内はオンプレミスという例が多かったのですが、その理由を取り除く要因が日本のデータセンターということになります。また、金融、医療、官公庁、自治体などでは、パブリッククラウド利用の要件として、国内にデータを保管することを前提する例が多いなかで、日本へのデータセンター設置によって、こうしたユーザーにも当社のクラウドサービスを選択肢として提供できることになります。

日本のデータセンターは、信頼性の高い拠点であることを優先した

 日本へのデータセンター開設は、日本で信頼が得られるクラウドビジネスを確立するにはどうしたらいいかという観点から、日本マイクロソフトがワンチームとなって、米本社に掛け合って実現したものです。ですから、単に日本にデータセンターを持ってくるというのではなく、東日本と西日本の2つのデータセンターを持つこと、国内最高レベルの耐震性を持っている拠点であること、Microsoftのソフトウェアを生かした高信頼性、高可用性を実現しているといった点にも徹底してこだわりました。

 ほかのクラウドプロバイダーの場合には、グローバルには名前が浸透していても、日本のデータセンターの体制はいまひとつだと感じる例もあると思います。国内にデータセンター拠点がないといった場合、あるいは拠点があっても、東日本大震災以前に設置され耐震性能に課題があるところ、海岸沿いに設置しており、リスクが大きいというところもある。日本マイクロソフトは、こうしたことも考慮し、パートナーが日本においてクラウドビジネスを行う上で、また、顧客が日本マイクロソフトのクラウドサービスを利用する上で、信頼していただけるデータセンターを確立したという点が異なります。

 全世界のMicrosoftにおいて、3つのデータセンターが、ローカルに設置されているのは日本だけです。その背景には、日本マイクロソフトがここ数年、高い業績を維持しており、日本の要求に対して、本社がそれを受け入れる土壌があったことがあげられます。

 さらには、サティアがCEO就任前に、データセンターを世界各国に設置する最終責任者を務めており、その際に、ローカルのニーズに応じたデータセンターの設置を推進する「Go Local」という考え方を打ち出していたことも見逃せません。インドや日本、オーストラリアへのデータセンター設置はそうした考え方をベースに行われてきましたし、しかも、サティアならではの意思決定の速さで、これが推進されてきました。

 これからも、日本のデータセンターに対しては需要に応じて継続的な投資を行い、パフォーマンスを維持し、ユーザーやパートナーにとって、信頼できる環境を継続することに力を注ぎます。

日本に3つのデータセンターを開設する日本マイクロソフト

――日本に3つのクラウドサービスに関するデータセンターが設置されることで、日本マイクロソフトのクラウドビジネスにはどんな弾みがつきますか。

 Office 365およびDynamics CRM Onlineは、これまでオンプレミスで実績のあったプロダクトであり、オンプレミスの実績と、日本へのデータセンター設置という新たな取り組みをベースに、クラウド化を一気に推進していきたいと考えています。

 Office365では、中堅、中小企業に対する提案を加速するなかで、パートナーとの連携も強化していきたい。Azureについても、同様にパートナー戦略を加速し、日本マイクロソフトの売り方そのものの変革を加速したいと考えています。目標は、クラウドビジネスで年率3倍の成長を遂げるということになりますが、これに加えて、いかに使ってもらうかといったことも大切であり、信頼性、可用性といった点でも顧客に満足していただく環境を維持することも大切だと考えています。

 クラウド時代に向けた新たなライセンス制度として、「Enterprise Cloud Suite」も発表しましたし、今後は、セキュリティ強化などについても継続的に発表することになります。

 一方で、米国で展開しているガバメント向けクラウドサービスも、今後は日本でサービスを開始したいと考えています。時期は明確にはできませんが、これは、当社の新年度が始まる2015年7月以降になる可能性が高いですね。ただ、官公庁、自治体向けには、日本にデータセンターを開設したことで、かなり敷居が下がっていますし、それによって契約が可能になるケースも多いですから、今後は、官公庁、自治体にも積極的に提案していきたいですね。

大河原 克行