“大人”になったPage氏が目指すのはJobs流? GoogleのCEO交代
Googleは1月20日、Eric Schmidt氏がCEO職を退任し、共同創設者のLarry Page氏が10年ぶりに同職に戻ることを発表した。創業13年目に入るGoogleは、いまや2万4000人の従業員を抱える巨大企業で、MicrosoftやAppleと戦わねばならないだけでなく、新興SNSなどに追われる立場にある。課題山積の中、Page氏は自分が立ち上げた企業を次のステージに移すことができるのだろうか。
■背景にはナンバー1になりたいというPage氏の強い意思
2010年第4四半期の決算報告と同時に明らかになったCEO交代は、誰の目にも突然に映っただろう。交代は4月4日付で、Schmidt氏は会長として政府や事業提携などの渉外を担当。もう一人の共同創設者Sergey Brin氏は、新しい戦略的プロジェクトに注力するという。
Googleは、大学で知り合ったPage氏とBrin氏が1998年に創業。検索でインターネットに大変革をもたらし、急成長した。当初はベンチャーキャピタルのアドバイスの下で経営していたが、2001年、2人より30歳近く年上のSchmidt氏をCEOとして迎え入れた。以来、Schmidt氏が経営統括、Page氏が製品、Brin氏が技術を担当するというトロイカ体制で拡大。2004年にはIPOを果たし、ネット業界のトップにまで上り詰めた。
このトップ交代について、Schmidt氏は公式ブログで「経営管理が複雑になってきている」と説明。マネジメント構造を簡素化し、意思決定をスピーディーにする方法について3人で話し合ってきていたことを明かしている。同日発表した四半期決算は、売上高が前年同期比26%増の84億4000万ドルと好調だったが、現体制ではさらなる成長は難しいと判断したようだ。
同社で「最高インターネットエバンジェリスト」を務めるVint Cerf氏もComputerworldに対し、この人事の目的を、意思決定プロセスを高速化するためにマネジメント層を細分化することと説明している。
それが、Page CEOにという決断にどうつながったのだろうか――。Newsweekの分析によると、背景にはナンバー1になりたいというPage氏の強い意思があったという。譲った方のSchmidt氏も、ブログで「PageがGoogleのリーダーとなる準備は整った」と記している。
■CEOとしてのPage氏の能力には賛否両論
Page氏は、Google検索を支える「PageRank」の考案者であり、その技術的な能力に異論を差し挟む者はいない。しかし、CEOとしてのPage氏の能力には賛否両論がある。
否定的な意見は、Page氏のマネジメント力や対外的な役割を果たせるのかに疑問を持つものだ。San Francisco Chronicleは、Page氏がこれまでほとんど表舞台に立ってこなかったことを指摘しながら、「天才だが、同時に内気だ ――社交的に不器用とはいわないまでも」とキャラクター面での不安を指摘する。
また、Motley Foolは、成功したソフトウェアエンジニアが大企業を経営できるのかとの疑問を投げかける。NewsweekはAppleのSteve Jobs氏と対比させながら、「Page氏はオタクで内向的、公式の場でのスピーチも下手」として、今回のCEO交代を「危険な動き」と見る。
一方で、Wall Street Journalは、元同僚の見解として、Jobs氏とPage氏の類似点を挙げている。「2人とも強い意思を持ち、時にぶしつけで、自分の野心的プロジェクトを実行するよう開発者(部下)に迫る」というものだ。
Piper Jaffrayのアナリスト、Gene Munster氏は、Page氏には先見の目があると評価。Googleのクリエイティビティを刺激する効果があるのではないか、とWall Street Journalにコメントしている。同紙の別の記事では、Page氏には10年以上の間マネジメント経験があり、CEOは長期的になるだろうとするアナリストの意見を紹介。国際営業兼事業開発を担当するNikesh Arora氏、製品管理担当副社長のSusan Wojcicki氏、同じく製品管理の上級副社長、Jonathan Rosenberg氏ら、脇を固める経営チームにも注目している。
■Schmidt氏は「大人のお目付け役が必要な時期は過ぎた」
設立者がCEOに戻るというパターンはこれまでにもいくつかあるが、結果は成功と失敗の両方がある。最も劇的な成功例は、AppleのJobs氏の復帰だが、Yahoo!のJerry Yang氏は退任に追い込まれた。Google株は、好決算を受けて20日は上昇したが、その後は下降気味で、トップ交代への市場の反応は、やや懐疑的、といえそうだ。
Schmidt氏は20日、Twitterで「大人のお目付け役が必要な時期は過ぎた」とつぶやいている。これは、Schmidt氏の2001年のCEO就任当時、Page氏とともにテレビ番組に出演したとBrin氏が、Schmidt氏について「正直に言えば、親的な監督」と発言したことに呼応する。当時28歳だったPage氏は38歳になった。
インターネットの世界は常に変化しており、Googleも新しい競争、すなわちFacebookやTwitterなどのSNS、Grouponなどの購入サービスとの戦いに直面している。とりわけ、プラットフォーム戦略を軌道に乗せたFacebookには、2010年に米国で訪問者数トップの座を奪われている。
また、外からの脅威だけでなく、「Google Wave」など、Google自身のイノベーションが失敗する事例もある。人材流出も課題と指摘されている。さらに、中国からの撤退、欧州や米国でたびたび持ち上がる独占禁止法やデータプライバシー関連の動きも頭の痛い問題だ。
“大人”となったPage氏の挑戦がこれから始まる。