米国政府初のCTOは誰に-Obama政権の要職にハイテク界の大物の名



 次期米大統領のBarak Obama氏が「米国のCTO」を探している。政府でテクノロジー関連の最高の権限と責任を持つ役職だ。来年1月に発足する新政権の目玉の一つであり、誰が就任するのかに大きな関心が集まっている。ハイテク業界のなかから選ばれるとみられ、メディアでは次々に大物の名が挙がっている。


 CTO職の設置は、Obama氏の公約であった。「政府とすべての政府機関に、21世紀にふさわしいインフラ、ポリシー、サービスを備える」という新政権の目標を実現するために設けられた役職で、「ネットワークの安全性を確保し、諸機関のCIO、CTOと協業して、最高の技術を利用し、ベストプラクティスを共有しながら取り組みを統率する」という任務を負う閣僚級の役職である。

 Obama氏は、ハイテク企業との相性もよく、選挙期間中から、いくつものシリコンバレー企業がObama氏支持を明確にしていた。GoogleのCEO、Eric Schmidt氏もその1人で、選挙後はBush政権からの政権移行経済顧問委員会のメンバーに起用されている。

 Schmidt氏はCTOの有力候補と目されていたが、11月7日、CNBCのインタビュー番組で、就任する意思はない、ときっぱり否定した。これを受け、メディアは次の本命探しにかまびすしい。

 よく名前が出ているのは、“インターネットの父”Vint Cerf氏(Googleチーフインターネットエバンジェリスト)、Reed Hundt氏(元米連邦通信委員会=FCC=委員長)、Ed Felten氏(プリンストン大コンピュータサイエンス学部教授)、Bill Joy氏(元Sun Microsystemsチーフサイエンティスト)、Shane Robison氏(Hewlett-Packard CTO)などなど。さらに、Microsoft CEOのSteve Ballmer氏や、Bill Gates氏の名前まで挙がっている。


 中でもほとんどの記事で共通して名前が挙がっているのが、LaunchBox Digitalの共同創業者、Julius Genachowski氏だ。ハーバード大でObama氏と一緒だった人物で、選挙キャンペーンを技術面からアドバイスしたといわれている。前民主党大統領のBill Clinton政権でFCCのアドバイザーを務めた経歴もある。同氏については、CTO候補ではなく、FCCの会長候補、あるいはCTOを選出する立場にあるという予想もあるようだ。

 これらのほとんどは、今のところ憶測の域を出ていないようで、まだ決定までにも時間がかかりそうだ。一方、メディアでは、CTOが直面する課題についても論じられている。

 多くが指摘するのが、政治特有の課題だ。Forbesは「初の役職なので、まずは構造づくりからはじめねばならない。これは、政治的な縄張り争いが激しい政府で、簡単なことではない」とする。省庁や政府機関のCIO、CTOに歩調をそろえるようリードしていくことは、かなりのチャレンジだろう。境界線の設定も必要だ。「外交手腕が問われる。これは、CEOとして成功している人物が必ずしも備えている資質ではない」とForbesは指摘する。

 CNETの編集長、Dan Farber氏は、政治的な課題のほか、Obama氏が掲げる26もの技術イニシアチブに触れ、技術マインドと各イニシアチブにおける作業管理能力が必須だと言う。「技術ポリシーのエバンジェリストであり、省庁間の渉外担当であり、人的資本のリクルーターである」とその役割を定義している。

 CIO英国版では、まず、マネジメントの問題と情報ポリシーを定義すべきだというNASA(米航空宇宙局)の元CIO、Paul Strassman氏のアドバイスを紹介している。Strassman氏は「技術はその次だ」と述べ、具体的な目標設定が急務としている。


 誰がなるにしても大変そうだが、IT業界人の期待も大きい。シアトルの開発者が立ち上げた“勝手サイト”ObamaCTO.orgは、新政権のCTOに望む取り組み課題の優先度をユーザーが投票できるようになっており、まだ見ぬCTOを予想する助けになりそうだ。現在、「インターネットのカバーエリア拡大とインターネットの中立性」「プライバシーの確保と愛国者法の廃止」などが上位に挙がっている。

 Obama氏は“Flickr Pro”であり、「Blackberry」を使いこなすという。選挙キャンペーンでも、インターネットをはじめとしたITの力を活用してきた。人口3億、50州を抱える国のCTOにいったい誰を据えるのか、Obama氏の判断が注目される。

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(岡田陽子=Infostand)
2008/11/17 09:00