Microsoftの新ブランド戦略? “Kumo”を取り巻くあれこれ



 先週、ブログ界を中心に「Kumo」という言葉が頻繁に取り上げられた。Microsoftが「Kumo.com」というドメインを取得したことが明らかになり、これが検索サービス「Live Search」の新しいブランド名ではないか、との観測が広がったのだ。Kumoは、日本語の“雲”または“蜘蛛(くも)”のことだともいわれている。Microsoftは、このKumoにどんな将来を見ているのだろうか?


 発端は、11月23日に掲示されたWindows関連のニュースサイトLiveSide.netのブログ記事だ。Kumo.comというトップレベルドメインがレジストラのCSC Corporate DomainsからMicrosoftに移り、同社の社内運用中のテスト用サイトで使用されているというものである。LiveSide.netは、10月にスクリーンショットがリークしたWindows Liveの新しいUIテストバージョンとあわせて、KumoがLive Searchの新しいブランドになるのではないかと伝えている。

 実は、このLive Searchの再ブランドとKumoの名を最初に伝えたのは、Microsoftウォッチャーとして知られるMary-Jo Foley氏である。Foley氏は今年8月、Microsoftがこの1年間に、社内で検討しているLive Searchの新ブランド名の候補として、“Bing”“Hook”“Kumo”の3つを挙げていた。ズバリ、これが表に出てきたわけだ。

 LiveSide.netがニュースを伝えた日、Foley氏はすぐ、これを取り上げた。Kumoがブランド名となるかどうかは断定できないものの、Yahoo!買収の可能性がさらに低くなったと分析している。TechCrunchもLiveSide.netの記事を紹介。Live.comの展開を分析しつつ、検索サービスでの再ブランドの必要性を説いている。


 しかし、KumoがLiveSearchの新ブランド名であるとする見方には、ほかのMicrosoftウォッチャーから異論も出ている。

 eWEEKでMicrosoft Watchブログを執筆するJoe Wilcox氏は、「Kumoはスマートフォンのコードネーム」と想像できるとしている。「Windows Mobile」の苦戦、「Zune」の開発を指揮した“Microsoftのクールガイ”こと、J Allard氏(デザイン&開発部門担当兼チーフ・エクスペリエンス・オフィサー兼最高技術責任者)が秘密のプロジェクトに移ったといううわさ、アプリケーションストア「Skymarket」(コードネーム)の開発などから、Microsoftは自社ブランドの携帯電話の開発を始めたと推測。Kumoはこれと関係があるというのである。

 Kumoからは、雲(=Cloud)、“蜘蛛(くも)”の巣(=Web)などが思い浮かぶだろう。PCWorldは、Kumo=雲から、クラウドコンピューティング分野の関係があるものだとみる。Microsoftは10月末に、クラウドサービス向けのWindows「Windows Azure」、専用の管理ツール「Zurich」、Web版Office「Office Web」などを発表している。“Kumo”ブランドが、オンラインファイル同期サービス「LiveMesh」とあわせたMicrosoftのインターネット戦略で使われるのではないか、というのである。


 こうしたさまざまな予想から浮かび上がってくるのは、Microsoftが現在抱えているさまざまな課題だ。すなわち、スマートフォン、クラウドコンピューティング/インターネットサービス、そして検索。これらはいずれも、ライバル各社との厳しい競争に直面している分野で、Microsoftが後れを取っている部分でもある。

 Microsoftは検索で、すでにブランド名変更という戦略を経験済みだ。2006年3月に「MSN」から「Live Search」にブランド名を変えた。が、シェアの減少は食い止められていない。

 現在、米国の検索市場でのLive Searchのシェアは11.4%。Googleは61.2%、Yahoo!は16.9%。Googleに大きく水をあけられている(Nielsen Online調べ、10月度)。つまり、少なくともLive Searchに限っては、ブランド名変更という戦略はあまり成功しているとはいえないのだ。Yahoo!買収の可能性はかなり低くなったが、すでに買収している自然言語の検索エンジンPowersetの活用など、技術部分でやるべきことがたくさんありそうだ。


 ところで、Foley氏が8月にLive Searchの再ブランドに言及したとき、Bing、Hook、Kumoのどのブランド名がいいかについて、読者のオンライン投票を行った。現時点では、「ブランド名はそのままでいい」が47%でトップ、次いで「新しいブランド名が必要だが、3つの候補以外の名称がよい」とする人は34%、「Kumo」は14%だった。

 Microsoftは、これまでのところKumoについて沈黙を守っており、本当に検索サービスと関係があるのかは不明だ。いったいどういう形で登場するのか、Microsoftウォッチャーならずとも気になるところだろう。

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(岡田陽子=Infostand)
2008/12/1 09:03