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次世代コンピューティングかけたレース Magic LeapとMicrosoftのARプラットフォーム

 AR(拡張現実)は、現実の世界の上に仮想のオブジェクトを重ね合わせるという点で、Oculus Riftのような没入型VR(仮想現実)とは異なる。このARに向けた動きが活発化している。Googleの支援を受けるAR企業Magic Leapが久々に新しい情報を公開した。また、ARを重要技術と位置付けて「HoloLens」で新しいイノベーションを起こすとするMicrosoftも、情報アップデートを行った。ARをめぐっては、さらにAppleの影もちらついている。

「公の場所でも安心して使える」デバイス

 Magic Leapは昨年10月にGoogleなどから5億4200万ドルという破格の出資を受けて一躍注目を浴びた“謎のAR企業”だ。その後も秘密主義は変わらないようだが、今月開催されたWall Street Journal主催のカンファレンスでは、いくつか重要なポイントを明らかにした。Wall Street JournalやEngadgetなどが伝えたCEOのRony Abovitz氏らの発言をチェックした。

 Magic Leapは現在、コンピュータが生成したイメージを実世界上に重ね合わせて投射するメガネ型のデバイスを開発中だ。限定した開発者に開発キットを配布して、それぞれアプリ開発を研究している段階という。これまでに作成されたアプリには、「デジタルのボールを投げるとあちこちへ飛ぶゲーム」「デジタルのコンロで、マカロニ&チーズの作り方を教えるゲーム」などがあるという。

 カンファレンスでは最新デモ映像を公表した。同社は今年3月、ホログラフのパネルを操作しながらメールを読んだり、仕事場でシューティングゲームをしたりする「Just another day in the office at Magic Leap」というデモ映像を公開したが、新デモはそれ以来となる。

 デモ映像の一つは、オフィスの宙に浮いてユーザーと会話する小さなロボット、もうひとつはデスクの上に浮かぶ、ミニチュアの太陽系の惑星運動だ。これらはメガネ型デバイスを通して、あたかもそこに存在するかのように見えるという。前回のデモ映像には、スクリーン上でのCG合成と見る専門家もいたが、今度は「ホンモノ」との声が強い。

 カンファレンスでのAbovitz氏の発言で特に注目したいのは「小さく、自己完結するコンピューターで、公の場所でも安心して使える」と説明したことだ。これは(1)外部に接続するコンピューターのような大掛かりな装置を必要としない(2)Google Glassのように、装着して“間抜けなオタク”と見られたりしない――という2つのこと示しているとみられる。

 Abovitz氏は「われわれは実際、数百万の製品を組み立てるべく準備を進めている」「いつとは言えないが、そう遠くない」と語り、相当数のデバイスを提供する計画であることを明かした。

 これはiPhone級の製品供給量にあたり、誇張のようにも思えるが、ありえない話ではなさそうだ。10月21日付の地元フロリダの経済紙、South Florida Business Journalは複数のソースから入手した情報として、Magic Leapが近く10億ドルの資金調達を行うと報じた。大規模な生産に入ることを示唆するものだ。

(行宮翔太=Infostand)