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HP撤退、Oracle本格参入…… パブリッククラウドの波乱

 Hewlett-Packard(HP) がクラウドでの方針を転換し、「HP Helion Public Cloud」を来年1月末で終了、パブリッククラウドサービスから撤退することを明らかにした。Amazon、Microsoftらの好調の影で、後発のHPが脱落したかっこうだ。そのHPのニュースの1週間後、今度はOracleがパブリッククラウドに力を入れる戦略を打ち出した。大型プレーヤーの変動が続く。

HPのパブリッククラウド撤退

 HPは昨年5月、OpenStackをベースとする「HP Helion」を発表し、パブリッククラウドに鳴り物入りで参入した。2年間で10億ドルをクラウドに投資し、18カ月のうちに、世界で20のデータセンターを開設するとしていた。ストレージ、ネットワークなどのハードに独自の商用OpenStackディストリビューション、サポートが売りものだったが、発表から、わずか1年半での撤退決定となった。これまでにどれくらいのリソースを投入したかは明らかにしていない。

 今後はプライベートクラウド、マネージドクラウドにフォーカスし、規模の大きなパブリッククラウドプロバイダーを利用したいユーザーには、クラウド構築ツールの「HP Helion Eucalyptus」の提供などでサポートしてゆくと説明。既にAWSやAzureをパートナーとして準備しているという。「勝てない相手なら手を結べ」という方向転換だ。HPのパブリッククラウドについては、今春にも撤退報道が出たが、同社は否定していた。

 HPの決定に対し、アナリストたちには「妥当な判断」との見方が多い。GartnerのアナリストLydia Leong氏は、HPは何年も前のAWSのまねでよいとしていた、とNetwork Worldに辛口のコメント。今回の件は、IaaSパブリッククラウドの市場で戦ってゆくには、何十億ドルもかけて超大型のデータセンターを世界中に構築し、さらに、それを運営するエンジニアのために膨大な投資をしなければならないことを、あらためて見せつけたと評した。

 Forrester ResearchヴァイスプレジデントのGlenn O'Donnell氏は「HPは超大型データセンターの世界では戦っていけないと感じたことだろう。実際、その通りなのだ」とComputerworldに述べている。

 また、HPでパブリッククラウドを担当したという元従業員の匿名アナリストは、Helion Public Cloudは、OpenStack関連の技術的問題に苦しめられたと明かし、「彼らは単に、スケールでどう戦うかを理解していなかったのだ」とWall Street Journalに語っている。

 一方、この決断がHPにどういう効果をもたらすのかについて、O'Donnell氏は「正直、分からない。だが、このことだけで彼らの未来の成功に打撃を与えるといったものではない。彼らには心配することがたくさんある」と述べている。

(行宮翔太=Infostand)