事例紹介
遅延やハウリングに悩んでいた学情 スマートスイッチでIP電話ネットワークを刷新
(2015/6/8 12:00)
1976年に大阪府・大阪市で創業した株式会社学情は、新卒向け就職活動情報サイト「朝日学情ナビ(あさがくナビ)」、20代の転職・就職者向け情報サイト「Re就活」、国内最大級の合同企業セミナー「就職博」のほか、人材紹介・紹介予定派遣サービスや採用広告制作サービスなどを提供する“人材サービスプロバイダ”である。
あさがくナビは、企業セミナーやインターンシップ(就業体験)などのリアルな活動と、SNSや就職情報ページなどのネットの活動を融合し、就職者と企業との「相思相愛」を作り出すことを目的として運営されている。2013年より、朝日新聞社と提携して多数のコンテンツ提供を受け、従来の単なる求人情報検索サイトではなく、就活生が社会人として「学び育つ」サイトとして生まれ変わった。
Re就活は、“第二新卒”と呼ばれる人材に着目し、若手の転職者をバックアップする情報サイトだ。就職先のミスマッチに悩む新卒就職者と、若手人材を獲得したい中堅中小・ベンチャー企業とをマッチングし、新たなチャンスを提供するサービスである。2004年という業界でも早い時期にサービスインし、60万人の登録会員実績を誇る。
QoS対応スイッチは高価な製品ばかり
大阪に本社を構える学情は、東京・名古屋・京都・福岡にそれぞれ本部・支社・営業所を構え、全国で事業を展開している。基幹システムを除く一般の情報システムは各拠点に委任し、各地域の環境に合わせたシステム構築・運用を柔軟かつ迅速に展開できる仕組みを採用している。
港区・虎ノ門の東京本部では、2014年に既存のPBXをIP-PBXに入れ替え、IP電話を導入していた。当初こそ問題なく運用できていたが、徐々に音声の遅延やハウリングなどの事象が発生するようになっていた。
現時点では85名ほどのオフィスであり、多少のトラブルはあっても事業への影響は小さかった。しかし2015年4月には14名の新卒就職者を採用することが決まっていた。電話による営業活動や顧客サポートが急増することが予想され、外線通話のチャネルも増設する予定だった。そのため、IP電話に関する不具合の早期解決が、ビジネスへの影響を考える上でも必要とされていた。
IP電話の音声遅延やハウリングは、ネットワーク機器に問題があると考えられた。学情・東京本部では、PCなどのLANと音声通話用のLANを分離しているため、データ通信が音声通話に影響していることは考えにくい。実は、音声ネットワークの末端、ビジネスフォンの接続には一般的なスイッチを用いており、音声品質を向上させる「QoS(Quality of Service)」機能には対応していなかった。
企画部 マネージャーの乾真一朗氏は、「QoS対応スイッチを導入すべきだということはわかっていたのですが、ほとんどの企業向け製品は高価すぎて手が出ませんでした」と述べる。
確かに、QoSに対応するインテリジェントスイッチは、高機能ではあるが高価なものが多い。しかし乾氏にとって、IP電話で安定的に通話できることが必要で、多くの機能は不要だった。そうした小規模環境にも適したインテリジェントスイッチは、なかなか見つからなかった。
愛読していたクラウドWatchでキャンペーンを発見
対策を探しているうちに、乾氏が発見したのがバッファローとインプレスが共同で行っていた読者モニター企画「オフィスの有線ネットワークをまるごと交換 『スマートスイッチにスイッチ』」キャンペーンである。
バッファローは、小規模から中・大規模環境まで、コストパフォーマンスのよいネットワーク機器を提供していることを乾氏もよく知っていた。実際、学情・東京本部では、ネットワークの一部にバッファロー製品を導入しており、安定的に稼働していた。
キャンペーン対象となっていたバッファローの「BS-GSシリーズ」は、SNMP(Simple Network Management Protocol)やRMON(Remote network Monitoring)のほか、VLANやQoSにも対応しており、従来のインテリジェントスイッチと同等の管理機能を持つ。そのうえ、業界でも安価な同社既存製品と比較しても価格は半分程度と、コストパフォーマンスのよい「スマートスイッチ」である。管理コンソールはWeb GUIに限られるが、小規模環境ならば、むしろ使い勝手はよい。
乾氏は「今後の規模拡大まで考えれば、1台あたりのコストは小さいほどよく、まさにこれだ!と思いました。動作保証が最大5年(編集注:標準では3年、ユーザー登録すると2年延長)と長期間で、Web GUIも使いやすそうなところが魅力的だと感じました。さらに、既存の100BASE-TX回線を1000BASE-Tにグレードアップするため、帯域幅を原因とした障害を回避できると期待しました」と振り返る。
乾氏は、すぐにキャンペーンに応募し、厳正な抽選を経て当選に至った。
的確なインテグレーションサービスでコストを削減
導入が決まると、まずは現状の把握と設計の検討のため、製品導入や保守を担当する株式会社バッファロー・IT・ソリューションズからエンジニアが派遣された。単に機器をプレゼントするという企画ではなく、メルコグループによるインテグレーションを含めたキャンペーンであったためだ。
「バッファロー・IT・ソリューションズのエンジニアには、現状を非常に細かく見てもらえました。各グループのデスクに伸びたケーブルはスパゲッティ状になっており、作業は困難を極めましたが、しっかりと把握して検討することができました。私は、ネットワークケーブルの再敷設が必要だと考えていたのですが、現状のケーブルを生かした設計を提案していただきました。今後の人員増強をかんがみた拡張性に富んだ提案で、非常に満足できるインテグレーションだったと感じます」(乾氏)。
学情・東京本部では、8ポートのBS-GS2008を9台、16ポートのBS-GS2016を7台、24ポートのBS-GS2024を1台導入して、既存の“島ハブ”を完全に入れ替える方法で導入することになった。これだけの台数を購入しても、キャンペーンの上限価格である50万円には達しない。また乾氏が述べているように、既存のケーブルはそのまま生かした設計のため、追加のコストは発生せずに済んだ。
その後、営業スタッフなどが不在となる夜間を選んで作業が行われることになった。スイッチを入れ替える作業のため、1台あたり数分程度の作業内容で済むと予想されたが、万が一のトラブルを回避するためだ。
作業は順調に進められ、3時間ほどで工事は完了。QoS対応のIP電話ネットワークが完成した。
学情・東京本部では、音声遅延やハウリングなどのトラブルもなく、快適にIP電話を利用できるようになった。スタッフの増員でも問題なく稼働しており、今後の拡張も柔軟に対応できる。Web GUIは使いやすく、運用も順調とのことだ。
「東京本部のIP電話は、本社を含めた他の拠点に先んじて実現したシステムであるため、この経験を横展開できると考えています。将来的には、ネットワークの無線LAN化も検討しています。今回の導入で、製品もサービスも非常に信頼性が高いことがわかったため、バッファロー製品も優先的な候補としたいと思います。さらに他の拠点にもノウハウを広げて、よりよい人材サービスを提供するためのインフラ構築を行っていきたいと考えています」(乾氏)。