事例紹介
「無印良品」の10年を支えるヤマハルータ・ネットワーク
(2016/3/11 06:00)
良品計画が提供する「無印良品」は、日用雑貨や食器、文具、衣服、家具・家電、食品など、シンプルで使いやすいデザインとこだわりの素材や品質、豊富な製品ラインアップがファンの心をつかみ、非常に人気の高いブランドである。
国内に直営店・商品供給店を含めて400店以上の無印良品店舗を運営するほか、海外では欧州・米国・アジアを中心に300店舗以上を展開し、商品のデザインや品質において高い評価を受けている。2015年12月にオープンした上海旗艦店では、開店時間前に100メートルもの行列が作られ、入場規制まで行われたことで話題になった。
昨今では、小売りだけでなく、カフェやキャンプ場などで独自のサービスを展開しており、幅広い層に好評だ。ネットストアを活用している読者も多いのではないだろうか。
良品計画では、各店舗にルータを設置して、POS端末や情報系PCのネットワークをセンターに集約している。そして、同社がインフラとして10年にわたって愛用しているのが、ヤマハルータである。
無印良品店舗を束ねるネットワークがヤマハルータによって形成されるようになったのは、2006年までさかのぼる。
同社では、それまでNTTのデジタル専用線「DA64」を用いて、各店舗からの接続をセンターで受け付けていた。主にPOS管理に用いていたとはいえ、非常に低速で、業務にも影響が出ていることが問題視されていたという。当時、高速なフレッツ光回線が広まりつつあり、通信費も低価格化が進んでいたため、乗り換えるのに十分な条件がそろっていた。
良品計画のインフラの運用を担当する情報システム担当 運用管理課長 安田俊治氏は、「ネットワークを切り替えようかというときに、NTTデータの『多店舗おまかせサービス』(当時)というものを紹介されました。このサービスで提供されていたのが、ヤマハの『RT57i』だったのです。店舗当たりのコスト削減も重要な要素であったため、運用を任せることができるうえ、ルータが安価であったことが魅力的でした」と述べる。
多店舗おまかせサービスは、SCSKが開発した「CarePlus RT-Master PRO」というヤマハルータ用の管理・監視ツールを活用し、多拠点を総合的に管理するものとして、2005年ごろから提供されていた。当時すでに330店舗を数えていた良品計画にとって、ぴったりのサービスであった。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 ビジネスソリューション営業部 営業担当 課長代理 村田佳菜氏によれば、「当時は、RT57iのように安価なルータで、多拠点のネットワークを支えるのにふさわしい機能を備えているものはほとんどありませんでした。さらにヤマハルータ専用のRT-Master PROを活用することで、コストを抑えつつ包括的な運用サービスを提供することができます。当時の名称や形態は用いていませんが、現在でもユーザーのニーズに合わせて同様のサービスを提供し続けています」という。
RT57iとフレッツ光に変更したことで、良品計画のネットワークは高速化と安定化を果たすことに成功した。当時はPOS端末の管理と発注処理などに利用するだけであったが、現在はメールやWebなどを含む社内インフラとしても活用している。
導入から10年がたとうとしているが、良品計画は現在もヤマハルータの愛用者であり、NTTデータもRT-Master PROを用いて安定的なネットワークサービスを提供し続けている。無印良品ブランドを支えるインフラと言っても過言ではないだろう。
RTX1210からRT57iまで、新旧混在でも安定稼働
現在、良品計画では、400店舗のうちの重要拠点としてとらえている25店舗について、2台ずつ「RTX1210」を導入して機器の冗長化を図っている。これらの店舗は、同社内でも特に売上が高い店舗で、最大の店舗では、数十台のPOS端末とPCやスマートデバイスが接続され、取り扱うデータも非常に多い。主要拠点では、ネットワークの停止がビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があるためだ。
一般的な店舗では、「RT58i」を標準的に利用しており、新しく開設する店舗については「NVR500」を優先的に導入している状況である。しかし実は、100台近くのRT57iが現在も稼働中という。
「NTTデータのサポートを受けながら、RT57iを使い続けています。というのも、壊れないからです。この10年で、もちろん故障で交換した機器はありましたが、大きな障害が発生することもなく、ヤマハルータは非常に安定的なネットワークを提供してくれました」(安田氏)。
良品計画のネットワーク設計から運用までを担当するNTTデータ ビジネスソリューション事業本部 ネットワークソリューション事業部 ネットワークインテグレーション統括部 インテグレーション担当 主任 桜井翔氏によると、ヤマハルータの最大の特長は、やはり「壊れない」ことであるという。単純な故障はもちろん、「バグが非常に少ない」ことでも優れていると評価する。
「トラブルが起きにくい要因の1つとして、製品のバージョンによる違いが小さいところもポイントです。良品計画では、RT57iとRT58i、NVR500、RTX1210を併用していますが、接続性はもちろん問題なく、運用においても大きな変化はありません。他社製品では、古い機種と新しい機種で操作性やネットワーク技術が大きく異なることも珍しくありません。ところがヤマハルータは、技術や思想がしっかりと継承されており、機能が追加されていても減ることはなく、困ることが少ないのです」(桜井氏)。
多くの店舗に多数の機器を展開する良品計画にとって、故障が少ないというのは大きなメリットだ。また、小売店に設置するという点でも、非常に重要な意味を持つ。
大型の店舗であればともかく、小規模な店舗では巨大なラックを設置することは不可能である。ルータは、レジ台の中などの熱や埃(ほこり)がたまりやすい環境に設置されるケースが多い。もちろん、店員が気にすることも少なく、たいていは放置状態だ。小さくて軽く、データセンターのように整った環境でなくとも安定的に稼働するヤマハルータは、良品計画にとって最適な製品だった。
ヤマハの思想を維持し続けてほしい
ヤマハルータは、マニュアルやリリースノートなどの豊富なドキュメント類がWebサイトから入手できることでも、エンジニアに人気が高い製品である。桜井氏も、「ヤマハはサポートページが充実しており、ネットワーク設計を行うときなどには設定例などを大いに活用しています。単なるマニュアルでは解決できないことも多いので、非常に助かっています」と述べる。
「ヤマハルータの気に入っている点として、独特のコマンドラインやコンフィグを挙げたいですね。シンプルな操作で済むように設計されており、管理者にとって使いやすい(ネットワーク)OSで、開発者のこだわりが見えてきます」(桜井氏)。
村田氏も、機能面で不足しているところはないと評価しつつ、円高によって海外ベンダー製品の高価格化が進む中、国産のヤマハルータには価格的にも安定的な供給を期待したいと述べる。
「私たちインテグレーターにとって特に重要なことは、製品を中心としたソリューションを短時間でユーザーへ届けることです。今後も、SCSKのような強力なパートナーとともに、安定的かつ迅速な製品提供を期待します」(村田氏)。
「今後、さまざまな要因でインフラ環境やネットワーク技術が変化していくことでしょう。しかし、新たな技術や手法の採用によって、設定や設計、機器調達が変化することは、私たちユーザーにとって大きな負担となります。ヤマハルータは、機種を問わず安定的かつ負荷を少なく運用できるところが特長です。ぜひ設計思想や技術仕様、安定的な製品の開発や供給、価格も含めて、維持し続けてほしいと思います」(安田氏)。
無印良品ブランドを支える安定したネットワークは、ヤマハルータによって作られている。今後も、良品計画のビジネスをサポートするインフラとして、活躍することだろう。