事例紹介

内田洋行の近未来オフィスで利用されるクラウド名刺管理「Link Knowledge」

「イベントでの名刺管理が格段に楽に」

オフィス事業本部企画部次長の矢野直哉氏

 オフィスの用品や構築を手がける株式会社内田洋行が2012年1月から入っている「新川第2オフィスビル」は、未来的な空間だ。フロア内の壁を最小限にして開かれた空間としており、机には書類が積み上がることもなく、PCの各種ケーブルが這い回っていることもない。

 これは、同オフィスへの移転にあたり、仕事のスタイルを全面的に見直した成果だ。その様子を顧客にも伝えるため、オフィスであると同時に、見学者を受け入れるショールームの役割も兼ねている。

 今回、Sansan株式会社による法人向けのクラウド型名刺管理サービス「Link Knowledge」を導入した事例として同オフィスを訪れた。単独のツールにとどまらない情報共有の取り組みについて、同社オフィス事業本部企画部次長の矢野直哉氏と、企画部企画課の角田昌子氏に話を聞いた。ハイセンスなオフィスの写真とともにその内容を紹介する。

徹底した電子化と情報共有で、どこでも仕事

 新川第2オフィスビルの内田洋行オフィスでは、管理部門を除き、社員は固定席を持たず、その日の仕事に合った場所で作業するようになっている。この制度は、共有機能を自由に使いこなすという意味で「Active Commons」と呼ばれている。この点について矢野氏は、「生産性の向上を目的としたもので、フリーアドレスとは似て否なるもの」と説明する。

 同オフィスでは各フロアに、個人作業用のスペースや、カフェ風のスペース、ファミレスのボックス席風のスペース、図面を広げて立ったまま打ち合わせできるスペースなど、さまざまな種類の席が用意されている。また、会議スペースも壁で閉め切られたところは少なく、移動しやすい机と椅子を自由に配置して使えるミーティングスペースも設けられている。

開放感あふれる業務スペース。さまざまな形状の座席が用意され、写真の左奥にはファミレスのボックス席も
こちらは図面などを広げられる大きめの業務スペース
移動しやすい机と椅子を自由に配置して使えるミーティングスペース
テレビ会議用のスタジオも

 一般的なフリーアドレスだと結局、時間とともに座る席が固定されてしまいがちだが、この空間においてはそんなこともなく、部門を超えたコミュニケーションが促進されている。ファミレスのボックス席風のスペースで朝会を開いている風景も頻繁に見られるという。落ち着ける雰囲気のその場にはBGMも流れ、まさに朝のファミレスやカフェといった様子だ。

会議室フロアもゆったりとした空間に
会議室の風景
会議室の利用状況。タッチパネル式となっており、使い終わったらその場でボタンを押して開放する。また、予約時間が来てもステータスが「入室中」にならない場合は自動的に予約がキャンセルされるといった仕掛けも

 社員は基本的にiPadやノートPCで仕事をする。ネットワークはすべて無線LANを使い、二重床やフロア内のネットワーク配線は排除されている。内線電話もすべてスマートフォンを使う。

 オフィスの設備も、iPadなどからWebインターフェイスでコントロールできる。たとえば、プレゼンのときの照明の操作や、ブラインドの操作などもできる。また、夜7時になると空調が止まることになっているが、残業する人は自分の使うエリアだけ空調をオンにでき、その様子はシステムにログが残る。これにより、同じ規模のビルと比べて半分以下の電力消費を実現すると同時に、気がねなく自分のやりたいことをやれるようになっていると矢野氏は語る。

iPadなどからオフィス設備をコントロールできる
フロアの点灯状況を確認
会議に集中したいときはトーンを落とすなど、照明はシーンに応じた微妙な調整が可能
そのほか空調やプロジェクタの操作やブラインドの開け閉めまでiPadで行える

 こうしたワークスタイルを支えているのが、「ペーパーストックレス」と「ナレッジシェア」だ。前者は「ペーパーレス」ではなく「紙を貯めない」こと。書類はすべて電子データの状態で保存する。オフィス移転にともなって古い書類を捨てたこともあり、ストック書類は71%削減した。ただし、印刷の量は移転前より増えているとのことで、矢野氏は「お客様に持参する資料が増えているかもしれません」と不思議がる。

 書類は電子化するだけでなく、積極的に共有する。営業担当が作成した提案書類などは、ドキュメント管理ツールのAlfrescoに保存され、社内で共有される。また、全社でOffice 365上にSharePointベースで自社開発した社内SNSを利用。Alfrescoに保存した文書をキーワードで検索できるようにするほか、資料ごとに「いいね!」をできるボタンを設けている。

 こうして社内共有した文書は、オフィスの壁に備えられたデジタルサイネージのモニターでニュースのように表示される。表示される基準は、「いいね!」の数のトップ20点や、最新20点など。角田氏は「いい提案書を作る励みになる」と語る。

デジタルサイネージに共有文書の最新20点などが表示される
個人がストックできる紙文書はこのロッカーに収まる分だけ

 情報共有の取り組みにより、情報の流通速度は171.5%アップし、会議時間は12%削減されたという。会議も、報告型が減り、相談型が増えた。「特に、どこでも仕事ができるようになったことで、営業担当の顧客対面時間が増え、デスクワークが減った」と矢野氏は説明する。

ChangeWorking自社実践の成果

 この取り組みは、都内4か所に分散していたオフィスを2012年1月に今のオフィスに統合すると決まったときに始まる。「『働き方』が変わらないと、オフィスを新しくしても変わらない、ということで、生産性の向上と創造的な企業風土の実現する『The Place for Change Working』というコンセプトを掲げました」と矢野氏。プロジェクトチームだけでなく、何度か現場をまじえたワークショップを開催。8〜9か月で「4つのありたき姿」「44のシーン」「344の施策」のシナリオを作り、実施した。

 その後、ほかの拠点でも同様の取り組みを開始。大阪などでワークショップを開催しており、Active Commons制度は4月から札幌で、来期(同社は7月決算)から大阪で開始を予定している。また、iPadやOffice 365などのインフラは共有の基盤として全社で使っているという。

Link Knowledgeで訪問先のコンタクト情報を共有、イベントにも活用

 こうしたオフィス改革の一環として、名刺情報の管理にLink Knowledgeが使われている。

 Link Knowledgeは、クラウド型名刺管理サービス。スキャンや写真で送られた名刺データから、人間の手作業で確実に入力する。これにより、社内で情報を共有して人脈を可視化するのが特徴だ。さらに、相手の企業に関する企業ニュースや人事異動ニュースなどを自動収集する機能(取引先の名刺が変わると通知が来る)や、名刺情報から抽出した相手にメールを配信する機能など、営業を支援する機能も備えている。

Link Knowledgeの画面例
モバイルデバイスとの親和性が高い

 内田洋行では最初、役員の人脈の活用と、展示会で集まった名刺の整理のために導入。その結果が好感触だったことから、営業担当全員が利用するようになり、営業戦略的に使うようになった。

 展示会のときの名刺入力について、従来はイベントごとに入力を委託していたが、イベントごとにデータがばらばらになっており、セキュリティの不安もあった。角田氏は「それがLink Knowledgeで解決し、日別の集計や会場をまたがった集計などもでき、来場者のフォローも早くなりました」と語る。

 営業担当のスマートフォンでは、万一紛失したときの情報漏洩を避けるため、顧客の電話番号などの情報を入れないことになっている。そこで、クラウドサービスであるLink Knowledgeを電話帳がわりに使うことで、スマートフォン内に連絡先情報を持たなくしている。角田氏によると、「スマートフォンの電話帳より使いやすくて早い」という声もあるという。

 もちろん営業担当にとって、コンタクト先情報の共有がLink Knowledgeの最大の利用目的だ。矢野氏も「営業にとっては名刺の情報がとにかく重要であり、何らかの仕組みに入れる必要がある」と語る。たとえば、同じ会社に対して、ほかの人がどの部署を訪問したか、ほかの部署とどんなつながりがあるかなどが一目瞭然となる。これにより、アプローチしたい部門の人を紹介しもらったり、訪問抜けを防いだりしているという。

 また、「一度名刺交換した人の人事異動がすぐわかる」のも便利な点だと矢野氏は語る。以前は日経の人事情報をこまめにチェックするなどの方法でようやく人事異動を知ったが、「今はすぐにわかるので、営業が即、動ける。スピード感が凄い」(矢野氏)。

 今後はLink Knowledgeについては、管理部門のほか、各拠点やグループ会社にも利用を広げ、コンタクト先のバッティング回避や情報共有に活かしていく予定だという。

 そのほか、オフィス改革の次の段階としては、8月に基幹システムのクラウド化を予定している。特に、受発注システムがクラウド化の効果が大きい部分だ。今まではiPadを持って客先を訪問しても、在庫確認や発注はオフィスに戻ってからになるか、VPNで社内のPCにリモートアクセスする必要があった。「受発注システムのクラウド化によって、iPadで直接、在庫確認や発注ができるようになり、大幅に時間を短縮できます」(矢野氏)。その先では、案件管理の新システムなども計画しているという。

 なお、矢野氏によると、一連の取り組みについて、成果と要因をできるだけ数値化してデータ化して計測しているという。「こうやったらうまくいった、失敗した、というデータがあります。今後も継続して改善のプロセスを回していくとともに、それをコンサルにも活用しています」(矢野氏)。

(高橋 正和)