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高パフォーマンスと圧倒的な省電力を両立。「インテル Core Ultraシリーズ3」登場で見えた、インテルが描くAI PCとAIインフラの最前線

 インテル株式会社は、年次イベント「Intel Connection Japan 2026」を2月3日に開催した。その基調講演では、1月初頭に発表されたCPU「インテル Core Ultraシリーズ3」や、AI PCのソフトとユースケースの拡大、データセンターのAIプラットフォームについて解説された。

Intel Connection Japan 2026

新登場Core Ultraシリーズ3の特徴とは

 最初のパート「最新AI PCで輝く未来」では、インテル Core Ultraシリーズ3とそれを搭載したAI PCのクライアント製品について語られた。

インテル Core Ultraシリーズ3は高パフォーマンスと長いバッテリー持続時間を両立

 インテル Core Ultraシリーズ3については、インテルコーポレーションのデビッド・フェン氏(クライアント・コンピューティング事業本部 副社長 兼 クライアント・セグメント担当本部長)が解説した。

 冒頭でフェン氏は、インテルのクライアント製品戦略として、x86アーキテクチャーと、製造技術の2つを柱として挙げた。

インテルコーポレーションのデビッド・フェン氏(クライアント・コンピューティング事業本部 副社長 兼 クライアント・セグメント担当本部長)
x86アーキテクチャーと製造技術の2つの柱

 この基盤の上で2023年にアーキテクチャーを刷新して登場したのが、「インテル Core Ultra」シリーズだ。これまでにインテル Ultraシリーズを搭載したAI PCは、20社以上のPCメーカーから、数百機種が、合計1億台以上出荷された、とフェン氏は語った。

 そして2026年1月初頭には、最新の「インテル Core Ultraシリーズ3」が発表された。その特徴として、高パフォーマンスと長いバッテリー持続時間を両立していることを、フェン氏は講演中で何度も強調した。

 基礎技術としては、Intel 18A製造プロセスで開発・製造され、トランジスター技術RibbonFETと裏面電力供給技術PowerViaを採用することで、性能と電力効率に寄与している、とフェン氏は言う。

 また、次世代NPUのNPU 5や、新しいXe3 GPU、最新のマルチフレーム生成技術XeSSを搭載している。「CPU、GPU、NPUを合わせて、最大180 TOPSのAI性能を誇る」(フェン氏)。

Intel Core Ultraシリーズ3登場
インテル Core Ultraシリーズ3を手にしたフェン氏
Intel 18Aプロセス、RibbonFET、PowerVia
インテルCore Ultraシリーズ3の特徴

 さらに、ハイエンドの新ブランドとして、GPUにインテル Arcを搭載したインテル Core Ultra X7 / X9も登場した。

 「インテル Core Ultra X7 / X9は、3DグラフィックスでLunar Lakeより最大60%以上の性能を持つ」とフェン氏は説明。ゲームにおいて、競合のノートPC向けCPU内蔵グラフィックやノートPC向けGPUより高パフォーマンスを実現すると主張した。

ハイエンドのインテル Core Ultra X7 / X9も登場
インテル Core Ultra X7 / X9のグラフィック等の性能

 XeSSについても、デモを交えて、滑らかなゲーミング体験をフェン氏はアピールした。

 前述のとおり、バッテリー持続時間も強調された点だ。フェン氏は、Microsoft 365で最大17.5時間、Netflix再生で最大27時間のバッテリー持続時間という数字を挙げた。

 さらに「この性能と電力効率を活かす魅力的なカテゴリーがもう一つある」として、インテル Core Ultraシリーズ3を搭載した携帯型ゲーム機が複数社から登場予定だとフェン氏は紹介した。

マルチフレーム生成技術XeSS 3
仕事でのバッテリー持続時間
Netflix再生でのバッテリー持続時間
インテル Core Ultraシリーズ3を搭載した携帯型ゲーム機の予定

各社のインテル Ultraシリーズ3搭載PCを披露

 インテル Core Ultraシリーズ3を搭載した各社のPCも、インテルコーポレーションのハンス・チュアン氏(セールス・マーケティング & コミュニケーション統括本部 アジア太平洋および日本 ゼネラル・マネージャー)によって壇上で披露。各社からのビデオメッセージも上映された。

インテルコーポレーションのハンス・チュアン氏(セールス・マーケティング & コミュニケーション統括本部 アジア太平洋および日本 ゼネラル・マネージャー)
壇上で披露された、各社のインテル Core Ultraシリーズ3搭載PC

もっと手近にAI PCの機能を利用してもらうためにソフトとユースケースを拡大

 基調講演の2番目のパート「最新のAI PCとエッジでのAI体験」では、AI PC向けのソフトとユースケースの状況が紹介された。

 インテル株式会社の大野誠氏(代表取締役社長)は、AI PC対応ソフトについて、すでに350社以上が合計500以上のAI機能を組み込んでいるという数字を紹介した。

 そのうえで、「ただし、活用はまだ足りていないと感じている。インテル Core Ultraシリーズ3の発売とともに、多くの皆様にもっと手近にAI機能を利用していただく環境を作っていきたい」と語った。

インテル株式会社の大野誠氏(代表取締役社長)
350以上のソフトウェアベンダーが合計500以上のAI機能を組み込んでいる

Windows 11のAI機能や、全社でのAI PC採用事例、XeSSに対応した「龍が如く」

 大野氏は「そのためにまず欠かせないのが、マイクロソフトとの緊密な関係」として、日本マイクロソフト株式会社の中村俊介氏(業務執行役員 Windows&デバイス事業本部 コンシューマチャネル事業部 営業統括本部 統括本部長)を壇上に招いた。

 中村氏は、AIの使い方として、チャット形式に加え、日常の体験に自然にとりこまれた形式が増えてくるだろうと語った。

 具体例として、Windows 11の設定画面で自然文から設定項目を検索する機能や、Microsoft 365(Office)の各アプリにCopilot機能が搭載されたこと、Windowsを音声により呼び出せる「Copilot Voice」を紹介した。

日本マイクロソフト株式会社の中村俊介氏(業務執行役員 Windows&デバイス事業本部 コンシューマチャネル事業部 営業統括本部 統括本部長)
Windows 11の設定画面やMicrosoft 365のAI機能

 続いて大野氏は、トヨタ・コニック・プロ株式会社のAI PC導入事例を紹介した。全社員がAIを活用できる環境づくりのため、インテル Core Ultra 200VのAI PCを全社的に採用することで、高い業務効率を実現したという。

トヨタ・コニック・プロ株式会社のAI PC導入事例

 また、インテル Core Ultraシリーズ3のXeSSに対応したソフトの例として、2月12日発売のセガの「龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties」を紹介した。

 株式会社セガの阪本寛之氏(龍が如くシリーズチーフプロデューサー)は、ゲームでは高フレームレートと高精度グラフィックを両立するのに苦労するが、XeSSなら苦労せずにハードウェアがやってくれると語った。

株式会社セガの阪本寛之氏(龍が如くシリーズチーフプロデューサー)

AI PC対応市販アプリケーションや、開発ワークショップを紹介

 次に大野氏はAI PC対応の市販アプリケーションの例を紹介。Adobeの動画編集ソフト「Adobe Premiere」や、CyberLinkの販促・SNS投稿向けのクリエイティブ制作ツール「Promeo」、K-kaleidoのリアルタイム文字起こし・翻訳アプリ「スピーチコネクト」のローカルAI機能を挙げた。

Adobeの動画編集ソフト「Adobe Premiere」
CyberLinkの販促・SNS投稿向けのクリエイティブ制作ツール「Promeo」
K-kaleidoのリアルタイム文字起こし・翻訳アプリ「スピーチコネクト」

 さらに、インテルが開催しているAI時代のアプリ開発ワークショップ「PEAR Experience by Intel」も紹介。その例として、インテル社員が短期間で開発したアプリ2つも紹介された。

 「AIスイングコーチ」は、自分のゴルフスイング動画と理想のスイング動画をローカルAIが比較してくれ、チャット形式で質問もできる。

 「AIニュース読むニャン」は、RSSリーダーの一種で、ローカルAIがニュースの内容を解釈して分かりやすく噛みくだいたり、さらに語尾を「にゃん」にしたりする。

AI時代のアプリ開発ワークショップ「PEAR Experience by Intel」
インテル社員が開発した「AIスイングコーチ」
インテル社員が開発した「AIニュース読むニャン」

「Core Ultraシリーズ3は現場のエッジAIにも最適」

 もう1つユースケースとして、エッジAIやフィジカルAIなどの組み込みAI分野を大野氏は取り上げた。工場や医療現場などにおいて、ローカルAIが遅延なく意思決定するというものだ。

 「インテル Core Ultraシリーズ3は、ダウンタイムの許されないミッションクリティカルな現場にも最適」と大野氏は言う。この分野におけるインテルの取り組みとして、ロボット向けリファレンスボードや、ロボティクスAIソフトウェアスイートを大野氏は紹介した。

「インテル Core Ultraシリーズ3はミッションクリティカルなエッジ向けにも最適」
ロボット向けリファレンスボードと、ロボティクスAIソフトウェアスイートも

データセンターのAIプラットフォームにおけるインテルの戦略

 基調講演の3番目のパート「データセンターが支えるこれからのAI」では、データセンターでのAIに向けた取り組みが語られた。

ヘテロジニアス構成でコスト効率の高いAI推論プラットフォーム

 インテルコーポレーションのアニル・ナンドゥリ氏(AI グループ プロダクト・マネジメント & GTM 副社長)は、1980~90年代の「PC時代」から、2000~2010年代の「モバイル+GPS+クラウドの時代」を経て、現在を「AI&エージェント型の時代」と定義した。

インテルコーポレーションのアニル・ナンドゥリ氏(AI グループ プロダクト・マネジメント & GTM 副社長)
「PC時代」「モバイル+GPS+クラウドの時代」から「AI&エージェント型の時代」に

 この時代において、産業として成長するのは、AIの推論(inference)の分野だ、とナンドゥリ氏。ただしその推論も、エージェント型では大量の計算が必要になる。そのプラットフォームを提供するデータセンターは、いかにコストをおさえて利益を上げるかが求められる。

 そのためには、一連の推論処理を分割し、それぞれを最適な計算エンジンで処理するソリューションが必要だ、というのが講演の主旨だ。すべてが単一のGPUで動く必要はなく、高速で高価なハードウェアとそれより高価でないハードウェアとを使い分けたりするほうが、コスト効率が高いというわけだ。

 このようなヘテロジニアス(異種混合)な構成について、基盤ソフト「oneAPI」によって複数のハードウェアに対応し、ハードウェアを横断したマルチエージェントオーケストレーションをターンキー型で実現するというインテルのビジョンが示された。

マルチエージェントアーキテクチャー
インテルのオープンなソフトウェアスタック

 ステージでは、ホモジニアス(単一構成)とヘテロジニアスの構成を比較するデモも実演された。同じLLMモデルを使い、NVIDIA B200のみのホモジニアス構成と、B200+インテル Xeon プロセッサー+インテル Gaudi 3(AIアクセラレーター)のヘテロジニアス構成とで、同じ質問プロンプトを与え、ほぼ同じ速度と精度で回答が返るところを見せた。

 LLMの推論パイプラインにはさまざまな段階があり、その中でも重いのが「Generate」の段階だ。さらにGenerateも計算ヘビーな「Prefill」とメモリーヘビーな「Decode」の処理に分けられる。そこで、PrefillをB200に、Decodeをインテル Gaudi 3 アクセラレーターに、それ以外の処理をインテル Xeon プロセッサーに割り当てることで、コスト効率高く処理できる、というわけだ。デモの例では、推論パイプラインの80%がインテル Xeon プロセッサーとインテル Gaudi 3 アクセラレーターで実行されたと説明された。

ホモジニアスとヘテロジニアスの構成を比較するデモ
推論を構成するステージ(展示会場にて)
インテル Gaudi 3 AIアクセラレーター

 もう1つのデモでは、インテル ARC Pro GPUとgpt-ossモデルを使ったワークステーションなどのローカルAIの例も実演された。

インテル ARC Pro GPUによるローカルAIのデモ
インテル ARC ProとXeon プロセッサー(展示会場にて)

 次世代のデータセンターGPU「Crescent Island」(開発コード名)もナンドゥリ氏は紹介した。特徴としては、モバイル機器などで使われる一般的なLPDDR5Xメモリーを160GB搭載することで、メモリー容量が求められるワークロードにコスト効率よく応えるという。

次世代のデータセンターGPU「Crescent Island」(開発コード名)

国産サーバーのエフサステクノロジーズとのパートナーシップ

 データセンター分野のパートナーとしては、国産サーバーのPRIMERGYシリーズを生産販売するエフサステクノロジーズ株式会社の保田益男氏(代表取締役社長 CEO)が登場。PRIMERGYをベースとしたオンプレミス用対話型生成AIソリューション「Private AI Platform on PRIMERGY」を紹介した。

 また、自社内でのインテル Gaudi 3 アクセラレーターと生成AIの活用事例として、インフラ運用部門のサービスデスクやインシデント対応での取り組みを紹介した。

エフサステクノロジーズ株式会社の保田益男氏(代表取締役社長 CEO)
オンプレミス用対話型生成AIソリューション「Private AI Platform on PRIMERGY」
インテル Gaudi 3 アクセラレーターと生成AIのインフラ運用部門での社内事例

「HBMメモリーの標準を超える」SAIMEMORYとの協業

 同2月3日にインテルとの協業を発表したSAIMEMORY株式会社からも、山口秀哉氏(代表取締役社長 兼 CEO)が、インテルコーポレーションのジョシュア・B・フライマン氏(インテルフェロー&インテルガバメント・テクノロジーズCTO)とともに登壇した。

 SAIMEMORYは、AIなどで使われるHBMメモリーの標準を超えるメモリー技術を開発している。特に熱と性能のトレードオフを突破することを目指し、メモリセルを垂直に立てて水平方向に積層する縦型積層技術「Z-Angle Memory(ZAM)」を開発している。

SAIMEMORY株式会社の山口秀哉氏(代表取締役社長 兼 CEO、中央)、インテルコーポレーションのジョシュア・B・フライマン氏(インテルフェロー&インテルガバメント・テクノロジーズCTO、右)、インテル株式会社の大野誠氏(代表取締役社長、左)
SAIMEMORYとZ-Angle Memory(ZAM)の紹介
ZAMのプロトタイプ(容器中央)を手にしたフライマン氏

 本基調講演では、PCからデータセンターに至るまで、インテルがAIインフラを全方位で支える姿勢が示された。インテル Core Ultraシリーズ3によるエッジAIの拡大や、コスト効率を高めるヘテロジニアスなサーバー構成、次世代メモリー技術など、AIの本格普及を加速させる同社の取り組みに今後も期待したい。