船舶の保守管理と異常検知を組み合わせたクラウド・サービス
一般財団法人日本海事協会
株式会社 アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド
株式会社 ディーゼルユナイテッド
日本アイ・ビー・エム株式会社
船舶の保守管理と異常検知を組み合わせたクラウド・サービス
船舶のライフサイクルコストの削減を目指す
一般財団法人日本海事協会(本社:東京都千代田区、会長:上田?、以下日本海事協会)は、株式会社 アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(本社:東京都港区、社長:蔵原成実、以下IHIMU)、株式会社 ディーゼルユナイテッド(本社:東京都千代田区、社長:宇都宮正時、以下DU)、日本アイ・ビー・エム株式会社 (本社:東京都中央区、社長:マーティン・イエッター、NYSE:IBM、以下日本IBM)の協力により、船舶のライフサイクルコストの削減を支援する「船舶保守管理システム」を構築し、2013年6月より、船主・船舶管理会社向けのクラウド・サービスとして提供を開始します。
船舶は海上という過酷な環境で使用するため、船内搭載機器の状態把握や保守管理を適切に行うことが、航海中のさまざまなトラブルを防ぐために必要です。そのため、船内機器のセンサーデータを活用して状態診断や故障の未然防止を図ったり、それらを機器の保守管理履歴と組み合わせて、船舶の安全な運航や船舶のライフサイクルコストを削減する取り組みが注目されています。
日本海事協会、IHIMU、日本IBMは、本年4月から7月まで、船内機器センサーデータ分析による早期異常発見に関する共同研究を実施しました。研究では、IHIMUグループが有する船舶情報管理システムでの経験とセンサーデータや保守履歴といった実際のデータを基に、異常事象の発生状況や機器の状態の変化を解析し、その有用性を確認しました。このデータ解析技術は、IBM東京基礎研究所が開発したもので、観測値に含まれるノイズの影響を除去しながら、変数同士の隠れた関係を自動で見出し、それに基づいて各センサー値の異常度を算出します。この研究を踏まえ、今回、日本海事協会はこの異常検知機能を組み合わせた「船舶保守管理システム」をクラウド・サービスとして提供することを決定しました。
「船舶保守管理システム」は、IHIMUグループが開発・販売し、700隻以上の船舶に搭載実績のある「船舶情報管理システム(ADMAX)」のノウハウを盛り込み開発します。また、効率的な設備の保全管理を実現するIBMソフトウェアの「IBM (R) Maximo」を活用して陸上での船舶管理者の業務効率向上を支援します。また、船上では保守作業の実績登録などを行いますが、回線が繋がっていない状況でもオフラインで入力できるモバイル・アプリケーションが必要となります。これには、モバイル・アプリケーションの開発・実行基盤を提供するIBMソフトウェア「IBM Worklight」をベースにした設備保全のための「EAM Mobileソリューション」を利用して、船上アプリケーションを共同開発します。さらに将来的には、モバイル端末での利用を視野に入れた設計方針を採用します。「船舶保守管理システム」のサービス提供においては、IBMのクラウド・サービスを利用します。
一方、センサーデータ解析による異常検知機能は「船舶保守管理システム」のサービス提供開始に向け、さらなる検証を行います。センサーデータ解析を行いディーゼル機関など機関室の機器の状態診断を行うシステムとして、DUが開発運営している統合型支援システム「Lifecycle Administrator」(LC-A)がありますが、今後LC-Aを活用してタンカー・コンテナ船・バルクキャリアーを対象に実船に異常検知システム搭載した検証を開始し、海象の影響、船の個体差などについて確認していきます。従来、センサーデータ解析を行い異常検知するためには、専門家が1隻ごとに分析モデルを構築し、そのモデルに基づきデータ解析を行うのが一般的でありLC-Aもこの方法を採用してきましたが、今回の異常検知機能は、専門家の作業無しに同等の解析結果が得られるため、適用範囲が大幅に拡大することが予想されます。これにより、機器の状態診断や故障の未然防止を図り、機器の状態に基づいたメンテナンス期間の延伸を行い、船舶の安全な運航とメンテナンスコスト低減の両立を目指します。
IHIMUは昨年4月に発足したライフサイクル事業部において、海外グループ会社を含めたグローバルで一貫した船舶のライフサイクルサポートサービスを展開しており、本研究はより高度なサービスを提供するための取り組みと位置付けています。
日本海事協会は、世界最大の国際船級協会として、海上における人命と財産の安全確保及び海洋環境の汚染防止のため、最高品質の船級サービスの提供を行うということに加え、海事関係者からの要望による共同研究を技術面及び資金面での支援を含めて実施することで、広く海事産業への貢献を図っておりますが、今回の研究もこの取り組みの一環です。