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「売上高を3年で3倍に」、レッドハットが九州・中国営業所を新設 地域企業への貢献図る
(2015/5/20 06:00)
レッドハット株式会社は、福岡市博多区に、九州・中国営業所を1日付けで新設。5月19日に開所記念式典を開いた。
レッドハットの廣川裕司社長は、「九州地区は、日本全体の10%程度のGDPを持つが、レッドハットにおける売上高構成比は3%程度。これまでは出張ベースでの対応であり、まだまだ手つかずの状況だった。売上高を今後3年間で3倍に拡大し、レッドハットにおける売り上げ構成比を10%程度にまで引き上げたい」とする。
また、「すでに、九州・中国地区には、大手顧客として九州電力、九州旅客鉄道、西部ガス、中国電力、マツダなどがあり、オープンソースソフト(OSS)に対するプレゼンスは高い。まずは、OS事業を中心にした営業およびソリューションアーキテクトを配置。今後は、JBoss ミドルウェア、仮想化、クラウド、ストレージソフトウェアといった事業にも拡大し、データセンター刷新、ビッグデータの活用、クラウド基盤構築の提供を通じて、ユーザーや開発コミュニティ、パートナー、そしてレッドハットによる四位一体により、九州、中国地区における存在感を高め、地域企業に貢献したい」とした。
レッドハットは、1999年に海外子会社第1号として日本法人を設立。2009年12月には西日本支社を設置し、西日本地域での業務拡大を図ってきた。今回、西日本支社の傘下に、九州・中国営業所を設置することで、九州および中国、沖縄地区において、サービス、サポートを提供し、営業活動を強化することになる。
営業所は、福岡市営地下鉄空港線の中洲川端駅から徒歩2分、博多・中洲に位置し、近隣エリアには官公庁や大手企業の本社、支店などが集中している場所だ。
「西日本支社の傘下においたのは、東京の本社からの支援体制に加えて、地理的に近い西日本支社のソリューションアーキテクトのリソースも活用するのが狙い」(レッドハット 西日本支社 九州・中国営業所の廣瀬圭祐所長)だという。
廣川社長は、「九州・中国営業所の売上高構成比を、全体の10%程度にまで引き上げられれば、支社に格上げすることも考えたい。まずは2人体制でスタートする。レディパートナーは、全国規模では500社から1000社に倍増するが、現在、九州・中国地域のレディパートナーは10社程度にとどまっており、市場性を考えれば、これを3、4倍に増やすことができると考えている。将来的には、80~100社は獲得していきたい」とした。
レッドハットの廣瀬所長は、「既存のパートナーとの積極的な協業強化と事例化の推進、地域に密着したパートナーの新規開拓、そして、大手企業の情報システム子会社とのパートナーシップ契約の獲得を図っていく。パートナーとの協業により、地域に貢献していく。九州・中国営業所の陣容は、今後3年間で10人規模にまで拡大する計画」だとした。
また廣川社長は、「九州・中国地区においては約50社の主要顧客があるが、そのうち、リファレンスカスタマーとして10社程度の事例を公開していく。Linuxだけでなく、ミドルウェア、クラウド、仮想化などのレッドハット製品を提供していくことにも力を注いでいく。九州・中国地区の顧客からどんな要望があるのかを把握するとともに、その一方でレッドハットはLinux以外にこんな製品を扱っていることを示し、今後3年間で、顧客数は7000社にまで拡大したい」とした。
電力会社では送配電分離の流れにあわせて、メーターデータマネジメントシステムへの刷新や、スマートメーターの導入が促進されるのにあわせて、オープンソースを採用する動きが、九州、中国地区でも顕在化しているという。
「大手企業がIT変革に取り組むなかで、メインフレームやUNIXを全廃しようという動きも出ている。電力会社、ガスなどのユーティリティ分野、交通分野、自動車メーカーをはじめとする製造業、官公庁をはじめとする公共分野などにおいて、Linuxへの関心が高まっている。いいタイミングで九州に拠点を進出してくれたという声も大手企業からいただいている。オープンソースやレッドハットに関して、詳しい情報があまり伝わっていなかった部分もある。伝わりはじめたら、速いピッチでさらなる変革ができると考えている」などとした。
さらに、「Rubyなどにも関心が高い地域であり、オープンソースに対する関心も高い。九州地区におけるオープンソース開発コミュニティへの参加者を増やすことにも積極的に取り組み、それにより、OSSの活性化に貢献したい」などと述べた。
なお同社では、年度内にも、東海地区への拠点開設を予定している。
地域に貢献できるエコサイクルを加速していく
5月19日午後3時15分から、同社・廣川裕司社長などが出席して行われた開所記念式典で廣川社長は、「マーケティングマネージャーを担当した女性が、かつて福岡県庁に勤務しており、当時の福岡県・麻生渡知事のもとでIT担当を務めていた。4年半に麻生氏と面談し、福岡7社会、福岡IT研究会のゲストスピーカーとして講演した経緯があった。その際、レッドハットの最新テクノロジーに興味を持ってもらい、拠点を開設してほしいといわれた。レッドハットのやり方は地域の話を聞いて、オープンソースの手法で地域に貢献する。それから4年半かかってしまった。東京、大阪に次いで3番目の拠点を福岡に出せたことは感無量である」と、九州・中国営業所の進出理由を語った。
「地域において、新たなテクノロジーをどうやったら使えるのかという点では、コンサルティングサービスも強化する。レッドハットのミッションはユーザーの最も近いところにいて、ユーザーの声を聞き、その要望を全世界100万人以上いる開発者のオープンコミュニティにいち早くフィードバックすること。その開発コミュニティによって、速く安く出てきたいいものを、パートナーと一緒にソリューションとして組み上げられるといった、エコサイクルを提供できる。営業所を通じてみなさんの意見を吸い上げ、地域に貢献できるエコサイクルを加速していく。営業所を最大限に活用していただきたい」と語った。
また、米Red Hat Inc.Senior Vice President & General Manager AsiaPacificのDirk-Peter van Leeuwen(ダーク-ピーター・ヴァン・ルーウェン)氏は、「次世代のITはオープンソースに委ねられており、ここから、クラウドなどの新たなコンピューティングが生まれている。レッドハットはここにコミットしていく。コミットする具体的な姿勢のひとつが、地域に進出することである。今回の営業拠点の開設は、われわれにとっても、そして地域の顧客にとっても、新たな協業に向けた大きな機会が生まれることになる。レッドハットは、この地域に長く存在する形でプランニングをし、時間をかけてここへの進出を決定した。みなさんにとって成長のためになにが必要なのか、どんなお手伝いをできるのかということを伝えてほしい。ともに成長していきたい」と語った。
また、レッドハットの廣瀬所長は、「レッドハットは、オープンソースベンダーであるからこそ、ITを、もっとユーザー主導のものにできる。水もオープンソースも人類の共通財産。だが、水にもさまざまな種類があり、飲料水はちゃんと保証して届ける必要がある。レッドハットはオープンソースの世界で、それと同じ役割を果たしている。100万人を超える開発者が開発したものをしっかり検証して提供する役割を担う。だからこそユーザー主導で、ベンダーロックインがなく、安心した環境で、選択肢を提供できる。レッドハットは、九州・中国地区において、ユーザー主導のITを支援する」などと述べた。
一方、午後5時過ぎから行われた記念パーティーでは、レッドハット 西日本支社支社長兼大阪営業所所長の山中孝城氏があいさつ。「九州に拠点を進出する構想は3年前からあった。希望では昨年進出しているはずだった。ようやくこの地でパートナーとのビジネスリレーションが行える体制が整った。一度進出したからには意地でもしがみついて、この地でビジネスを成功させていく。変化を怖がらずに改善することに力を注ぎたい」と語った。
また、乾杯の音頭を取った福岡県商工部の小島良俊次長は、「世界有数のオープンソース企業であるレッドハットが福岡に進出することは喜ばしい。福岡県は、IT産業の振興に力を入れており、特に、生産性が高いプログラミング言語であるRubyには早い時期から注目。2008年からの取り組みにより、現在は3500人のRuby技術者が育っている。これらの技術者が開発した製品を有する企業が300社を超え、確実に拠点性が高まっている。このRubyのビジネスを立ち上げる際に、レッドハットに助言をいただいた。その点では今回の開所を心待ちにしていた」と述べた。