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擬似的に絵画の中へ、五感で学ぶ美術学習――豊島区小学校で実証実験

 大日本印刷株式会社(DNP)は12日、体験を基に活発な協働学習が行える学習システムを開発したと発表した。実用化に向け、擬似的に絵の中に入り込める美術デジタル教材の実証実験を豊島区内の小学校で実施する。

 近年の学校教育では、子どもたちの主体的な思考・判断・表現力を育むため、児童生徒同士が教え合い、学びあう「協働学習」が推進されている。美術教育においては、文化財・美術作品の鑑賞、美術館・博物館の訪問、専門家の話を聞く機会など、児童生徒が主体的に取り組める「体験型の学習」が重要視されているが、新たな学習への教員の知識不足や時間的制約などによって、十分に行われていないのが現状という。

 この課題に対して、「ルーヴル-DNPミュージアムラボ」(DNPとルーヴル美術館による、美術作品の新しい鑑賞方法を提案する共同プロジェクト)をはじめ、DNPが取り組んできた美術鑑賞システムの開発・運用実績を生かし、美術デジタル教科書研究会(代表:香川大学教育学部 安東恭一郎教授)と共同で「体験型協働学習システム」を開発し、実証研究を開始する。

 実証研究では、従来紙メディアによる視覚情報が主体だった美術教育において、画像処理やセンシング機器などを組み合わせて使うことで、視覚や頭で考えて理解すること以上に作品を「体感する」ことが可能となる。体験のおもしろさや、先生や友達と感覚を共有することによって児童生徒の気づきが広がり、活発な協働学習につながることが期待される。

システムを利用している様子

 具体的な仕組みとしては、スクリーンに投影した絵の前で生徒が歩く動きを位置センサーが検出し、歩く動作に合わせてスクリーンに表示する絵が変化する。絵の中に入り込むようなインタラクティブな疑似体験を通じて、美術作品鑑賞の新たな視点を獲得し、鑑賞能力の向上を促すという。また、美術館・博物館での作品鑑賞の事前学習を行い、実際の鑑賞時の学習の質を高めることも可能という。

 プロジェクターとスクリーン、児童生徒の動きを捉えるセンサー機器を設置するだけで、教室内で簡単に利用できるのも特長となる。

 実証実験は、豊島区立池袋本町小学校6年生の図画工作科で5月11日~15日に実施。ICTを活用した体験型協働学習(美術)を実施後、国立西洋美術館を訪れ、授業で学習した美術作品を実際に鑑賞する。

 今後の展開についてDNPは、2015年6月から香川県や新潟県など全国の小中学校で実証実験を展開して効果を検証するとともに、2016年度以降に自治体での本格的な導入をめざすという。コンテンツとしても、京都の世界遺産17社寺・城の高精細映像アーカイブコンテンツ、水族館や工場見学などのコンテンツを用いた体験型教材のシリーズ展開を図る予定。本事業により、2020年度までの累計で10億円の売り上げを見込む。

川島 弘之