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東芝Sol、ゆりかもめへ鉄道輸送計画SaaSを提供

海外展開も視野「日本の優れた運行ノウハウを世界へ」

 東芝ソリューション株式会社(以下、東芝Sol)は16日、株式会社東芝と共同開発した「鉄道輸送計画ICTソリューションSaaS(TrueLine)」を、株式会社ゆりかもめに提供し、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)にて運用を開始したと発表した。

 従来、鉄道事業者は各社で独自の輸送計画システムを構築してきたため、システム導入・運用コストの負担が大きくなっていた。また、震災以降高まる交通機関としての事業継続について、自社設備が被害を受けた際の再構築にかかるスピードやコストの課題が存在する。東芝Solは、これらの課題を解決するため「輸送計画システム」をクラウド化し、第一号ユーザーとしてゆりかもめに提供した。

 同サービスでは、(1)地上条件と車両条件を下に、ノッチ・ブレーキ操作による走行をシミュレーションし、ランカーブを描画する「運転曲線作成サービス」、(2)手書きに近いスジ描画や基準列車を用いたスジ描画を実現する「基本ダイヤ作成サービス」、(3)運転士・車掌の運用計画を直感的に可能とする「乗務員/車掌運用作成サービス」、(4)日々の車両編成の割り当てや複雑な検査計画をパズルを埋め合わせるように解決する「車両割当作成サービス」、(5)検査設備で留置された車両を効率よく配置換えし検査をこなすための「構内作業計画作成サービス」、(6)GPSを活用し車両位置を地図上にリアルで高精度に表示する「GIS運行監視サービス」を提供する。クラウドサービスとして提供することで、顧客側でのシステム維持管理が不要で、高信頼・低コストを実現したのが特長という。

 ゆりかもめが採用したのは、(1)の「運転曲線作成サービス」。列車のダイヤを検討する上で基準となる運転時分を求める重要なもので、地上設備条件(曲線、勾配、トンネルなど)や車両条件(編成、電動機、ブレーキ性能など)を基に、速度・ブレーキなどの条件を入力し、直感的に運転曲線を作図することで、駅間の走行状況をグラフ表示する。

 これまでは運転理論に基づき複雑な計算を行い、手作業で作図していたため、専門知識と多大な工数が必要だったが、同サービスにより、画面操作だけで作図が可能となる。特にゆりかもめの車両は、鉄輪ではなくゴムタイヤを採用しているので、運転理論において必要となるブレーキ抵抗などの係数が通常と異なるにもかかわらず、実測データを基に新たに係数の算定を行うことで、実態に近い作図が可能になったという。

車両編成作成画面
ランカーブ描画

 そのため、「鉄道以外の事業者に対しても悪天候時の走行や地上設備側の改良などさまざまなシミュレーションに活用できる」(東芝Sol)と訴求。また、「エネルギー消費量も算出できるため、エネルギー削減量を予測でき、基本ダイヤ作成サービスと連携することで、“省エネダイヤ”も実現する」として、今後、ほかの鉄道事業者に向け、トータルな輸送計画システムとして提案する考え。

 さらに海外展開も見据え、多言語に対応。クラウドの特長を生かし、「海外鉄道事業者に、日本の優れた鉄道運行ノウハウを低価格で提供し、全世界の鉄道が安定輸送・定時運行を実現できるよう貢献する」としている。

川島 弘之