クラウドの認知度・利用/導入率は堅調に増えるも、「検討したが利用しない」企業が大幅増~IDC Japan調査


2012年 国内クラウドサービス市場 需要動向調査(出典:IDC Japan)

 IDC Japan株式会社は24日、「2012年 国内クラウド市場調査」の結果を発表した。2012年4月に実施したユーザー動向調査で、これによると国内企業でのクラウドの認知度、利用/導入率は、2011年の調査と比べて堅調に増加しているという。

 クラウドを理解する企業でのクラウド利用/導入率は、SaaS(26.3%)、パブリッククラウド(19.1%)、業界特化型クラウド(8.2%)、プライベートクラウド(17.2%)となり、やはり2011年の調査結果と比べて堅調に増加している。

 しかし「検討したが利用しない」と回答する企業割合は、2011年調査と比較して15~20ポイント程度増えるなど、大幅に増加した。この背景には、2011年春以降、東日本大震災の影響によってクラウドの利用/導入を具体的に検討する企業が急増したことがある。そうして一度はクラウドの利用/導入を検討した企業の中で、技術的/管理的な課題によって、短期間ではクラウドの利用/導入ができないと判断する企業が多かったことが、今回の結果につながったという。

 ただし、企業が具体的にクラウドを検討したことは、クラウドの理解を促し、中長期的にはクラウドの普及を促進するとIDCでは予測している。

 一方、クラウドサービスを提供するベンダー数が急増する中で、評価したベンダー数をパブリッククラウド利用中の企業に問うたところ、9割弱が3社以内と回答しているように、企業が具体的に検討・評価するベンダー/サービス数は限られている。このことから、ベンダーにとっては、認知度を向上させ、検討・評価の対象となるリストに名を連ねる施策が喫緊の課題になった。

 国内クラウド市場では、SaaSは2010年に、「認知度の普及」から「ベンダー間の差別化」へとベンダーの課題が変化したほか、2011年にはPaaS/IaaSにおいて同様な変化が見られたとのこと。そして2012年にはプライベートクラウドが、「プライベートクラウドの啓発と、ベンダー認知度の普及」から「差別化」へ変化するとIDCはみている。

 しかしパブリッククラウドと比較すると、プライベートクラウドはその導入手法は多様かつ複雑であり、プライベートクラウドの導入に適したハードウェアとソフトウェアのパッケージ化ソリューションも発展し、企業が導入パートナーに対して持っている期待も変化している。このことから、「変化の激しいクラウド市場において、顧客視点でクラウドの提案を行い、自らの特徴を明確に示すことがベンダーの差別化につながる」とIDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏は分析している。

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(石井 一志)
2012/7/24 15:04