トレンドマイクロ、電子証明書ビジネスに参入~1社あたり年間定額、発行無制限


 トレンドマイクロ株式会社は6月18日、電子証明書ビジネスに参入すると発表。1社あたり年間40万円(税別)の定額料金で、種類に関わらず、SSLサーバー証明書を無制限で利用できるサービス「Trend Micro SSL(以下、TMSSL)」を6月29日より提供開始する。提供するSSLサーバー証明書は組織認証(OV)だけでなく、拡張認証 (EV)にも同一料金で対応。今後1年間で500社への導入を目指す。

モハメド氏「クラウド時代に求められるSSL証明書発行サービスを提供」

Trend Micro社エグゼクティブバイスプレジデント ワイエル・モハメド氏

 発表会にはTrend Micro社エグゼクティブバイスプレジデント ワイエル・モハメド氏が出席。モハメド氏は、2009年に買収したThird Brigade社のトップで、買収と同時にTrend Microに入社。Third Brigadeは買収後、Trend Micro DeepSecurityに製品名を変更したが、モハメド氏はDeepSecurityをはじめとするクラウド・仮想化・物理サーバーセキュリティ製品事業を統括してきた。

 モハメド氏は、なぜいまSSL事業に参入するかについて、インターネットのトラフィックの増大や、サーバーの仮想化、モバイルコンピューティングの普及などで、企業が運営するサーバーは増加の一途をたどっていると説明。しかし、現在のSSL証明書は10年前に提供が始まった時から同じビジネスが提供されており、こうした状況に合わせたサービスの提供ができていないと指摘した。

 サーバーへのセキュアなアクセス環境を構築するには、SSLサーバー証明書が不可欠だが、増加するサーバーに合わせて増加するSSL証明書の数がサーバー運営企業のコストを圧迫していることから、トレンドマイクロでは顧客企業の需要に応えるために、1社あたり年間定額で証明書数無制限、またOVでもEVでも同一価格で提供するSSL証明書発行サービスを開始すると述べた。

 また、SSLサーバーの認証局がクラックされ、偽のSSL証明書が発行されたトラブルなども起こっていることから、委託ではなくトレンドマイクロが認証局組織を設置し、認証業務を実施すると説明した。

 モハメド氏は、クラウド時代に合ったSSLサーバー証明書発行サービスが既存顧客から求められている状況で、「パートナーシップを組むか、あるいは自社で提供するかを検討したが、今後も必須のサービスであることや信頼性の高い認証局の運営が求められることなどから、自社で提供することにした」と述べた。

 今回SSL証明書発行サービスは、世界に先がけてまず日本市場に投入。今年後半に北米、2013年に欧州で展開する予定だという。


モバイルコンピューティングの普及などでインターネットのトラフィックが増大するのにともない、SSLサーバー証明書の利用も増大Trend Micro SSLはデータセンタープラットフォームの一部として提供する今後のグローバル展開


SSL証明書単体で考えるのではなく、トータルセキュリティの1つとして提供

トレンドマイクロ株式会社 取締役副社長 大三川 彰彦氏

 年間40万円でどのくらいコスト低減になるのかについて、トレンドマイクロ株式会社 執行役員 エンタープライズマーケティング部 部長の新井一人氏は、「SSL証明書はサーバー単位で考えると、1証明書が8万円くらいからで、EVだともっと高くなる。今回発表したサービスは規模の大きいサイトやサービスを運営する企業向けになるが、平均すると8証明書くらいは使われているのではないかと見ている。多いところでは、数十枚、数百枚というところもある。そういった企業から見ると、非常に安いということになるのではないか」と具体的な数字を上げて説明した。

 トレンドマイクロ株式会社 取締役副社長の大三川 彰彦氏は、「これまでSSL証明書ビジネスを手掛けておられる企業は単体でサービスされているところが多いが、トレンドマイクロはサーバーセキュリティでは市場ナンバーワン、日本市場では4割のシェアを持ち、サーバーセキュリティでトップを走り続けてきた。そうした中で、昨年からクラウドや仮想化環境のセキュリティでは、ナレッジやサービスというものが強く求められており、顧客企業から“SSLも一緒にやってくれないか”という声が非常に多かった」とSSL証明書に取り組むことになった背景について説明。

 「Trend Micro SSLは単体ビジネスというより、Trend Micro DeepSecurityやTrend Micro SecureCloudなどのセキュリティ製品と合わせてトータルでセキュリティをお守りしますというビジネスモデル」だとコメント。SSL証明書単体で事業化というより、Trend Microのサーバーセキュリティ製品と合わせての利用を促す、サーバーセキュリティビジネス全体から見たメニューの1つとして提供するスタンスであると述べた。

 こうした背景から、提供方法はまず既存顧客の大手企業ユーザーに対して、6月29日より順次招待制で提供。2013年第1四半期から、全てのユーザーを対象に提供する。

クラウド・仮想環境に適したSSLサーバー証明書サービスTrend Micro SSLの特長SSLサーバー証明書は、OV、EVどちらにも対応する


サーバー数が増減する仮想サーバー環境に対応トレンドマイクロが認証局を運営ポータルサイトを設置し、SSLサーバー証明書を迅速に発行できる


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