リコー、第17次中期経営計画の目標値を下方修正~「リコーの営業部門は大企業病」と自己反省も
リコー 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏 |
株式会社リコーは22日、同社が取り組む第17次中期経営計画(以下、17次中計)の進ちょく状況などについて説明した。
17次中計の最終年度となる2013年度の業績見通しについては、昨年5月の公表値に比べて、売上高が3000億円減の2兆1000億円以上、営業利益が600億円減の1500億円以上、営業利益率は1.7ポイント減の7.1%以上などに下方修正した。
リコーの近藤史朗社長は、「環境変化による業績への影響がある。やることは変わらないが、発射台の位置が変わり、風の向きも変わった」などと比喩(ひゆ)。しかし、「17次中計で目指す姿は、成長と体質改造の同時実現。グローバルブランドを目指して、新たなイノベーションで未来を拓く」とし、「グローバルの競合企業は、業績がいいときも、業績が悪いときも、普通に、成長と体質改造の両方をやっている。どちらかに集中するのでなく、両方をきっちりできる会社にしていきたい。事業の創造と集中による『新陳代謝』と、高効率経営の実現による『体質改善』の2つの観点を基本戦略として取り組んでいく。こだわりたい数字は2兆円というトップライン(売上高)である」とした。
17次中計・最終年度の目標について | リコーグループ連結業績の推移 |
2013年度の売上高計画である2兆1000億円の内訳は、MFPやプリンタ、MDS(マネージドドキュメントサービス)などの基盤領域が約1兆6000億円、プロダクトプリンティング(PP)が約1700億円、産業その他部門が1600億円、カメラを含むイメージングシステムが1000億円、新規商材が350~400億円としている。
「利益の観点からみれば、PPは花が開くだろう。また、イメージングシステムは赤字がプラスに転じる。だが、利益を確保するのは、基盤領域が中心になる」(リコーの三浦善司副社長)とした。
また、近藤社長は、2011年度業績についても振り返り、「営業損失はマイナス180億円の赤字という結果になったことは真剣に受け止めているが、構造改革費用や、震災およびタイ洪水被害の影響で730億円、為替の影響が149億円が影響しており、特殊要因などを除くと699億円のプラス。期初計画での、700億円の黒字の実力があった判断している」と自己評価した上で、「2012年度はV字回復をする。2013年度には、人員リソース改革で469億円の効果に加え、BPRで100億円、製造コスト低減で100億円、その他の効果で131億円を見込むことで、1500億円の営業利益をぜひ成し遂げたい」と語った。
■体質改善を順次推進
高効率経営の実現に向けた体質改造への取り組み |
17次中計における体質改造への取り組みでは、高効率経営の実現として、販売体制の効率化、不採算事業の見直し、生産拠点の統廃合、業務のリエンジニアリング、人員リソース改革、グローバル集中購買、開発プロセスの見直しに取り組むことで、2013年度の営業利益創出効果として約1400億円を見込む。
また筋肉質な経営体質実現に向けた施策として、2013年度までに1万人の人員削減や、新規領域や成長領域などに対して約1万5000人の人員シフトを図ることなどにより、700億円の効果を見込む。
1万人の人員削減計画については、2011年度にすでに5000人を削減。2012年度は米国での3000人の削減を含む4000人、2013年度には1000人を削減する計画だ。
国内販売における体質改造に向けた主な取り組みとしては、付帯業務の削減および顧客接点時間の拡大に向けたワークスタイルの変革などによるセールス/サービス生産性の向上、社内取引価格制度の廃止などの管理業務の効率化、拠点の再配置、パフォーマンス評価システムの見直しなどの人事制度の改革、ITによる効率化サポートをあげた。
さらに、本格的なBPRの展開による業務の効率化、生産拠点の統廃合、開発プロセスの見直しなどの各種施策を通じて、「将来に向けて、営業利益率10%を確実に生み出す体質を定着させたい」と語った。
近藤社長は、「社内で点数をあげるための仕事になっており、営業は大企業病になっている」と指摘。「営業のリエンジニアリングに取り組んでいるところである。新たな仕組みとして、モバイルワークや直行直帰の導入などにより、営業活動の効率化を図ったことで、この1年間で営業利益率が上昇し、経費率が大幅に下がっている。これにより、拠点の削減などの効果もでている」とした。
国内販売における体質改善に向けた取り組み | 国内販売/サービスの体質改善の取り組み |
■基盤事業を再定義し、“モノにコトを足した”事業構造へ
一方、「未来を創る挑戦」として、近藤社長は、「基盤事業を再定義し、モノにコトを足した事業構造へと転換。そこに成長機会を見いだす」とし、「情報の出力先が多様化し、モバイル化、ネットワーク化の進展により働き方が変わっている。また、クラウド、ネットワークによって、いつでも、どこでも仕事ができる環境ができあがっている。プリンティング市場は全体で13兆円しかないが、ITサービスやITソフト、ITハード、BPO周辺事業領域は123兆円もの市場規模がある。そこに広げていく必要がある」などとした。
基盤事業においては、MFPでは日本、米国、欧州において獲得しているトップシェアの堅持を掲げる一方、カラーレーザープリンタでは、日本で2位、米国で6位、欧州で8位のシェアを拡大。A4 MFPやカラーレーザープリンタなどの品ぞろえ強化を図っていく姿勢を示した。
基盤事業であるMFPおよびカラーレーザープリンタについては、「日本では好調に推移。米国では、アイコン統合後の影響とA4対応MFPの品ぞろえの課題によって、シェアを落としている。これは今後、A4対応MFPの投入によって販売増加を見込む。また欧州についても今後の成長を見込む」と語った。
一方で、新規事業および基盤事業とのシナジー効果については、「ECS(エコソリューション)分野のLED照明は、ドアオープナーとしての役割を果たしはじめている。また、PJS(プロジェクションシステム)では、超短焦点のプロジェクターの投入により、この半年間で一気にシェアを拡大し、国内で4位に入ってきた。そのほかに、UCS(ユニファイドコミュニケーションシステム)、RHM(リライタブルハイブリッドメディア)、EWS(eライターソリューションズ)といった事業を立ち上げてきた。画像&ソリューションと新規の製品およびサービスの組み合わせによる価値提供の拡大を図る」などとした。
近藤社長は、具体的な取り組みとして、スマートフォンおよびタブレット向けに提供しているペーパーレス型の会議・プレゼンテーションシステム「TAMAGO」を紹介。「デジタルサイネージへの配信や、遠隔地と結んだモバイル会議の実現、クラウドプリンティングへの展開など、基盤事業と新規事業との組み合わせによって、新たな顧客価値を提案できる」と語った。
周辺事業領域への拡大を図る | モノ+コトへと事業構造を転換 |
■コンシューマブランドのペンタックスを磨き上げる製品を投入
ペンタックスの買収を生かす |
カメラ事業については、ペンタックスのイメージングシステム事業の買収によって、従来のコンパクトカメラ分野に加えて、デジタル一眼レフカメラ、交換レンズを加えた総合力を発揮できるほか、コンシューマ向けチャネルの獲得したメリットに言及。これにあわせて、イメージングシステム事業の組織をB2BとB2Cに分離。B2Bはリコーに集約し、2013年度に300億円の売上高を計画。B2Cではペンタックスリコーイメージングを通じて販売し、700億円の売上高を想定しているという。
「ペンタックスというコンシューマブランドをしっかりと磨き上げる製品を投入していきたい。これまではコンシューマに対して売る力がなかかったが、作る力は以前から持っている」などとし、今後のカメラ事業の拡大に意欲をみせた。
なお、1万5000人の人員シフトについては、「25%を新規分野にシフトするとしてきたが、その範囲内で進めている。これをもう少し進めていきたい」などと語った。
さらに、先進国市場向けには、既存の顧客を対象にしたShare of Walletの拡大に加えて、ドキュメント、ITサービス、コミュニケーションの3分野での価値を提供し、顧客別提案を加速する姿勢を示した。
また、新興国市場においては、現地に適した商品およびサービスを開発することを強調。新興国向けに販売するA4 MFPを中国で開発したことや、ベトナムに販売会社を設立したこと、インドに研究開発拠点を設置したことを紹介した。
そのほか、プロダクトプリンティング事業においては、連続紙およびカット紙の両分野での商品群を拡充。ソリューション&サービスによる高収益モデルの確立を進めるという。
なお、リコーでは、全世界で展開する新たなブランドメッセージとして、「imagine.change.」を発表。「想像力(創造力)の結集で、変革を生み出す。リコーは、これからも『imagine.change.』でお客さまに新しい形を提供します。」というコメントを同時に発信する。
近藤社長は、「顧客価値の創造と、変革に挑戦していく。すべてのリコーグルーブで展開する。会社全体でimagineを貫き通したい」などと語った。
imagine.change.というブランドメッセージを発信 |