米Microsoftと日産、顧客起点の次世代ディーラーマネジメントシステムを構築へ

Microsoft Dynamics CRMをベースに採用


Microsoft Dynamics CRMをベースに構築する。なお、インフラとしてはWindows Azureを採用している
日産では、中期経営計画「日産パワー88」とIT中期計画「VITESSE」を打ち出している

 米Microsoftと日産自動車株式会社(以下、日産)は12日、次世代ディーラーマネジメントシステムの構築に関して、提携を発表した。2012年12月から試験運用を開始し、2013年9月から一部導入を開始。2014年3月までにすべてのディーラーへの導入を図る。

 Microsoft Dynamics CRMをベースとし、CRM機能およびソーシャルコラボレーションツールを融合させることで、顧客との強固な関係構築を実現。さらに、同システムをWindows Azure Platform上で稼働させることで、全世界規模でのスケールメリットの確保や柔軟性を実現できるとしている。

 クラウドの活用によって、15~20%のコスト削減効果が図れると見込んでいる。

 日産のアンディ・パーマー副社長は、「日産では、2011年6月に、NISSAN POWER 88を打ち出し、2016年度にはグローバルシェア8%、安定的な営業利益率として8%を目指している。その実現のためにディーラーマネジメントシステムとなる」と位置づけたほか、Microsoftのプレジデント マイクロソフトビジネスソリューション担当であるキリル・タタリノフ氏は、「Microsoft Dynamics CRMは、全世界で3万社以上、200万のユーザーが利用しており、28四半期連続で、2けた成長を続けている製品。自動車産業でも人気が高く、米Fordへの導入実績や、小規模ディーラーへの導入実績もある。だが、今回の取り組みは、規模や意気込みという点でも広範なものになる。自動車産業は大きな環境変化を迎えているが、そのなかで、お互いの顧客を喜ばせるということにフォーカスしたシステムともいえ、価値が高く、柔軟性があり、強固な顧客との関係を構築できるようになる」などと語った。


日産のアンディ・パーマー副社長Microsoft プレジデント マイクロソフトビジネスソリューション担当のキリル・タタリノフ氏
日産 執行役員 グローバル情報システム本部長の行徳セルソ氏
グローバル導入の戦略

 日産は約20年間にわたり、ディーラーマネジメントシステムを稼働。新車販売の際の顧客情報や、自動車に関するサービス情報などを活用してきた。

 「従来はすべてが自動車を中心としたシステムとなっていたが、次世代ディーラーマネジメントシステムでは、顧客を中心としたシステムになる。顧客がどのディーラーを訪れても、その顧客が日産にとってどれだけ重要な顧客であるのかを、瞬時に100%理解できるようになっている。また、所有している自動車がどんなサービスを受けたのかを理解できるようになる。一方で、ソーシャルメディアを活用して、日産の自動車やサービスに対する評価がどうなのかということを理解することができる」(日産 執行役員 グローバル情報システム本部長の行徳セルソ氏)という。

 また、行徳氏は、「次世代ディーラーマネジメントシステムの特徴は、ひとつは拡張性であり、もうひとつはいかにローカルマーケットに対応できるかという点。グローバル機能を強化しながら、日本ならではの顧客対応のすばらしさを、グローバルに広げていくことにもつながる。初めは日本市場を対象に展開。今後、ここでの経験をもとに、『おもてなし』の顧客サービスを、世界に展開する。地域展開については、まだ具体的には決定してないが、まずは、成長が著しい中国市場を対象にしたい。また、拡張性という点では、スマートフォンやタブレットなどのさまざまなデバイスへの対応を可能としているほか、ソーシャルメディアにも対応できる点も大きな特徴。今後は、テレマティクス、生産システム、物流システム、サプライチェーン全般などにも適用し、シームレスなインテグレーションを目指したい」と語った。

 さらに、「いくつかの他社のシステムを検討したが、拡張性、柔軟性の点で、Microsoftのテクノロジーがベストフィットであると判断した。Windows Azure Platformは、開発環境としても信頼性、堅牢性がある」などと語った。


次世代ディーラーマネジメントシステム導入の背景には、販売ネットワークの急速な拡大があるという次世代ディーラーマネジメントシステムの概要
日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 一方、日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「ここにきて、クラウドを活用することで、グローバル展開を視野に入れた、柔軟なシステムを構築したいというニーズが高まっているのを感じる。日産は先進的なITインフラを導入し、当社製品も戦略的に使っていただいている重要な顧客であり、グローバルのITシステムを、日本発で使ってもらうことになる。柔軟性、拡張性に優れたものだと自負しており、日本の企業が、グローバルに活躍したいと考える上で、当社を選んでいただいたのは光栄である。まずは日本でしっかりと成果が出せるようにし、グローバルビジネスの足場づくりのお手伝いをしたい。日本マイクロソフトが本社と連携しながら、技術面から支援し、プロジェクトの成功に全力をあげて取り組んでいく」と語った。


両社で戦略的協力関係を結んでいく会見に臨む両社の役員
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