日本マイクロソフト、リコージャパンと協業しソフト資産管理サービスを本格展開

SAMスペシャリストを配置し全国規模で提供


 日本マイクロソフト株式会社は9日、2011年10月から、世界規模でソフトウェア資産管理サービスの本格展開を開始したのにあわせ、国内でも12月12日から同サービスの提供を開始。リコージャパンとの協業によって、「SAM(Software Asset Management)サービスプログラム」として、全国展開することを明らかにした。

 今後、クラウド環境への移行を図る際にも、最適なライセンス体系での利用提案という観点からも効果があるサービスとして位置づける考えだ。

 

ソフト資産管理の国際標準をベースに3つのサービスを提供

 SAMサービスプログラムは、ソフトウェア資産管理の国際標準規格である「ISO/IEC 19770-1」をベースとしており、利用ソフトと保有ライセンスを見える化する「ソフトウェア資産棚卸しサービス(Baseline)」、ソフトウェアの資産管理レベルを評価する簡易コンサルティングサービスの「ソフトウェア資産管理アセスメントサービス(Assessment)」、適切なソフトウェアの管理体制を構築するため改善策を提案する「ソフトウェア資産管理導入計画サービス(Deployment Planning)」の3つのサービスで構成している。

日本マイクロソフト ライセンスコンプライアンス推進本部の相田雄二本部長
日本マイクロソフト ライセンスコンプライアンス推進本部IT資産管理推進部の手島伸行部長

 日本マイクロソフト ライセンスコンプライアンス推進本部の相田雄二本部長は、「クラウド化や仮想化などの進展により、ソフトウェアの導入形態は、より複雑化、多様化している。スマートデバイス、モバイルをはじめとしたさまざまな機器が活用されはじめていることも複雑化を加速している。だが、多くの企業においては、SAMが導入されておらず、社内にソフトウェア資産がどれだけあり、どんな形で利用されているのかといったことが把握できておらず、適切なIT投資が行われていない場合もある。結果として、クラウド環境などへの移行に際しても、正しい判断を下せないことにつながっている」と指摘する。

 同社では、SAMサービスを利用することで、情報セキュリティ、ITガバナンス、IT戦略投資計画、コスト削減、コンプライアンスといった企業が抱える課題を解決することにつながることを強調する。

 「非管理のソフトウェアのインストールを排除することで、情報漏えいを未然に防いだり、部門ごとに個別に購入しているものを一括ライセンス購入とすることで、過剰な購入を防ぎ、効率的なIT投資が可能になったり、というメリットもある。マイクロソフト製品だけでなく、幅広く資産管理を行えるのが、このサービスの特徴といえる」(日本マイクロソフト ライセンスコンプライアンス推進本部IT資産管理推進部の手島伸行部長)。

 日本マイクロソフトでは、パートナー支援策のひとつとして、オンプレミス環境で利用しているボリュームライセンスを、パートナーが展開するクラウドサービス上で引き続き利用できる移行促進プログラムを用意している。こうしたクラウドへの移行に関しても、資産管理をベースとすることで、適切なIT投資へとつなげることができるようになる。


VL契約の企業を対象に2012年6月まで無償提供

 一方、リコージャパンでは、今回のサービスのうち、「ソフトウェア資産棚卸しサービス(Baseline)」、「ソフトウェア資産管理アセスメントサービス(Assessment)」の2つのサービスを、Microsoft Enterprise Agreement(EA)やSelect Plusといったマイクロソフトのボリュームライセンス契約の企業を対象に、2012年6月まで無償で提供する。

 同社では、ソフトウェア資産管理サービスの専門組織を設置。SAMスペシャリストと呼ばれる20人の専任者を育成し、全国8カ所の主要拠点に配置。300カ所の拠点を利用した全国規模での販売・サポート体制を活用する。

リコージャパン ソリューション事業本部ソリューション推進センターMA/LAソリューション推進室の宮脇崇裕室長
リコージャパン ソリューション事業本部ソリューション推進センターの八條隆浩センター長

 リコージャパン ソリューション事業本部ソリューション推進センターMA/LAソリューション推進室の宮脇崇裕室長は、「ソフトウェアの購入およびインストールが部門に任され、全社管理ができていない企業や、研究開発部門などの特定部門に対してソフトウェア購入の権限が委譲されている企業においては、SAMを活用した可視化が有効であり、情報システム部門がすべてを統括している企業でも、異常状態の発見や監視といった仕組みを構築する上で効果が見込まれる。また、いずれの企業においても、適正な環境を維持するためにSAMは有効である。情報システム部門においては、非生産的な業務を改善することができ、社内に対して適正な利用を啓発することにもつながる」とする。

 さらに、適正化されたライセンス環境の維持・管理の負荷を低減するための「ライセンス管理の運用改善コンサルティング」や「ソフトウェア購入プロセスの電子化」など、リコージャパン独自のソリューションも提供。SAMサービスプログラムと組み合わせることで、集中購買からソフトウェア資産の棚卸し、今後の効果的なIT投資までを包括的に支援していく。

 リコージャパン ソリューション事業本部ソリューション推進センターの八條隆浩センター長は、「ユーザー企業の要望にあわせて、言われたままにソフトウェアのライセンスを販売するのではなく、ソフトウェア資産管理サービスを同時に提供することで、より適正な規模でライセンスを提供するといった、付加価値を持った提案が可能になる。また、クラウドサービスへの移行の際にも、その前提として適正なソフトウェア管理が必要になり、このサービスを活用することで、複数のバージョンのOffice製品を利用しているユーザーにおいても、Office 365への移行提案が行いやすくなる。リコージャパンでは、20人のSAMスペシャリストに加えて、100人規模の社員を対象にしたSAMに関する教育を実施。当社のドキュメントソフトウェア資産管理などのサービスと連動した包括的な提案を進めていく」としている。

 同社では、SAMサービスプログラムそのものは無償提供となるのが、同サービスの提案を通じたソフトウェアライセンスの販売で初年度10億円、維持・管理のための新たなサービスの提供によって、初年度10数億円の売り上げを見込んでいる。

 なお、SAMサービスプログラムは、日本マイクロソフトのSAM認定ゴールドパートナーであれば取り扱うことが可能であり、リコージャパンを含めて、15社がこれを扱うことになる。しかし、全国規模でのサービス提供体制を持ち、専任担当者を配しているのはリコージャパンだけであり、同社を中心にした展開になるのは間違いなさそうだ。

 リコージャパンでは、SAMサービスプログラムにより、250台以上のPCを導入している企業を対象に、初年度に80件のサービス提供を計画。日本マイクロソフトでは、リコージャパン以外のSAM認定パートナーの提案活動が開始されれば、これを含めて100件程度のサービス提供が可能になると見込んでいる。

関連情報
(大河原 克行)
2011/12/9 15:00