eBayでも採用されているオブジェクトストレージ「EMC Atmos」、国内での提供を開始


Atmosの特徴

 EMCジャパン株式会社は29日、クラウド環境での利用などに適したオブジェクトストレージ製品「EMC Atmos 2.0」(以下、Atoms)を、販売・出荷開始すると発表した。2.0というバージョン番号が付いているが、国内でのAtmos製品の販売は今回が初めて。

 Atmosは、大容量の多様なデータを容易にハンドリングできるようにする、オブジェクトベースのストレージ製品。主に開発用途で利用される仮想環境向けの「Virtual Edition」と、x86ベースの3種類のハードウェアアプライアンスが用意された。

 アプライアンスは最小4ノードから導入でき、スケールアウト型のアーキテクチャを採用しているため、ノードを増やすだけで簡単に容量を増設可能。論理的には無制限に容量を拡張していける、高いスケーラビリティを持つとのことで、すでにペタバイト(PB)クラスの環境で利用しているユーザーも存在しているという。

 さらに、物理的なロケーションが離れているものも含めて、複数のAtmosで構成された仮想的なストレージに対し、単一のネームスペースでアクセスできる柔軟性が特徴で、「画像や音声、動画などの非構造データを、インターネット上で扱うためのストレージに適している。IaaSなどのクラウドサービスを短期間で立ち上げることもでき、クラウド事業者でのサービス用ストレージとしても利用されている」(マーケティング本部 マーケティング・プログラム推進部 ストレージ製品 中野逸子マーケティング・マネジャー)という。


Atmosのラインアップマーケティング本部 マーケティング・プログラム推進部 ストレージ製品 中野逸子マーケティング・マネジャー

 ストレージへのアクセス手段としては、REST/SOAPに基づいたAPIを提供。ユーザーが自由にアプリケーションを作成したり、モバイルデバイスやPCから直接アクセスさせたりできる。

 データ保護機能は、コンテンツの複製を異なるノードへ保存する「GeoMirror」、コンテンツを複数に分割し、復元のためのパリティ情報を付加して異なるノードに保持する「GeoParity」をサポートした。こうしたデータ保護については、各オブジェクトに対してポリシーベースの保護を適用可能で、「例えば、無料サービスのユーザーには容量を効率的に使えるGeoParityを使いつつ、有償ユーザーにはGeoMirrorを利用する、といった使い方ができる。また6カ月アクセスがない場合には保護ポリシーを変えるなど、コンテンツの保護レベルをライフサイクルにあわせて変えることも可能だ」(テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ部 竹内博史マネジャー)。


データ保護の仕組みポリシーベースでデータ保護レベルを柔軟に変更可能

 販売対象としては、前述のようにインターネットを通じてサービスを提供する事業者や、クラウドサービスベンダー、また大容量データを保有する企業でのバックアップ/アーカイブ用途などを想定。2008年からAtmosを提供している米国などでは、eBay、VistaPrint、AT&T、SAVVISなど、すでに100社以上の企業で利用されており、「特にAT&Tでは、Amazon S3に対抗するようなクラウドストレージをすぐに立ち上げたいということで採用いただき、3カ月でカットオーバーにこぎ着けた」(中野氏)実績があるという。


対象とする市場グローバルの導入実績とニーズ

 EMCでも、同様のニーズに応えるためにAtmos関連のソリューションを整えているとのことで、課金や認証、ポータルなどの周辺機能を網羅したソフトウェアパッケージ「Atoms Cloud Delivery Platform」、クライアントPC向けアクセスツール「EMC GeoDrive」、「EMC Cloud Tiering Appliance(旧名:Rainfinity FMA)」と連携したクラウドアーカイブソリューションなどを用意した。

 竹内氏はこうした取り組みについて、「他社のアプローチと比べると、Cloud Delivery Platformのようなツールを用意したり、サードパーティと協業したりして、周辺のソリューションを整えている点が強み。オブジェクトベースのストレージは、まだ日本ではIT管理者が導入をちゅうちょしている感が強いので、ハードルを下げるソリューションに注力していく」とも述べている。


課金や認証、ポータルなどの周辺機能を提供する「Atoms Cloud Delivery Platform」「EMC GeoDrive」「EMC Cloud Tiering Appliance」といったツール、ソリューションも提供する

 なお、サービス事業者やクラウド事業者では、大量のデータを扱うためにコストに関してはとても敏感だが、Atmosはコモディティ化されたx86アーキテクチャのハードウェアを利用しているため、コスト面でも優れているとのこと。

 中野氏は「大量データを扱うため、お客さまは運用コストを含めたコストを重視されるし、お客さまへのサービスインフラでもあるから品質面も重要。これらが大きなニーズになっている」と、Atmosの価値を説明。竹内氏も「クラウド(IaaS)構築には、OpenStackのようなオープンソースソフト(OSS)のクラウド構築ツールもあり、初期コストは確かにOSSの方が安いが、サービスを運営することも含めたトータルのコストを削減するにはAtmosが効果的と考えている」と話している。

 具体的な価格は個別見積もりのため非公開だが、前述のVistaPrintでは、WebサーバーとNASベースのストレージを組み合わせた環境と比べ、30%程度の費用を削減できたとしている。

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