シャープ、ビジネスクラウドサービスを来春にも開始

~ガラパゴスやコンビニの複合機をクラウドポータルに活用


 シャープは、来年春にも、ビジネスクラウドサービスを開始する計画を明らかにした。

 12月16日から出荷するデジタルカラー複合機の新製品を、クラウドサービス向けのポータル端末と位置づけるほか、12月から出荷を予定している電子書籍端末「ガラパゴス」や、スマートフォンなどに、クラウドを通じて、情報を配信するといった利用提案を行う。

シャープのビジネス向けクラウドサービス構想

 名称は「データ・キャビネット・オンライン」としており、サービス開始時には、ガラバゴスストアなどを通じてクライアントソフトを配布することになる。

端末売り切り型ビジネスを脱却、クラウドサービス事業へ

シャープ 執行役員ビジネスソリューション事業統轄兼ドキュメントソリューション事業本部長の中山藤一氏

 「カラー複合機は、2005年にシャープが業界に先んじてSharp OSA(オープン・システムズ・アーキテクチャー)を発表。インターネット、イントラネット向け端末のインフォメーションポータルとして製品開発を行った。今回のカラー複合機の新製品は、この考え方をワンランク上げて、クラウドポータルとしての活用を視野に入れた使いやすさにこだわった。」(シャープ 執行役員ビジネスソリューション事業統轄兼ドキュメントソリューション事業本部長の中山藤一氏)

 当社が提供するクラウドサービスによって、企業におけるデータ共有に活用。電子文書と紙文書によるユビキタスオフィスの実現と、新たなワークスタイルを実現するソリューションを提案できる。」(中山氏)

 シャープの片山幹雄社長は、かねてから「クラウドサービス事業への投資を積極化させ、端末売り切り型のビジネスらの脱却を図る」としていたが、来年春のビジネスクラウドサービスは、その実現に向けた大きな一歩となる。


ビジネス環境を取り巻く技術の変遷シャープのユビキタスオフィス構想

独自ハードウェアを開発し、クラウドポータル化

 ビジネスクラウドサービスの詳細なサービス内容については、来年春にも公表するとしているが、他社のクラウドサービスとの違いを、「独自のハードウェアを開発し、それをクラウドポータルとして利用できる点」とする。

 その一例として、中山執行役員は、「全国4万件のコンビニエンスストアのうち、1万7000件にシャープの複合機が導入されておりトップシェアの実績がある。今後、コンビニエンスストア各社と話し合いを進めることで、これをネットワーク化し、クラウドポータル化できる」とする。

 外出先で手元にある文書データを、全国各地にあるコンビニエンスストアに導入されたシャープの複合機を利用して、クラウドサービスに情報をアップ。さらに、必要な情報をクラウドから引き出して、コンビニの複合機からプリントアウトしたり、データを引き出したりといったことも可能になる。

 この仕組みを利用することで、将来的にはコンシューマユーザーに対するクラウドサービスにも展開できることになる。


コンビニ複合機シェアNo.1の強みを活かしてプリントインフラ構築へ

ガラパゴスやスマートフォン、電子黒板も含め展開

 一方、電子書籍「ガラパゴス」や、IS03などのスマートフォンを端末として、クラウドに蓄積されたビジネス情報を閲覧したりといった活用も可能になるほか、電子黒板にクラウドサービスを通じてデータを転送したり、電子黒板に書き込んだ情報を共有できるようになる。さらに、OSAに準拠したクラウドアプリケーションが利用できるというメリットもある。

 「シャープが今年8月に発売した電子黒板は、世界初のクラウド対応ホワイトボードと位置づけている。また、米国では約200社がOSAのソフトウェアを活用しており、これらのソフトウェアベンダーが開発したアプリケーションが広がることになる」(中山執行役員)などとした。

 データキャビネットオンラインでは、情報を取り扱う様々な機器と、全国のコンビニエンスストアや企業内に広がる複合機によるプリントインフラを活用することで、「どこでもデータが作成、保存でき、どこでもデータを閲覧でき、必要な時には、どこでも簡単にデータを印刷できる環境が整う。出張先や在宅勤務の環境でもオフィスにいるのと同じ環境が実現できる」(シャープ ドキュメントシステム事業本部ドキュメントシステム事業部商品企画部・本田良孝部長)としている。

 データセンターに関しては、シャープが運用を行い、インフラや課金などの仕組みを提供することになる。

アドバンスドプレビュー機能によって、読み込んだ原稿を表示し、レイアウトの確認やページ順の変更などを行える
電子書籍端末「ガラパゴス」や、IS03などのスマートフォンがポータル端末となる
複合機がクラウドの入力デバイスやデータポータルになり、電子書籍端末や電子黒板がクラウド端末になる

【お詫びと訂正】
初出時、アドバンスドプレビュー機能のキャプションがデータ・キャビネット・オンラインの説明になっておりました。お詫びして訂正いたします。

 

新たに投入するカラー複合機~出先から利用するクラウドポータルへ

シャープ ドキュメントシステム事業本部ドキュメントシステム事業部商品企画部・本田良孝部長

 一方、新たに投入するカラー複合機は、タッチパネル方式を採用した10.1型カラー液晶を搭載したカラーおよびモノクロ印刷で毎分26枚の「MX-2610FN」(希望小売価格134万9250円)、同31枚の「MX-3110FN」(148万5750円)、同36枚の「MX-3610FN」(184万4800円)の3機種。

 これまでの複合機では一般的だったテンキーを排除し、ハードキーは電源、節電、ホームキーにシンプル化。プレビュー画面では、ページをめくる感覚で読み込んだ原稿を確認できるなど、タッチパネルによる直感的な操作で利用できる。必要なキーは、必要な操作の時に画面上に表示されることから操作に慣れないユーザーでも使いやすい。

 簡便な操作環境を実現することで、外出先のクラウドポータル端末として利用できるような工夫を凝らしたという。

 なお、同社では、A4サイズ対応のデジタルフルカラー複合機など5モデルなども同時に発表している。

最上位機となる「MX-3610FN」(中央)など新製品
関連情報
(大河原 克行)
2010/11/22 19:51