ニュース

Google Cloud、2026年は「AIエージェント」で企業変革を加速 三上新代表が事業方針を発表

グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の三上智子氏

 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社は23日、2026年の事業方針について説明。日本代表の三上智子氏は、5つの重点領域として、「インフラ」、「開発者体験」、「データ」、「セキュリティ」、「エージェントの業務ツール」を掲げ、「2025年は、Gemini 3やNano Banana Proなどの革新的サービスを提供してきたが、これらのサービスをお客さまの価値に変えなくては意味がない。2026年は、そのための支援をしていきたい。今後は、ビジネスプロセス全体を自律的に実行するマルチAIエージェントの時代に突入する。AIレディのビジネスに進化させ、技術や製品をビジネス価値に変えていくことが必要である」と発言した。

 さらに、「価値につなげ、ビジネスを広げ、コスト構造を変えることで、企業変革、ビジネス成長を支援する。お客さまやパートナーを全方位で支援していく」と語った。

AIを中心に、ビジネスの未来をつくる

 三上代表は日本マイクロソフトに20年間在籍し、執行役員常務 エンタープライズサービス事業本部長などを務めた経験を持つ。2025年10月1日付でGoogle Cloudの日本代表に就任しており、メディア向けに説明を行ったのは今回が初めてとなった。

 三上代表は、「激動のAI時代において、責任ある立場で日本のお客さまを支援できることに背筋が伸びる思いである。その一方で、この仕事に非常にワクワクしている」と語った。

 その上で、「Google Cloudのすべてのソリューションが、AIで強化されている。クラウドインフラ、チップセット、基盤モデル、サービスまで、フルスタックで自らチューニングができるという圧倒的な強みがある。さらに、オープンなプラットフォームであり、さまざまなサービスと連携しながら、水平方向にスケールすることで価値を提供できるのも特徴である」とした。

AIエージェントを実現する技術をフルスタックで提供

 5つの重点領域については、次のように説明した。

 「インフラ」では、OracleやSAPなどを活用するための基盤としてのインフラだけでなく、GPUやTPUを顧客向けに提供。「開発者体験」では、Gemini APIやVertex AIを中心としたAI開発基盤やコーディングエージェントなどの最先端の開発者向けAIを提供する。「データ」では、「AIエージェントなどに最適化したデータプラットフォームを再定義していかなくてはならない」と発言した。

 また「セキュリティ」については、賢くなる攻撃者に対抗するために、AIで強化したセキュリティソリューションを提供するとコメント。脅威にさらされた時には、インシデントレスポンスサービスで速やかに対応できる強みも示した。

 「エージェント時代の業務ツール」については、「エージェント時代には働き方が大きく変わる」とし、Google WorkspaceやGemini Enterpriseが、すべてのワーカーにとって、起点となるプラットフォームになると位置づけ、「AI時代の新しい働き方を再定義することになる」と述べた。

 また、Google Cloud日本法人の目指すべきビジョンを、「AIの力でともに創ろう、ワクワクする日本の未来を」としたことに触れ、「代表に着任後すぐに、リーダーシップチームとともに、2日間をかけて策定した。一語一語に心を込めて作った」と話す。

 「AIを中心としたテクノロジーの力を、プラットフォーマーであるGoogle Cloudだけで提供するには限界がある。お客さま、パートナーとともに創り上げていくことが大切になる。また、日本法人の社員は、米国の会社に属しているからこそ、日本に対して熱い思いを持っている。子どもたちが希望を持てる日本の未来を作りたい、世界に誇れる日本にしたい、お客さまが世界に発信するビジネスを一緒に作りたいという思いがある。課題先進国である日本だからこそ、最先端の新たな事例を発信し、世界をリードしていける。AIの力で強化されたクラウドソリューションにより、全社一丸となって、グーグル・クラウド・ジャパンの新たなビジョンを推し進めたい」と語った。

AIの力でともに創ろう、ワクワクする日本の未来を

Gemini EnterpriseやGoogle Workspaceなど各事業の取り組みを担当者から説明

 一方、日本における各事業の取り組みについてもそれぞれの担当者が説明した。

 Gemini Enterpriseについては、グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 テクノロジー部門統括の寳野雄太氏が説明した。

グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 テクノロジー部門統括の寳野雄太氏

 「エージェントを自社で作りたいというニーズには開発者向けプラットフォームのVertex AIが適している。GeminiやClaudeのAPIも提供している。その上のレイヤーとして、業務ですぐに使えるエージェントおよびプラットフォームとして提供しているのがGemini Enterpriseになる」と話したほか、2026年1月に米国ニューヨークで開催されたNRFでは、Gemini Enterprise for Customer Experience(GECX)を発表し、エージェントが小売りやブランド向けに協業して、新たな顧客体験を提供できるようになるとした。

Gemini Enterprise for Customer Experience

 GECXで提供するショッピングエージェントで次のような体験が可能だ。

 誕生パーティーの飾りつけのために、eコマースサイトで、「バースデー」と検索すると、ショッピングエージェントが誕生日を迎える子どもの年齢、参加者数などを質問。利用者は、会場となる庭や部屋の自宅の写真を送ると、それに最適な商品をレイアウトした自宅の様子を、自動的に動画生成して商品を提案する。また、より具体的なシーンとして、飾りつけの様子などを確認できる。それらの商品を一括して購入することも可能であり、予算に応じて購入するものを減らすこともできる。

 「ここまでの接客は人では行えない。エージェントだからこそ提供できる新たな顧客体験が可能になる」とした。

Shopping agent

 Google Workspaceでは、グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 Google Workspace 事業本部グローバルスペシャリティサービスの山銅章太氏が説明した。

グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 Google Workspace 事業本部グローバルスペシャリティサービスの山銅章太氏

 Google Workspaceは、オフィスでの生産性を高めるプロダクティビティツールとして進化してきたが、2024年2月にGoogle Workspace Geminiに名称を変更し、AIを活用して個人の生産性を高めるツールとして再定義。2026年からは、新たにAgentic Workplace Transformationを提唱しており、自律的なエージェントを使い、企業そのものを変革していくツールになるという。

 ここでは、生保・損保業界の事例を紹介。加入者が海外旅行中にカメラが壊れた場合、撮影した映像の損害状況を査定するエージェントと、保険プランによって支払い対象であるかどうかを確認するエージェント、実際に保険金を振り込むエージェント、例外措置に対応するためのメールやチャットを行うエージェントがそれぞれ連携することで、最適なサービスを提供することができるという。

 「Google Workspaceは、会議やチャットを行うためのツールではなく、企業全体の知的財産を多くの社員が使えるツールへと形が変わっている。2026年は、Gemini Enterpriseの力が加わり、AIでDXを成し遂げるツールに進化する。Google Workspaceの形が変わる1年になるだろう」とし、「Google Workspaceによって社員が不要になるのではなく、社員がAIエージェントの指揮を執って仕事ができるため、個人の生産性は飛躍的に上昇する。また、企業ポリシーのガードレールのなかでAIエージェントが稼働するため、AIのメリットを安全に享受できる」などとした。

Agentic Workplace Transformation

 なお、山銅氏は、Google Workspaceを構成するAIリサーチツールのGoogle Notebook LMを使い、自らがグーグル・クラウド・ジャパンに入社後に蓄積したメールや録音したミーティング内容、履歴書などのデータをグラフィックレコーディング化するように指示した事例を紹介。3分20秒ほどで詳細な内容を記述した絵が完成したと述べ、そのデータを紹介していた。

 注目を集めるTPU(Tensor Processing Unit)については、グーグル・クラウド・ジャパン 技術部長(インフラ、アプリケーション開発、データベース)の安原稔貴氏が説明した。

グーグル・クラウド・ジャパン 技術部長(インフラ、アプリケーション開発、データベース)の安原稔貴氏

 「Google Cloudの強みは、データやモデル、AIプラットフォーム、エージェントやアプリだけでなく、これらを実行するAIインフラまでを自ら構築している点にある。TPUは、10年にわたって継続的に技術革新を進めてきた経緯があり、当初はGoogle Photoの画像認識に対応するところからスタート。大規模モデルのGeminiの登場にあわせて、TPUも進化させている。必要なサービスを実現するために、必要なチップを自ら開発してきた。だからこそ、Geminiを効率よく提供することができる。これを2018年のv2からお客さまにも提供している」と歴史を振り返った。

 TPUでは、行列の積和演算を行うなどの特徴を持ち、データセンターにおける省電力性を実現し、コストダウンにも効果があることも強調した。

Google独自開発のTensor Processing Unit

 さらに、開発者の生産性を支える統合開発環境(IDE)として、Google Antigravityを紹介。Gemini 3の能力を最大限に発揮するためのIDEであり、個人開発者向けにパブリックプレビューとして無償で公開しているところだ。「今後は、Google Cloudの製品としてエンタープライズ向けに提供する」という。

Google Antigravity

 Google Antigravityは、人と協調しながら、自律的に開発を行うエージェント型のIDEで、人がアーキテクトとなり、自律的AIエージェントが、それぞれにタスクを実行するものだ。「複数のAIエージェントが部下になり、改良を繰り返すことができる。人がAIエージェントにコードの生成を指示するのではなく、自律してコードを書くAIエージェントで構成した開発チームを率いる役割を果たすことになる」という。

 AIエージェントによる作業全体をオーケストレーションするダッシュボードや、レビュー機能なども提供するとした。

Google Antigravityは人間と協調し、自律的に開発を行うエージェント・ファーストIDE

 グーグル・クラウド・ジャパンが推進しているTAP(Tech Acceleration Program)については、グーグル・クラウド・ジャパン テクノロジー本部アプリケーションモダナイゼーション担当の小林昌利氏が説明した。

グーグル・クラウド・ジャパン テクノロジー本部アプリケーションモダナイゼーション担当の小林昌利氏

 TAPは、3日間程度の合宿形式のワークショップを通じて、顧客のビジネス課題の解決に向けたソリューションの開発や実証をスペシャリストが支援するもの。Google Cloudのプロダクト、プラクティス、カルチャーをベースにして、実ビジネスの課題を解決するための施策を作り上げるという。

 「約4年前から実施しているプログラムである。単なるハンズオンやレクチャーとは異なり、実際に開発するアプリケーションにおいて、最適なアーキテクチャーの構築、プロトタイプの開発に、スペシャリストが伴走することになる。Google Cloudの最新テクノロジーやカルチャーも学んでもらえる」とした。

Tech Acceleration Program(TAP)

 NECでは、投資家向けに開示するTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のレポート制作作業の効率化においてTAPを活用。すべての拠点を対象にリスク評価プロセスを拡張すると、8万時間の工数が必要になると推定されていたが、Geminiなどを活用したAIエージェントが自律的に調査、分析を行い、その結果をレポートにするまでのプロセスを自動化。これを3日間のワークショップで実証し、約200時間で作業が完了することがわかったという。

NECの事例

 すかいらーくグループでは、配膳ロボットなどの積極的な導入により、現場業務の効率化は進展したものの、顧客とスタッフとの接点が減少し、サービス品質に課題が発生していることに着目。店舗内に設置した多数のカメラで撮影したデータを活用して、顧客対応品質の改善に乗り出した。

 当初は複雑なシステム構築を検討していたが、TAPを通じて、BigQueryの最新機能を活用した処理をスペシャリストが提案。具体的なアーキテクチャ設計とプロトタイプ開発を2日間で行い、大幅に前倒しをしながらプロジェクトを推進できたという。その結果、プロンプトの改善や、全体システムの最適化などに時間を費やすことができたとした。

すかいらーくグループの事例

 「2026年は、TAPの適用範囲を、戦略的なアプリケーションや、大規模システムにも広げていきたい」と述べた。

 グーグル・クラウド・ジャパン 上級執行役員 パートナー事業兼法人営業統括の上野由美氏がオンラインで説明した。

グーグル・クラウド・ジャパン 上級執行役員 パートナー事業兼法人営業統括の上野由美氏

 「2025年は全国のパートナー企業に足を運び、現場でのビジネスにかける情熱や、お客さまの真剣な姿勢に触れることができた」としながら、2025年4月に発表したパートナーエコシステムを推進し、AI時代の基盤を構築する元年であることを強調。「日本でも多くの生成AIの事例が生まれ、パートナーとのビジネスを飛躍的に成長させることができた」と振り返った。

 さらに、2026年は、パートナー事業と中堅成長企業を担当する法人営業組織を統合し、事業拡大に取り組む姿勢を示すとともに、2026年1月15日から、新たなパートナープログラム「Google Cloud Partner Network」を始動させたことにも触れた。

 エンタープライズ市場では、大手コンサルティング企業や、大手SIerとの協業を深化させ、経営課題に直結するDX戦略を強化。上流段階から実装に至るまで一気通貫で支援するという。スケールビジネス(中堅成長)市場では、中堅企業に対するパートナー主導モデルへと大胆にシフト。案件発掘からクローズに至るまで、対象事業領域の拡大を目指す。また、ソブリン戦略を打ち出し、経済安全保障の観点から、国内主要パートナーと協力して、セキュアな基盤を提案。防衛、公共に加えて、金融、製造などにおける機微データへの対応強化も図るという。

 Google Cloud Partner Networkでは、プログラム内容を刷新し、AIを活用して、パートナーの知見や貢献度を、より詳細に評価するシステムを構築。組織の規模だけでなく、特定の技術や業種の専門性などを重視した仕組みに変更したという。

 「新たなパートナープログラムを通じて、エンタープライズ、スケールビジネス、ソブリンの3つの市場戦略を加速することになる」と語った。

パートナーエコシステム変革