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MCDR、NRTキャンパス内にAIインフラ検証施設を開設、3棟目となるNRT14を開業

 MCデジタル・リアルティ(以下、MCDR)は8日、千葉県印西市の同社データセンターNRT12内に、検証施設「MCデジタル・リアルティ イノベーションラボ(DRIL)」を開設した。AIやハイブリッドクラウドなどの実証環境を備えた施設で、パートナー企業およびユーザー企業に対して本番環境に準じた検証環境を無償で提供する。

AIインフラのPoC向けラボを開設

 AI導入の急速な進展に伴い、水冷サーバーの導入が必須になりつつある。ただし、水冷システムはさまざまなプロダクトを組み合わせなければ実現できず、さらに空冷の機器がなくなるわけではない。水冷と空冷を組み合わせた複雑な環境が必要になっているが、ユーザー企業はその対応に頭を悩ませている。

 MCDRが開設したDRILでは、空冷および直接液冷の両環境を含むインフラ構成を実際に評価することで、本格導入に先立って、性能や電力密度、冷却戦略の検証を行える。NRT12内のDRILは、米Digital Realtyが2025年9月に米国バージニア州北部に開設した施設に続く2拠点目の施設で、シンガポール(2026年後半に開設予定)に先駆け、アジア太平洋地域初の施設となる。

 MCDR代表取締役社長の山下康平氏は、「AIインフラの設計においては、電力容量や冷却方式、運用効率をいかに最適なバランスで構成するかが鍵となる。本施設では、空冷および直接液冷を含むさまざまなユースケースに対応できる環境での実証を可能にし、企業が本格導入前に自社要件に最適な構成を見極めることができる」と述べた。

 DRILでは、日本国内の企業に対し、パフォーマンスの検証や構成の最適化を可能にするとともに、ServiceFabricを通じてクラウドおよびネットワークプロバイダーへのシームレスな接続を実現する。また、以下のような実証を行える。

  • 高密度AI/HPCテスト
  • エネルギーおよび冷却設計の事前検証
  • AIインフラの最適化
  • ハイブリッドクラウドの検証
  • AIワークロードオーケストレーション
  • 拠点間のレイテンシー検証

DRILの設備概要

 空冷から水冷に移行する過渡期である現在、顧客企業からは以下のような声が寄せられているという。

 「水冷が必要だが、サーバールームの中に水を入れるのは従来のデータセンターではあり得ない話。実際どういうものを搭載してどのように水を回すのか、どのように水漏れやセキュリティの対策をするのか、どのようにメンテナンスするのか、実際に見たこともないため投資判断が非常に難しい」

 これに対するデジタル・リアルティの提案がDRILだ。パートナー企業がさまざまなプロダクトを提供しており、水冷と空冷のハイブリッド環境で、GPUやCPUの水冷サーバーのクラスターを構築している。

 このラボには、三者三様のメリットがある。水冷ソリューションベンダーにとっては、
さまざまなベンダーの製品と組み合わせてどのように機能するかを見せるショーケースとなる。水冷システムは複数のプロダクトを組み合わせる必要があり、自社の製品単体で説明しても顧客企業側ではイメージをつかみにくい。このような環境は販路拡大に資するだろう。ユースケースが既にある顧客企業にとっては、ワークロードを持ち込んで無料でPoCのテストを実行できる。実際のネットワーク環境に、実機を導入して試してみることができる検証施設は貴重だ。

 DRILの利用自体は無料で、通常のラックや電力の使用料金はかからない。DRILはオープンな施設だが、「うまくいったので、このままMCDRのデータセンターに構築したい」といった移行も容易なため、MCDRにとってもメリットがある。

 DRILは、データホールフロアの一角に、通常通りのホットアイルキャッピングでラック列が作られている。水冷用のパイプが頭上に通っているのが水冷システムの特徴で、無施錠のドアでホットアイル側にも自由に入れる。

DRIL

 DRILには多数のベンダーが製品を提供しており、例えば以下のようなものがある。

ラック

 日東工業製のオープンラック(特注)は、ラック自体がAC/DCコンバーターになっていて、背面にあるバーから直接DC48Vの電力が供給される。サーバーなどの機器類は、コネクターにはめ込む仕様で、ラックPDUが不要であり、電源ケーブルの取り回しも不要だ。

日東工業製のオープンラック。背面中央に縦に走っているのが電源バー

水冷システム

 一次冷却水を、水冷サーバーが受け入れ可能な温度と流量に調整するラックCDU(ニデック製)が入っている。一次冷却水はファシリティの水を使わず、クーラントをコンプレッサーで冷やす冷却装置によって冷却水(PG25クーラント)を作り出している。また、リアドア製品も設置されていた。

ニデックのCDU

ネットワーク機器

 ネットワーク機器にも水冷対応のものが出始めており、DRIL内にはジュニパー製の水冷スイッチが設置されていた。また、ARISTA製高集積スイッチ(64ポート400G)もあった。AIインフラには高密度サーバーが必要となるが、さらにこのような多ポートのスイッチはスパイン&リーフのスパインの役割として使われる。また、Micas製オプティカルモジュール搭載スイッチもあった。これを使うと、オプティカルモジュールを別途調達する必要がなくなる。

ジュニパーの水冷スイッチ
Micasのオプティカルモジュール搭載スイッチ

サーバークラスター

 富士通製やCerebras製など、複数のGPUサーバーおよび水冷のCPUサーバーが設置されている。また、MCDRの顧客であるRunSun Cloudが水冷サーバーのクラスターを作り、クラウドGPUインフラとして提供している。

富士通の水冷ソリューション
RunSun Cloudの水冷サーバー

NRTキャンパス3棟めのNRT14を開業

 同日、NRT12に隣接する場所に、NRTキャンパス3棟目のNRT14が開所した。これにより、NRTキャンパスのサーバー用電源容量は合計で約100MW規模に拡大する。NRT14は最先端GPUに適合した高電力・高密度対応の液冷・空冷ハイブリッド環境を備え、多様化するAIインフラ需要に対応する。

「NRT14」外観

 NRT14は、液冷データセンター向けNVIDIA認証を取得しており、100kW超の高密度AIワークロードをはじめ、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)、機械学習、仮想・拡張現実などの用途において、高い性能と効率を両立した安定的運用と運用コスト削減に貢献する。

 さらに、GPUサーバーの安定稼働に最適な、液冷と空冷が共存可能なハイブリッド型ファシリティを提供。ラックあたり最大150kWの高密度コロケーションサービスに加え、低レイテンシかつ高速なネットワーク環境を備え、首都圏で高まるAIインフラ対応データセンターへの需要に対応する。

 施設概要は以下の通り。

延床面積:22,867㎡
サーバー用電源容量:25MW
収容可能ラック数:約2,800ラック
建物:地上6階、免震構造

 AI向けなど超高密度の水冷サーバーのフロアと、従来型のクラウドサービスやエンタープライズのオンプレミスシステム向けなど、用途をフロアごとに分けて提供するという。

 免震構造建物で、
空調チラーや非常用発電機(ガスタービン)はN+1の構成となっており、従来からあるエンタープライズ向けデータセンターと同様のスペックだ。デジタル・リアルティCTOのクリス・シャープ氏によれば、「現状はコンテナ型は考えていない。これまで通りのモジュラー型にフォーカスしている」といい、オンプレミスのシステムやプライベートクラウドが、パブリッククラウドやAIプラットフォームの近くにあり、同じキャンパス内で拡張していけることを強みとしている。