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NECが知財コンサル事業に本格参入、独自AI技術と4万件超の特許実績で「知財DX」を支援

 日本電気株式会社(以下、NEC)は19日、知的財産コンサルティング事業に参入する。企業価値を計る指標として、企業の知財が脚光を浴びていることに着目。NEC自身がこれまで培ってきた知的財産業務のノウハウと、AI、SaaSといった技術を活用することで、企業の知財業務の効率化、高度化など知的財産業務のDXを実現し、企業の価値向上に貢献することを目指す。

 スケジュールとしては、2026年4月から知財業務効率化ツール、コンサルティングサービスの提供を始め、2028年までに特許関連事業を行っている他社との協業を強化。2030年までに知財業界の革新を実現し、30億円以上の売上を目指すとしている。

知財は「守り」から「経営戦略の中核」へ

 NECでは新たに知財事業に参入する背景として、企業の知財を取り巻く状況が大きく変化していることを挙げる。

 「現在、企業の知財の役割が大きく変わっている。市場環境が変化し、技術・ビジネスモデルの優位性が短期間で変化するようになっている。その一方で、企業価値という観点では、従来の財務情報と並び、特許取得数など知的財産の質・量が企業価値に影響を及ぼすようになっている。従来は守りのみが考えられていた知的財産だが、企業評価の指針として、経営戦略の中核になるといった変化が起こっている」(知的財産&ルールメイキング部門 知的財産&ルールメイキング部門長の井本史生氏)。

知的財産&ルールメイキング部門 部門長の井本史生氏

 また、従来型の知的財産部門は、専門知識を持った人材が不足しているか、知識がある人への属人化する傾向がある。こうした課題解決のためにAI活用が模索されているが、汎用AIでは専門性が必要な特許情報に十分に対応していない。

 さらに、知財をきちんと保護し、活用していくためにはコストがかかるが、保護した知財は既存業務との整合や他部門への展開が後れを取り、十分に活用できていないといった課題も抱えている。

知財DXのニーズの高まりと知的財産部門が直面している課題

4万3000件の特許実績と独自AI技術で「知財DX」をトータルに支援

 NECではこうした課題を解決するために、グループで保有する4万3000件の特許に関する経験、社内で保有するAI技術などを活用した知的財産コンサルティング業務を新たにスタートする。従来の知的財産業務支援は、知財開発支援を行うことがメインとなることが多かったが、事業開発・技術開発・知財開発を支援していくためのアプリ、知財業務に特化したAIを提供することで、知財業務をトータルで支援していくという。

NECだからできる知財DX

 NECが提供するSaaSでは、発明を記載したアイデアシートに入力し、生成AIと壁打ちを行うことによって、特許庁に提出する書類を自動作成できる。従来は数週間かかっていた作業期間を短縮可能となる見通しだ。

発明を記載したアイデアシートを入力し、生成AIと壁打ちをするだけで、特許庁に提出する書類を自動作成

 申請しようとする特許と同じようなアイデアの有無を調査する作業に関しても、特許に特化したRAGを適用することで、先行文献調査の効率化と高度化を実現。人手で行う調査と遜色(そんしょく)ないレベルの調査をAI活用で済ませることができるという。

NECが培ったRAGの技術を特許分野に適用し、先行文献調査の効率化・高度化に寄与

 「当初は汎用的な生成AIの活用で済ませることができないか試してみたが、汎用AIは特許に関するデータが十分ではないことが明らかになった。そこで、特許調査に特化したRAGを新たに開発し、日本、米国、欧州の先行文献調査を進めることができる。中国の文献については、現段階ではカバーしていないものの、問い合わせも多いことから、今後対応できるよう検討している」(知的財産&ルールメイキング部門 シニアプロフェッショナルの上田健一氏)。

知的財産&ルールメイキング部門 シニアプロフェッショナルの上田健一氏

 知財業務を効率化するために、知財コンサルティングを行っている会社の手法をAIが再現。技術領域の知財を定量評価し、技術、知財戦略の適正化を行う。従来は客観視されることが少なかった自社の技術領域をクラスタリングし、市場規模推定、クラスタごとの市場規模推定、パラメータ推定、定量評価を行う。競合が多い分野なのか、将来性はあるのかなど客観的な評価につながる。

コンサルティング会社の手法をAIが再現、技術領域の知財を定量評価し、技術・知財戦略を適正化

 すでに、精密機器メーカー、総合電機メーカー、消費財メーカーなどと実証実験を実施しており、その中で、知的財産業務の効率化、高度化に関してポジティブな評価を得たという。

 また、留意する必要があるセキュリティに関しても、防衛や金融業向けで活用されているセキュリティ対策を導入し、特許に関するデータを保護していく。

防衛・金融業向け等の事業を行うNECの高度な基準に合致する高度なセキュリティ対策を導入し、特許に関するデータを保護

 今後は、2026年4月からフェーズ1として知的財産業務の効率化ツールの提供、コンサルティングサービスの提供を開始する。2028年まではフェーズ2として国内外の特許事務所など他社との連携を強化する。知財エコシステムを構築し、パートナーシップをとりながら業務効率化ツール、コンサルティングサービスの改善と機能の拡充を図っていく。

 2030年までには、フェーズ3として知財業界における革新実現を目指すとのことで、知財業務のDXを行う企業としてリーディングポジションの確立を図る。この時点では売上30億円以上を目標とする方針だ。

今後のNECの知財DX事業の展開