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リコー、企業独自のノウハウを生かせるAIソリューション「秘伝のタレPlatform」を開発へ
オンプレミス導入に最適な日本語LLMの開発も発表
2025年12月9日 06:30
株式会社リコーは8日、現在進めているAI事業に関する説明会を開催した。
同社は1980年代からAI開発に取り組むなど、AIソリューション作りを進めてきたが、そうした実績を生かし、個別の企業に特化したLLMと、専門家AIエージェント、司令塔となるAIエージェントを組み合わせた「秘伝のタレPlatform(H.D.E.E.N)」を開発しており、今後、製品化を目指すという。
リコーのリコーデジタルサービスビジネスユニット AIサービス事業本部 本部長、梅津良昭氏は、「現在、何社かのお客さまに先行提供している。2026年3月くらいまでの期間に各社の注力ポイントを決めて、それぞれの企業に必要なものはどこなのかといったことを見極めていく。2026年3月までをそういった試行錯誤期間にしており、4月以降に具体的なビジネスとなる実用サービス作りを進めていくことを想定している」との現状を説明した。
リコーでは1980年代からAI開発を進めており、2015年からは外観検査向けAIをはじめ、路面性状検査システム、振動モニタリングなどさまざまなシステムを開発してきた。2021年には、自然言語処理AIを用いて業務の効率化や価値創造を支援する新サービス「仕事のAI」を発表している。
また、生成AI登場後は積極的に生成AIに取り組み、2023年3月には「リコーLLM 6B」を開発。「当時はChatGPTの日本語機能が十分ではなかったことから、国内では最速グループで日本語LLMを提供した」(リコーのリコーデジタルサービスビジネスユニット AIサービス事業本部 デジタル技術開発センター 所長、鈴木剛氏)という。
また、その後も進化を進めており、10月10日には、推論性能を強化し、GPT-5と同等の/docs/news/2054186.html高性能な日本語大規模言語モデルを開発したことを発表した。
また6月には、AIが苦手だとされてきた、図表を読めるリコー製LMM(大規模マルチモーダルモデル)の基本モデルを開発完了したことも発表している。
さらに今回は、Googleが提供するオープンモデルGemma 3 27Bをベースに、オンプレミス環境への導入に最適な高性能LLMを開発した。モデルサイズは270億パラメータとコンパクトでありながら高性能を実現。PCサーバー等で構築でき、低コストでのプライベートLLM導入を可能にするという。
リコーが培ってきたこうした技術を紹介すると、多くの企業や団体から問い合わせを受けるようになった。これは、社内にある膨大な暗黙知の資産を活用できていない企業が多いためだ。「例えば社員が提出する日報は、さまざまな場面で活用できる重要な情報が多いものの、非構造化データが多いこともあってデータ化が進んでいない。また、ベテラン社員が退職する時期を迎え、彼らが持っている暗黙知をどうにかしたいという問い合わせも多い」(梅津本部長)。
このような声を受けて開発を進めたのが、「秘伝のタレPlatform(H.D.E.E.N)」である。この秘伝(H.D.E.E.N)とは、「Hidden・Deep・Expertise・Engine・Nexus」から頭文字を採ったもので、「正式名称ではないが、秘められた深層の専門知識を活用するシステムの中核という意味を込めている」(梅津本部長)という。
具体的には、その企業に特化した知識を持つAIエージェントがユーザーの質問意図を理解し、さまざまな企業情報から自律的に最適な回答を導く仕組みである。
ユーザーが投げかけた質問を司令塔AIエージェントが整理・判断し、各専門領域に特化した個別のAIエージェント(専門家AIエージェント)に対してタスクを指示。ナイーブRAGやマルチモーダルRAGなどの各種RAGや推論機能を用いて、専門家AIエージェントが専門的な検索や回答の生成を実施し、各エージェントが集めてきた結果を司令塔AIエージェントが検証して、最適な回答を生成しユーザーに届ける、といった形になる。
また、ベースとなるLLMを基に、その企業に特化したプライベートLLMを開発することで、企業や業界特有の知識や用語を理解したうえで、正確に解釈し回答する点も特徴だ。
なお「H.D.E.E.N」をはじめとした開発成果については、「サービスとなる前のソリューション段階」(梅津本部長)と説明。2026年3月までの間に先行導入企業の生の声を集め、2026年4月以降のサービス化を目指す。具体的なコスト等も、2026年4月以降に具体化していくとした。
「今回の説明会のキーメッセージは、『“つまらない仕事”はもうやらない』。人間は創造性に従事し、つまらない仕事はAIにやってもらう。これを訴えていきたい」(梅津本部長)。





