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データセンター向けIT機器の世界市場、AIサーバーの需要拡大などを受け2031年度には188兆円規模に~富士キメラ総研調査

 株式会社富士キメラ総研は9日、生成AIの普及により需要が急増するAIサーバーなど、データセンター向けのIT機器や冷却関連などについての調査結果を公表した。

 調査では、データセンター向けのIT機器5品目、冷却関連8品目、記録媒体3品目、通信デバイス/ケーブル5品目、半導体9品目、材料/その他デバイス6品目、計36品目の市場について、現状と予測を行っている。また、クラウドベンダー5社の動向についても整理している。

 データセンター向けIT機器の世界市場は、2025年度は70兆円、2031年度には188兆円に達すると予測。生成AIの普及により、AmazonやApple、GoogleなどのクラウドベンダーでAIサーバー需要が急増していることから、市場は拡大していると分析している。

データセンター向けIT機器の世界市場

 AIサーバーの需要は増加が続き、AIサーバーの要となるAIアクセラレーターチップや、HBMを含むDRAMなどの半導体は今後も大きく伸長すると予測している。ただし、生成AIビジネスの収益性の低さや、データ元となる既存インターネットコンテンツの枯渇などにより、2027年以降は学習用AIサーバーへのハイペースな投資が一段落し、市場の伸びの鈍化が予想されるとしている。

 また、サーバーやデータセンター向けスイッチ、サーバーラック用温湿度センサーが大きく伸長しており、特に、学習用AIサーバーの需要が急増している。2026年頃までは、学習用AIサーバーが市場拡大の中心となり、2027年以降には学習用AIサーバーの投資は一段落するものの、推論用AIサーバーへの投資が伸びると予想され、市場拡大を続けると予測している。

 記録媒体では、SSDがAIサーバー向け、HDDが汎用サーバー向けに使用されることが多い。2025年の市場は、AIサーバーの普及に伴うSSDの需要増加によって大きく拡大している。2026年以降は、AIサーバーや汎用サーバーにおける記録容量増加と単価の上昇が予想されることから、引き続き市場は拡大するとしている。

 半導体では、AIサーバー市場の拡大に伴って堅調な伸びが続いており、AIアクセラレーターチップの高性能化により、スイッチICの高速化やCo-Packaged Opticsの採用、HBMの大容量化、パワー半導体ではSiC採用が進んでおり、今後もAIサーバーの高速化を目的とした高機能製品の需要増加により、単価が上昇することなどから市場の拡大を予想している。

 材料/その他デバイスでは、汎用サーバーに比べて採用枚数が多いAIアクセラレーターボード向けを中心に、サーバー用高多層基板の伸びが市場拡大をけん引していると分析。サーバー用高多層基板の層数増加や低誘電材料採用による単価上昇や、低誘電CCLの上位グレードの採用増加などによって、市場拡大が予想されるとしている。

 データセンター向け冷却関連の世界市場は、2025年は1兆7270億円、2031年には4兆468億円規模に達すると予測。2025年は、液冷方式や液浸方式向けの冷却液、コールドプレート、CDU、クーラントなどが大きく伸びている。今後は、AIサーバーの普及に伴って、特に冷却液の急伸が予想され、また、低GWP(地球温暖化係数)のPFAS(有機フッ素化合物)開発が進むことで、二相液浸方式向けクーラントが大きく伸びると予想している。

 データセンター向け通信デバイス/ケーブルの世界市場は、2025年は3兆3845億円、2031年には7兆8668億円に達すると予測。ライン側光トランシーバーがデータセンター向けの投資増加を背景に好調で、2025年は長距離向け製品が市場をけん引しており、光コネクターや光ファイバーも同様の背景で伸びているという。今後は、市場規模の大きいクライアント側光トランシーバーや、ライン側光トランシーバー、AOC(アクティブ光ケーブル)が大きく伸びるとみられ、市場拡大への貢献が予想されるとしている。

 AIサーバーに使用されるAI向けICを対象とする、AIアクセラレーターチップの世界市場は、2025年は17兆7720億円、2031年は46兆6150億円に達すると予測。近年のデータセンターでは使用可能な消費電力に制約があることから、今後は数量よりも高性能化を重視し、単価上昇に伴って市場は拡大すると予測している。また、中国では電力供給が潤沢であるものの、自国で生産可能な半導体の性能に限界があるため、性能効率の低いチップを複数採用することでシステム全体の高性能化を目指す傾向が強まると予想している。