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富士フイルムビジネスイノベーション、設計・製造データを3Dモデル上で統合・一元管理するクラウドサービス「3DWorks」を提供

 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は29日、自動車や家電、産業機械など、幅広い分野の製造業の開発と生産の現場に分散するデータを3Dモデル上で統合・一元管理するクラウドサービス「3DWorks」を提供開始した。

 3DWorksは、量産開始前の量産試作工程において、開発部門と生産部門が製品仕様や製造条件の調整(すり合わせ)に必要な情報を、3Dモデル上に統合・一元管理できるクラウドサービス。これにより、部門間の効率的な情報共有と迅速な合意形成を可能にし、製品の開発期間短縮を実現する。

 量産試作工程では、金型を用いて試作部品を成形し、その後、寸法や品質を測定して合格基準を満たしているかを確認する。不合格の場合は、寸法や品質が基準に達するまで金型を修正する「金型トライ」のサイクルを繰り返す。

 この過程では、開発部門と生産部門が製品仕様や製造条件などをすり合わせながら、量産に向けた調整を進める。しかし、現場では紙の図面や検査表を用いて、熟練技術者の経験や知見に頼ってすり合わせが進められることが多く、金型トライ回数が減らない、開発部門と生産部門間での合意形成や情報共有が複雑化する、過去の不具合や対応策が組織内で十分に共有されないために金型トライの精度向上に生かすことが難しく、類似した不具合が再発するといった課題が生じているという。

 3DWorksは、3Dデータを基盤にした情報統合およびプロセス管理を通じて、こうした課題の解決を図る。

「3DWorks」のサービス概要と特長

 PMI(製品製造情報)が付与された3Dモデルを取り込むことで、生産現場向けの2D図面や測定指示付きの検査表を自動で生成できる。また、検査表に入力した検査結果や不具合対応履歴を3DWorks上に登録できるため、設計情報から測定結果、不具合対応までを一つのプラットフォーム上で一元管理し、効率的な情報共有とプロセス管理を実現する。

 試作部品の出来栄えは、測定データに基づき3Dモデル上で視覚的に確認できる。具体的には、設計値と測定値のズレを矢印と色で直感的に可視化できるほか、金型トライ前後での品質の良化・悪化も表示でき、改善点を明確に把握できる。これにより、部門間で改善点の認識を統一でき、適切な修正案の検討と合意形成を迅速に進められる。

「3DWorks」の画面イメージ。設計値と測定値のズレを矢印と色で直感的に可視化

 不具合原因や対策内容、判断結果の履歴を蓄積できるため、過去の修正履歴を迅速に確認できる。蓄積されたデータは、不具合の再発防止策の検討に加えて、類似部品の試作や不具合対応にも活用できるため、開発効率の向上や品質改善に貢献する。さらに、従来は属人化していた技術的な知見を組織全体で共有できるようにし、ノウハウの有効活用と継承を支援する。

 富士フイルムビジネスイノベーションでは、3DWorksを自社の複合機・プリンターの開発で実証を重ねた結果、プロダクションプリンター開発の一例では、金型トライ回数を40%削減し、量産開始までの開発期間を4カ月短縮する効果が得られたという。