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日立産業制御ソリューションズ、熟練者の暗黙知を含む“OTナレッジ”を体系化
生成AI基盤に組み込み設計業務プロセスで活用へ
2025年6月25日 10:00
株式会社日立産業制御ソリューションズは24日、OT分野の熟練者が保有する暗黙知を抽出し、既存の形式知(技術資料や一般知識)と組み合わせることで、OTナレッジとして体系化したと発表した。同社では、体系化したナレッジを設計業務プロセスに組み込み、生産性向上と人材育成の加速を図るという。
日立産業制御ソリューションズでは、昨今の日本企業では豊富な経験を持つ熟練者が高齢化により第一線から退くとともに、労働人口減少を背景に、熟練者が持つナレッジを継承していく後進の育成が、現場の課題になっている点を指摘。こうした背景を受けて、2022年からOTナレッジの体系化に取り組んできたという。
この体系化にあたっては、1業務分野あたり約半年の時間をかけて、熟練者集団がディスカッション形式で取り組んだとのことで、ディスカッションでは、ファシリテータが中心となり、熟練者が当たり前だと思っているOTナレッジと設計に関する思考プロセス(設計手順)を、暗黙知として表出化させた。
具体的には、設計品質を上げていく上でも重要な、熟練者の経験に基づく思考プロセスを表出化させ、プレイブックとしてまとめるとともに、過去のトラブル事例からの反映事項やチェックリスト項目の肝など、設計ドキュメント作成上で過去の経験から考慮すべきことを網羅したナレッジも表出化させ、こちらは標準ドキュメントなどにまとめている。
そして最終的に、表出化させた暗黙知を既存の形式知とあわせて、設計フェーズごとにOTナレッジとして体系化した。体系化したOTナレッジは、Amazon Web Services(AWS)クラウド上に構築した日立産業制御ソリューションズの生成AIプラットフォーム「GAP-AI」に蓄積することで、分野特有の略語などを十分理解していなくても、制御系設計ナレッジの検索や利用が可能になったのこと。
また今後は、「GAP-AI」を活用することでOTシステムの複数プロセスの並行設計を行うアジャイル的な設計を実現し、迅速かつ柔軟な対応が求められる現代のものづくりに最適なアプローチを目指すとした。体系化は、上下水など7つの業務分野で実現しており、今後さらに拡大する予定である。
なお、現在「GAP-AI」が扱えるデータはテキストベースに限定されているが、マルチモーダルAI技術の導入にも取り組んでおり、2024年度からは、日立のGenerative AIセンターとともに、画像検索技術の開発と図面検索への利活用に向けた取り組みを開始しているとのこと。
2025年度中には、日立産業制御ソリューションズが担う上下水分野で業務プロセスに組み込み(インプロセス化)、順次、業務分野を拡大する考えで、こうしてOTナレッジの活用を拡大することにより、2027年度には、同社が担うOT分野の制御系設計業務の生産効率を、30%改善(2024年度比)することを目指すとしている。