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NTTデータ、スマートグラスを用いたIT基盤保守作業の遠隔支援システムを構築

 株式会社NTTデータは31日、スマートグラスを用いた現場作業の支援システム(遠隔作業支援システム)を開発し、NTTデータ社内のIT基盤での保守運用業務における利用を開始した。

 ITシステムの保守運用業務では、コスト削減が求められる一方、オペレーションミスによるシステム障害を防止することが強く求められている。一方、保守運用作業時は作業者と作業の確認者が複数人で現場へ出向く必要があるため、人件費を含む作業コストの削減が困難であることに加え、有識者不足により作業結果確認の品質にばらつきが生じてしまい、一部の有識者に負担が集中しがちであることも課題となっている。

 また、作業者はデータセンターなどにおける機器設置や配線作業など、両手のふさがる作業を実施中に、作業指示書・マニュアルの閲覧や作業結果のメモなどを行う必要が出た場合、いったん作業を中断して手を離したうえで行う必要があり、作業効率や安全性、正確性の面で課題がある。

 NTTデータでは、こうした課題を解決するため、ITシステムの保守運用作業の効率化と精度向上を目的として、遠隔地から現場作業の支援・確認を行うことができる遠隔作業支援システムを開発。運用保守作業者が着用するスマートグラスは、カメラやマイク、眼前のディスプレイを搭載し、画像や映像、音声を記録するとともに、作業指示書やマニュアルなど作業に必要な情報を表示でき、内容を確認しながら作業を行うことができる。

遠隔作業支援システムの概要

 画像や映像、音声は遠隔地にいる確認者とリアルタイムで共有でき、作業で生じた不明点をその場で質問することにより、迅速な解決が可能。確認者はPCのウェブブラウザーを用いて、作業の進捗状況や作業者の記録した作業結果に関する画像や映像、音声を即座に確認でき、遠隔地から現場の作業進捗状況や作業結果を確認できる。現場からリアルタイムで共有された映像に対して、コメントや目印を付与することもでき、的確な作業指示を行える。

 遠隔作業支援システムは、Androidを搭載した機器であればどのデバイスでも利用することが可能。ハンズフリー操作が必要な現場ではスマートグラスを用い、マニュアルを大きな画面で閲覧することが必要な現場ではスマートフォンやタブレット端末を用いるなど、現場や利用者に応じてデバイスを使い分けられる。

 確認者用の画面では、同時に複数名の作業者を支援することができ、確認者の人件費削減が可能となる。また、作業者が複数名の確認者に支援を依頼することもできるため、異なる知識を持つ複数人の有識者から同時に作業の支援を受けることもできる。

 NTTデータでは、社内IT基盤が運用されている本社システム管理拠点で、2015年8月上旬から中旬の間、ハードウェア交換作業において、システムを実験的に導入。作業者の目線映像の共有により、確認者が作業の実施状況を継続的に確認することができ、「マーカー付与機能を用いた作業指示により、不明点を即座に解消することができた」という作業者の声や、「作業者の目線映像を確認しながら作業状況を確認することで、作業ミスを遠隔から防止することができた」という確認者の声が寄せられた。さらに、有識者を常に作業現場へ派遣する必要がなくなり、作業コスト削減効果も期待できることから、正式導入を決定した。

 今後は、NTTデータの国内の保守運用業務における利用に加え、中国やインドなどのオフショア開発拠点、海外グループ会社向けシステムのIT基盤の開発・保守運用作業(インド、北米、欧州、中国)においてもシステムの活用を検討。さらに顧客にも提供していき、NTTデータと同様のIT基盤保守運用業務や、ビル・各種装置・インフラなどの運用・保守・点検作業など、ハンズフリー操作や遠隔地からの作業支援のニーズが高い企業に対して実証実験の提案を9月より実施し、実証実験の結果を反映した上で、2015年度内の提供開始を予定している。

 NTTデータでは、遠隔作業支援システムを含め、ウェアラブルデバイスを適用したシステムにより、2018年までに累計で50億円のビジネス創出を目指す。また、9月7日~8日に開催される「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」に出展し、遠隔作業支援システムおよびウェアラブルデバイスを用いた各種ソリューションのデモンストレーションを実施する。

三柳 英樹