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日本IBM、OpenDaylightの成果を製品化した「SDN VE OpenFlow Edition」

システム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 事業部長 理事の小林泰子氏。同社のSDEへの取り組みの概要についての説明を行った

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は5日、SDN(Software-Defined Networking)を実現する「IBM Software Defined Network for Virtual Environment」(SDN VE)の新製品として、「IBM SDN VE OpenFlow Edition」および「同KVM Edition」を発表した。また、昨年6月に発表済みの「同VMware Edition」にも機能強化が行われた。

 IBM SDN VE OpenFlow Editionは、オープンソースのOpenFlowコントローラ開発プロジェクトとして業界各社が参集して推進されている“Open Daylightプロジェクト”の開発成果をベースに、IBMが商用製品化したもの。Open Daylightプロジェクトでは、最初の成果物となる“Hydrogenリリース”を米国時間の2月4日付けでリリースしており、ほぼ同タイミングでの発表となった。現時点ではOpenFlow 1.0準拠のコントローラとして製品化されているが、年内にもリリースアップが計画されており、OpenFlow 1.3対応などが行われる予定だという。

 IBM SDN VE KVM Editionは、オーバーレイ型アーキテクチャに基づくSDNを実現するためのソフトウェア製品で、既に発売済みの同VMware Editionの仮想化ソフトウェアサポートをKVMに変更した形となる。同様に、今後MicrosoftのHyper-Vや、IBM AIXなどで利用されている仮想化プラットフォームなどを順次サポートしていく計画だという。

 この分野でのIBMの取り組みは、SDE(Software Defined Environment)というコンセプトに基づくものだ。SDEでは、ワークロードの抽象化、コンピューティングリソースの抽象化を踏まえてワークロードとリソースの動的なマッピングや継続的な最適化を実現していくことを目指す。SDEの枠組みの中では、SDNやサーバー仮想化やストレージ仮想化と並び、リソースの抽象化を実現するための一要素という位置づけとなる。

同社のSDEコンセプトの概要。一般的な仮想化の取り組みがまずはリソースの抽象化の部分に集中しているのに対し、同社ではワークロードを抽象化し、ワークロードの特性に合わせた最適なコンピューティングリソースをマッピングすることでワークロードを効率的に処理する、という考え方をしている。このマッピングには高度なノウハウが必要になり、かつ迅速に行う必要があることから人手を介在させず自動化するために“Software-Defined xxx”が必要になる、というロジックだ
システム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 ビジネス開発 部長の瀧谷貴行氏。今回発表製品の詳細説明を行った

 さらに、IBM SDN VEのキーコンセプトとしては、“Unified”“Open”“Ecosystem”の3つが掲げられている。エコシステム(Ecosystem)はパートナー企業とともに多彩なネットワークソリューションとの連携を図ること、オープン(Open)は「オープンスタンダードの推進・活用」とされ、OpenDaylightプロジェクトへの積極的な参加と成果物の製品化がまさにその表れだ。

 残るユニファイド(Unified)は「さまざまなネットワーク仮想化技術の単一管理・制御」と説明され、大きくはOpenFlowによるホップバイホップ型アーキテクチャとオーバーレイ型アーキテクチャの混在や、オーバーレイ型ではさらにマルチハイパーバイザ環境に対応し、並立するさまざまなSDNソリューションを分断することなく単一点から集中的に管理できるようにすることが重視されている。

 これを踏まえ、今回のリリースで新たにマネジメントプレーンに対応するソフトウェアとして“Unifiedコントローラ”が発表され、各製品に同梱される形で提供される。UnifiedコントローラはまたRESTful APIやNeutron APIをサポートすることでSDN VE環境に対する統合的なノースバウンドAPI(Unified Northbound API)を提供することで、OpenStackなどの各種オーケストレーションソフトウェアからSDN VEに対する制御を実現するためのインターフェイスとしても機能する。

 ライセンスは管理対象となるスイッチ(物理/仮想)単位での課金を基本とするが、既に発売中のVMware Editionに関しては従来のCPUソケットライセンスがそのまま継続される。価格は、OpenFlow Editionが16万6,400円、KVM Editionが9万6,900円(1スイッチ・ライセンス+1年間サブスクリプションを含む標準価格)、VMware Editionが4万8,400円(1CPUソケット・ライセンス+1年間サブスクリプションを含む標準価格)となる。

今回発表製品の概要。OpenFlow EditionとKVM Editionが新製品、VMware Editionは昨年6月に発表済み製品のアップデートリリース
製品コンポーネントの役割。OpenFlowによるホッブバイホップ型とトンネリングによるオーバーレイ型の2つの主要SDNアーキテクチャに対応してコントロール・プレーンに位置づけられるコントローラ・ソフトウェアが用意され、さらにそれを統合管理するためのマネジメント・プレーンとしてUnifiedコントローラが提供される
Unifiedコントローラの機能概要と外部のオーケストレーションソフトウェアとの連携
各製品パッケージのコンポーネント構成と価格。Unifiedコントローラがすべてに共通で含まれるが、実質的に無償提供される形でライセンス料は発生しない。基本はネットワークの規模に応じたライセンス体系となっている

渡邉 利和