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NEC、共同輸配送や通関デジタル化などロジスティクス領域での新規事業創出の取り組みを説明
2025年3月26日 06:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は25日、ロジスティクス領域における新規事業創出の取り組みについて説明。企業間のデータを活用して、輸配送シェアリングを実現するNEC共同輸配送プラットフォームの提供を開始。同プラットフォームを活用したNEXT Logistics Japan(NLJ)との協業などにより、成果があがりつつあることを示した。また、生成AIを活用した通関デジタル化ソリューション「AI 税番判定サポート」を開発していることも紹介した。
NEC エンタープライズビジネスユニットスマートILM統括部 ディレクターの大久保聡氏は、「これまではNECでは、個々のお客さまに対して、個別の倉庫管理や輸配送システムのソリューションを提供していた。だが、物流業界は、製造、小売など、さまざまな業種とも関連しており、DXによって最適化をすることで、大きな価値を生み出すことができる分野でもあり、共通的な課題を解決していくことが重要である」とし、「NECは、業種や業界横断での課題解決に貢献するため、ロジスティクス領域において、共通化したプラットフォームサービスを提供することを目指す。また、社会や業界で共通となる解決すべき課題をNEC自ら設定し、より多くのお客さまの課題を解決するビジネスモデルへの変革も推進していくことになる」と述べた。
NECでは、ロジスティクス領域における新規事業開発のブランドメッセージとして、「ロジスティクスの未来に、つながる革新を。~Beyond with NEC Logistics Platform」を掲げており、ロジスティクスに関わるステークホルダーとの共創とともに、デジタルの力を活用して、共通課題を解決する考えを示している。
NECの大久保ディレクターは、「空間や企業の枠を超えて、物流格差がなく、誰もが公平に、モノやサービスを享受できる社会の実現を目指す」とし、同社が打ち出す「社会価値創造型企業」の取り組みを、ロジスティクス領域でも実現する姿勢を強調した。
NECでは、NEC共同輸配送プラットフォームを2024年9月から提供を開始している。
複数企業の荷物を同一トラックで運搬する共同輸配送を支援するもので、共同輸配送を行う企業の探索から、時間やルートのプラン策定、荷量の調整などのオペレーション支援に至るまで、共同輸配送に関わる取り組みを包括的に支援。輸配送網の維持および効率化と、トラック台数の削減によるCO2削減につなげることができるという。
NEC エンタープライズビジネスユニットスマートILM統括部 主任の梅田陽介氏は、「2024年は終わっても、物流2024年問題は続いており、ドライバー不足は、5年後、10年後には、ますます深刻な問題になる。新物効法の施行や、脱炭素への取り組み要請などもあり、これまでと同じ考えでは物流網の維持が困難になる」と前置きし、「解決策のひとつが、共同輸配送による輸送リソースの有効活用となる。だが、企業の探索や条件調整など、共同輸配送の実現を妨げる課題が存在している。NECは各社が持つデータをつなぎ、デジタルプラットフォームを活用することで、共同輸配送の可能性を高め、日常的に取り組むことができる環境を整えたい」と述べた。
NEC共同輸配送プラットフォームは、適切な共同輸配送の相手を自動抽出する「グルーピング」、共同輸配送プランの条件調整や最適化を行う「プランニング」、会社間の荷量、リソース情報を共有する「オペレーション」で構成する。
「条件に合致する企業の探索が難しいという課題や、各社それぞれに存在する条件調整が困難であったり、オペレーションが煩雑であったりといった課題もデジタルプラットフォームを活用することで解決できる」という。
あらかじめ物流条件に合致したグループを形成し、条件を整合することで、直前の調整を最低限にできる「ルートのマッチング」、スペース単位のシェアから開始ができる「荷量と輸配送キャパシティのマッチング」の2段階のマッチングを用意。共同輸配送を容易に開始できるようにしているのも特徴だ。
さらに、探索、調整、実行までの全体の流れをデジタル化。人手による検討では、共同輸配送の広がりには限界があるという課題を解決し、対象ルートや候補を決定後に、調整や実行をスムーズに行い、共同輸配送の実現におけるボトルネックを解消することができるという。
現時点では、約10社がNEC共同輸配送プラットフォームを活用。2025年度には参加企業を30社にまで拡大し、2026年度には約70社にまで増やす計画だ。また、現在は、首都圏、東海、関西の幹線輸送を中心としているが、今後は、北海道や東北、北関東、甲信越、中国、九州方面にも共同輸配送の範囲を拡大。最終的には域内の共同輸配送にも取り組む考えだ。モーダルシフトへの対応や、エリア配送への対応など、提供サービスの拡張も図る。
具体的な活用事例も紹介した。横河電機と三井倉庫サプライチェーンソリューションでは、東京エリアから東海エリアへの配送において、この仕組みを活用。車両台数を半減したほか、既存便の積載量の10%向上を実現したという。
そのほかにも、電機精密品、家電品、産業機械、日用雑貨など、さまざまな業界の企業が参加しているほか、業種や業界を超えて共同輸配送の理解や実践を促進するためのロジスティクスシェアリングコミュニティ活動を開始しており、「NEC単独の活動ではなく、パートナー各社との連携を進め、仲間づくりにも取り組んでいく。新たなつながり方で、運ぶ力を創り出していきたい」と意欲をみせた。
NLJの物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS」との連携
NECでは、共同輸配送プラットフォームの活用において、NEXT Logistics Japan(NLJ)の物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS(ネロス)」と連携している。
NLJは、日野自動車が2018年6月に設立した新たな物流形態を提案する企業で、ドライバー1人で2台分の輸送を可能にするダブル連結トラックによる幹線輸送事業、自動運転トラックを用いた走行実証をはじめ、国との連携などによるイノベーション事業、そして、NeLOSS事業に取り組んでいる。
NeLOSSは、2024年10月に同Ver1.0を発表されており、量子インスパイアード技術を活用した配車と積み付けの最適化を実現。今後のリリースを予定しているVer1.3では、最適なルート提案、Ver1.6ではダイヤグラムの生成、Ver2.0では、交通渋滞などを反映したリアルタイムでの配送計画の設計が可能になるという。
NLJ NeLOSS事業本部長の柳拓也氏は、「NeLOSS事業は1社だけの取り組みでは広がらない。NECが持つ技術力とともに、同じ志を持ったベンダーとの連携を行う点に意味がある」と述べた。
NEC共同輸配送プラットフォームとNeLOSSの連携により、共同輸配送における対象ルートや候補の決定から、荷積みの積付、割付のシームレスなサービスの提供が可能になり、テスト実証では積載率が55%から85%に高まり、1便分の車両の削減ができたという。
NEC モビリティソリューション統括部 主任の中緒祐紀氏は、「共同輸配送は、誰と、いつ、どのような条件で、どの車に、どの荷物を積載するともに、日々の変更にも柔軟に対応し、確実に運ぶことが求められている。NLJが持つNeLOSSおよび幹線輸送事業を組み合わせることで、共同輸配送を実現できる。今後、実輸送を通じて検証をしていく。共同輸配送をあたり前とする仕組みづくりや市場づくりに取り組む」と述べた。
今後は、荷主や運送事業者への共同輸配送の定着伴走支援、共同輸配送の市場形成に向けた活動を進める考えも示した。
両社では、「フィジカルインターネット」の実現に向けて、自動運転トラックを利用した新たな輸配送や、製造から販売までの物流プロセス全体における物流データを高度につなぐデジタル化、標準化とともに、社会実装をともに推進する枠組みの拡大に取り組むとしている。
- 初出時、中緒氏の部署を誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。
通関デジタル化ソリューション「AI 税番判定サポート」
一方、NECが開発中の通関デジタル化ソリューション「AI 税番判定サポート」は、国際貿易における輸出入品の分類を統一するために使用される税番(HSコード)を、知りたいアイテム名や用途を入力するだけで、税番の候補を提示することができるものだ。約1万種類ある税番から、対象となる番号を特定するには、膨大な知識と経験が必要だが、同ソリューションでは、担当者が生成AIからの質問に回答するだけで、税番を特定することができる。
画面の項目欄に調べたいアイテム名や材質などを入力すると、税番の候補とともに、根拠となる情報を表示する。判定する際の情報が不足している場合には、不足している内容を掲示し、情報入力を促す。
AI 税番判定サポートを活用することで、荷主からの税番判定依頼に対して最小工数で回答したり、新人や経験が浅い人材への教育ツールとして活用したり、判断に迷ったり、解釈が分かれる場合での判断を支援するほか、社内コミュニケーションロスの削減などの課題も解決できる。これにより、膨大なノウハウやナレッジが求められる通関士が不足しているという課題の解決や、通関士のノウハウやナレッジの伝承にも貢献できるとしている。
NEC エンタープライズビジネスユニットスマートILM統括部 主任の須賀宏平氏は、「通関で処理する件数は増加しているが、国家資格である通関士が減少している。デジタル化を図らなくてはならない分野である。通関業務においては、通関書類のデジタル化や、関税計算書システムの導入などを図ってきたが、その中間にある税番確認が支援できていなかった。AI税番判定サポートの提供により、通関業務をトータルで支援できるようになる」と語った。