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富士通、量子コンピューター・クラウドサービス向けの基本ソフト群をオープンソースで公開
2025年3月25日 11:00
富士通株式会社は24日、大阪大学大学院基礎工学研究科の藤井啓祐教授、大阪大学大学院情報科学研究科の猿渡俊介准教授などが主導する研究グループに参画し、株式会社セック、TIS株式会社とともに、量子コンピューターの基本ソフトウェア「Open Quantum Toolchain for Operators and Users」を開発し、GitHubでオープンソースとして公開したと発表した。
量子コンピューターをシステム化するには、ジョブ管理やスケジューリング、量子プログラムの変換・最適化、キャリブレーションなどのさまざまな機能が必要で、これらの機能を実現する基本ソフトウェアは、量子コンピューターにおいて重要な役割を果たすが、現状では量子コンピューターの基本ソフトウェアに関する公開情報は限られており、開発規模の拡大や新規参入が困難な状況にある。
この課題を解決するため4者は、富士通スモールリサーチラボにおける富士通と大阪大学の量子ソフトウェアに関する共同研究を中核として、大阪大学とセックによる量子計算の高速化技術の共同研究の成果や、大阪大学とTISによる量子プログラムの変換・最適化技術の共同研究の成果を含めたソフトウェア群を、Open Quantum Toolchain for Operators and Usersとして公開した。
量子コンピューター・クラウドサービスで利用するソフトウェアは、ユーザーのPCで動作する量子プログラミング・ライブラリなどを提供し、ユーザーが量子プログラムを作成・入力できるインターフェイスを実現するフロントエンド層、パブリッククラウド上でユーザーやジョブの情報を管理するクラウド層、量子コンピューターやその制御を行うサーバー群からなるバックエンド層の3つの層と、運用に分けられる。
フロントエンド層は、ユーザーが作成した量子プログラムを汎用的な形式（OpenQASM 3）に変換し、クラウド層との通信を行うQURI Parts連携機能で構成される。ユーザーは、QunaSysが開発したソフトウェア「QURI Parts」を使い、Pythonベースで簡便にプログラミングできる。
クラウド層は、システム全体のデータ管理機能を担当し、ユーザー管理やジョブ管理を行うクラウド機能と、ユーザーが作成した量子プログラムの実行状況や実行結果、さらには量子チップの精度などの情報を、ウェブ画面を通じて提供するフロントエンド機能で構成される。
バックエンド層は、量子計算の実行基盤として、クラウド層やTranqu Server、Device Gatewayと連携して量子プログラムを実行するEngine機能、複数の量子プログラミング・ライブラリおよび量子回路の変換・最適化機能（トランスパイラ）に対応した、ワンストップのフレームワークであるTranqu、Tranquを利用したトランスパイラ・サービスを提供する機能で、Engine機能が利用するTranqu Server、Engine機能とPulse Sequencer（マイクロ波信号の波形を生成するソフトウェア）をつなぐインターフェイスとして機能するDevice Gatewayで構成される。
また、運用に向けては、運用に不可欠なキャリブレーションをワークフローとして実行し、実行結果の履歴管理と可視化を行うダッシュボードのQDashと、サービスの運用担当者向けにユーザー管理などの機能をWeb画面で提供するAdmin機能を提供する。
これにより、量子コンピューターの公開を目指す大学や研究機関、企業は、ハードウェア（量子チップや制御装置など）やPulse Sequencerを準備すれば、Open Quantum Toolchain for Operators and Usersをベースにクラウドサービスとしてユーザーに提供できる環境を構築できると説明。一方、オープンソース化を行うことにより、世界のユーザーが同ソフトウェアを評価し、機能強化や改善を共同で実施していくコミュニティ形成が促進され、これにより、各種の量子ソフトウェア、システムの標準化と革新的な量子アプリケーション創出が可能になるとしている。
4者は今後、ソフトウェアの機能拡張やコミュニティ形成を通じて、量子コンピューターの発展に寄与していくとしている。