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日立システムズ、ドローンとAI解析で森林の状態を可視化する「森林調査DXサービス」を提供

 株式会社日立システムズは17日、単木単位で森林の情報を可視化する「森林調査DXサービス」を提供開始すると発表した。

 森林調査DXサービスは、ドローンを活用して樹種やサイズ(樹高、胸高直径、立木幹材積)、CO2固定量などを可視化するサービス。サービスではドローンの他、AI解析ソフトウェアを駆使することで、人が実際に森林に入るよりも、短期間で安全かつ安価に調査することを可能にし、全国の地方公共団体や森林組合などの林業事業体が抱える人手不足などの課題解決に貢献する。また、カーボンニュートラルの実現に向け、長期的な森林管理の計画に寄与できるとともに、将来的に創出できるカーボンクレジット量の推定にも活用できる。

「森林調査DXサービス」の流れ

 2019年に施行された「森林経営管理法」に基づく森林経営管理制度やカーボンニュートラルの推進などに伴い、適切に整備されていない森林への間伐や保全活動が活発化している。日本は、2050年カーボンニュートラルの実現を公約に掲げており、その実現のためには、「カーボンクレジット」の活用が不可欠で、昨今では森林由来のカーボンクレジットが着目されているが、その創出のためには長期的な森林管理を計画する必要がある。

 森林調査はその準備作業として多くの場所で必要とされるが、人が立ち入る調査には大きな労力、時間、コストがかかり、傾斜地では転倒や滑落の危険性もある。さらに、日本の林業事業体は高齢化と人手不足という深刻な問題を抱えており、素早く、安全かつ安価に森林調査を行う方法が強く求められている。

 日立システムズではサービスの提供に先立ち、宮城県女川町や北海道芦別市などで実証実験を行った。宮城県女川町では人が立ち入る調査で19人日ほど森林調査に時間がかかる場所でも、ドローンとAI解析ソフトウェアを活用すると、わずか4人日程度で調査可能で、業務工数の約8割削減が確認された。また北海道芦別市では、本州の主要な人工林であるスギやヒノキ以外の樹種においても、9割以上の精度で樹種識別できることが確認された。

 サービスによって取得できる森林情報は、長期的な森林管理の計画に寄与するとともに、将来的に創出できるカーボンクレジット量の推定にも活用できることが分かっているという。

 サービスでは、これまで森林組合との協業により林業現場を熟知している日立システムズが持つ森林調査のドローン活用やデータ加工、解析に関する専門知識・ノウハウを活用することで、調査時間の短縮やそれに伴う人的コストの削減、森林情報可視化による森林所有者への施業提案の容易化などが期待できる。

 森林内に入らずに安全に高い精度で植生状態を解析でき、単木単位で樹種やサイズ(樹高、胸高直径、立木幹材積)、CO2固定量を推定できる。現地情報を一部入力することで、主要な人工林ではない樹種にも対応可能なほか、林地の材積生産力を示す「地位」の特定作業にも活用できる。

納品物イメージ

 また、森林の解析作業だけではなく、顧客の要望に合わせてドローン測量も含めたワンストップでのサービス提供が可能。写真測量だけではなく、LiDARを利用したドローンレーザー測量にも対応しており、森林内の作業道や微地形なども捉えた高解像度な地形図の提供や、J-クレジット制度におけるモニタリングに活用できる解析ができる。

高解像度な地形図のイメージ

 AI解析ソフトウェアを提供する、DeepForest Technologies株式会社は、3月12日に日立システムズと最上位の特約店として提携契約を結んだ。DeepForest Technologiesの高度な技術と、顧客の現場に寄り添ってきた日立システムズの豊富な経験や実績を融合させ、全国の地方公共団体や森林組合などの林業事業体の課題解決に取り組んでいくとしている。

 日立システムズは、全国約300拠点のネットワークを活用し、地方公共団体や森林組合などの林業事業体を中心に、日本全国の地域森林の保護に取り組む企業や団体へのサービス提供を行っていく。また、サービスの技術を活用し、カーボンクレジット創出から取引までの支援や海外展開を目指し、サービス内容の拡充を行っていく予定。