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アリババクラウド、東南アジアでの実績を生かし国内でも利用者・パートナーの拡大を目指す

 アリババクラウドは5日、AIパートナーシッププログラムを開始するなど、日本市場での展開を強化することを明らかにした。AIに関しては、独自の大規模言語モデル(LLM)「Qwen」を提供するなど注力領域のひとつとなっており、AIをきっかけとして、サービスを提供するパートナー企業やユーザーを日本でも増やしていくことを目指す。

 2024年にアリババクラウド・ジャパンのカントリーマネジャーに就任した与謝野正宇氏は、「日本でのクラウドサービス市場の競争が激しいことは承知しているが、東南アジアでの高いシェアや実績を鍵として、利用企業やパートナーを増やしていきたい」と話す。同社では、日本向けのローカライズされたAIソリューションを継続的に提供し、日本のパートナーとの連携によってユーザー獲得を目指していく考えだ。

アリババクラウド・ジャパン カントリーマネジャー 与謝野正宇氏

 与謝野カントリーマネジャーは、まず「当社の強みは経済的発展が著しい東南アジア地域で戦略的な投資を多数行っていること。アリババグループとして多数のサービスを提供し、その経験や蓄積したノウハウをアリババクラウドとして提供するサービスに生かしている。最近ではAIと組み合わせたサービスが増加していることから、今回はAIと連携したサービスを中心に、当社の現在のサービスを紹介していきたい」(与謝野カントリーマネジャー)として、提供するサービスを紹介した。

 また実情として、「アリババクラウドは、ガートナー社の調査でIaaS市場において、アジア太平洋地域で22.2%とトップシェアを獲得している。ガートナー社のソリューションスコアカードにおいても、計算能力、ストレージ、ネットワーク、セキュリティとクラウドサービスの主要な能力において、アリババクラウドがもっとも高い評価を獲得している」(与謝野カントリーマネジャー)こともアピールする。

アジア太平洋地域でもっとも利用されているクラウドサービスだという

 その上で、同社が最近注力しているのがAIを活用したソリューションを紹介した。「アリババクラウド自身のAI活用は、かなり前から行っている。現在ではLLMなどの大規模モデル構築に最適化された高性能GPUクラスタを低コストで提供するIaaS PAI-Lingjun Intelligent Computing Service、AI開発プラットフォーム『PAI』、Model As a ServiceであるMaaS提供など、包括的なAIソリューションを提供している」(与謝野カントリーマネジャー)。

包括的なAIソリューションを有するアリババクラウド

 PAIでは、データの準備、モデル開発、モデルトレーニング、モデルデプロイを実施するためのさまざまなツールを提供している。具体的には、インテリジェント機能(ブラックボックス)を統合したデータセットアノテーションツールである「TAG」、豊富な機械学習アルゴリズムコンポーネントをカプセル化したAI用ワークフロー設計ツール「Designer ビジュアルモデリング」、Notebook、VSCode、Terminalを含むAI開発者向けのクラウドベースの対話型機械学習開発IDE「DSW(Data Science Workshop)インタラクティブモデリング」などを提供。さらに、DLC(Deep Learning Containers)コンテナトレーニング、PAI-EAS エラスティック推論サービスプラットフォームなども提供しているという。

PAI:AI開発プラットフォーム

 MaaSは、PaaSとSaaSの中間に位置するモデルサービス。インテリジェント・カスタマーサービス、音声アシスタント、フィナンシャルQ&Aなど、インダストリー・ドメインモデルを作成する際に活用する。

MaaS

 アリババクラウドの独自LLMである「Qwen」については、オープンソース版のQwen2.5、クローズドモデルとなるQwen2.5(MoE版)があり、活用事例として、資生堂が中国市場で提供しているAIスキンケア・アシスタントを紹介した。ここでは、Qwenを活用したRAGベースのAIにより、スキンケア知識とブランド情報を統合し、カスタマイズされた対話体験を提供しているという。

Qwen2.5の特徴

 AI/Big Data ソリューションアーキテクトの藤川裕一氏は、「資生堂の活用事例は、アリババクラウドは中国を起源としており、中国市場での強みがあること、RAGベースのいうシステムを構築していただいた際の精度の高さに対して評価していただいた。また、セキュリティ面についても評価してもらったポイントとなっている」とアピールした。

 さらに、「今後3年間で日本でのQwenを利用したサービスが100超えることを目指していきたい」(藤川ソリューションアーキテクト)と、利用者拡大を進めたいと話した。

アリババクラウド・ジャパン AI/Big Data ソリューションアーキテクト 藤川裕一氏

 なおセキュリティ面については、アリババクラウドは本社をシンガポールに置いていることから、「中国政府の干渉がない状態で企業運営を行っている。セキュリティ対応としても、世界中の10以上の機関によって認定され、アジアでもっとも完全な認定を受けているクラウドサービスプロバイダーだと自負している」とし、セキュリティにも配慮しているとアピールした。

世界標準のセキュリティとコンプライアンス

 なお、具体的なパートナー獲得目標数は、「現在策定しているところ」(与謝野カントリーマネジャー)。一方で日本でのユーザー獲得については、「これまでのところ、当社のサービスを導入するユーザーは、業種でいえばIT系とインターネットサービス事業者が多い。同様の事業者をターゲットとしていくことが日本市場での展開策のひとつ。もうひとつは中国および東南アジア地域で多くの実績を持っていることから、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどの先進的なビジネス事例、例えば金融系での導入事例などがあるので、こうした成功例を日本に輸入して展開することができるのではないかと考えている」と説明した。