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NTT、多様な光ファイバーを通信断なく分岐・合流させる実験に成功

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は24日、用途ごと・設置場所ごとに異なるさまざまな種類の光ファイバーにおいて、通信断を生じさせることなく分岐・合流させる施工技術を世界で初めて実証したと発表した。

 この成果により、通信事業者における設備構築コスト削減・工期短縮等が期待できると説明。さらに今後、急速な利用拡大が想定されるIoT機器などの増加に柔軟に対応可能となるなど、利用者の利便性向上も期待されるとしている。

目指す柔軟な光ネットワークと成果のポイント

 光ファイバーは、多様な屈折率分布を有しており、それぞれ伝搬特性(実効屈折率)が異なる。これらの光ファイバーを分岐させる従来技術では、分岐元の光ファイバーと分岐先の光ファイバーとで同じ伝搬特性(実効屈折率)である必要があった。そのため、分岐元の光ファイバーの実効屈折率を現地で把握し、それに適した分岐用光ファイバーを用意する必要があった。

 ところが、実効屈折率の把握を行うためには、分岐元の光ファイバーをサービス停止する必要があるため、現実的には困難な状況だった。こうした背景から、通信中の光ファイバーがどのような実効屈折率を有している場合であっても、分岐を可能とする技術の確立が課題となっていたという。

多様な光ファイバーの例と従来技術の課題

 NTTでは、コア直径を変化させた構造を有する分岐用光ファイバーの作製方法を開発した。実効屈折率は、コア直径により変化するため、同構造の光ファイバーは、多様な実効屈折率を有する光ファイバーとして使うことが可能。これを分岐用光ファイバーとして使用することで、分岐元光ファイバーの実効屈折率がどのような場合であっても、光ファイバーを分岐することが可能となる。

 NTTは、この光ファイバーを作製する技術、およびこれを用いた分岐を、世界で初めて実証した。これにより、分岐可能な光ファイバーの範囲を従来と比べて大幅に拡大し、光アクセスネットワークで一般的に使用されている国際標準規格を満たす、すべての光ファイバーを分岐・合流することが可能となったとしている。

分岐用光ファイバーのコア直径を変化させた構造
実験結果

 NTTでは、今回の成果により、通信中の多種多様な光ファイバーを通信断なく分岐する技術を確立し、同技術を活用することで、どこからでも通信へ影響なく接続できる柔軟な光ネットワークを実現し、通信事業者の設備構築コスト削減や工期短縮による早期のネットワーク利用が可能になることが期待されると説明。今後は、開発した技術の実フィールドにおける活用に向け、耐環境特性の評価や試作装置を用いたフィールド検証を進めていくことで、多様化する顧客のニーズに対して迅速に対応可能な、どこからでも接続できる柔軟な光ネットワークの実現を目指すとしている。