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“仮想環境を維持する難しさ”に対しての解を提供する――、レッドハットが仮想化基盤の戦略を解説
OpenShift Virtualizationへの注目が高まっていると説明
2024年3月29日 06:00
レッドハット株式会社は、Red Hat OpenShiftによる仮想化プラットフォーム戦略についての記者説明会を、3月28日に開催した。
Red HatのコンテナプラットフォームであるOpenShiftでは、コンテナと同様に仮想マシンも統一的に管理する、Red Hat OpenShift Virtualizationの機能を備えている。この機能を使った、アプリケーションが動いている仮想マシンのOpenShiftへの移行の戦略や、米国時間3月19日にリリースされたOpenShift 4.15におけるOpenShift Virtualization関連の機能強化、さらに企業の導入事例が解説された。
記者説明会では、米Red HatからSachin Mullick氏(Senior Manager, Product Management, Virtualization)とPeter Lauterbach氏(Senior Principal Technical Product Manager)が登壇し、説明を行った。
同席したレッドハット株式会社の岡下浩明氏は、OpenShift Virtualizationの最近の状況について、「OpenShift Virtualizationは実装されて4~5年たつが、これまでさほど着目されてこなかった。ここ数カ月、外的要因が主なトリガーとなり、一つの選択肢としてグローバルで着目され始め、導入されるインスタンスの数が急速に増えている」と語った。
OpenShift上でコンテナも仮想マシンも統合した形で運用
Sachin Mullick氏は、Red Hatの仮想化に対する戦略として「お客さまが抱えている、仮想化環境を維持する難しさに対しての解を提供する」と語った。新しいアプリケーションはコンテナ化されるようになったが、いまも70~80%のアプリケーションは仮想マシンで動いており、その維持とサポートが問題になっているという。特に、コストも上がっているのにどう対処するかが問題とされていると、Mullick氏は言う。
それに対するRed Hatの解が、OpenShift Virtualizationだ。OpenShift Virtualizationは、KubernetesをベースとするOpenShiftの上で、コンテナも仮想マシンも統合した形で運用できる。
OpenShift Virtualizationは、CNCFで開発されている「KubeVirt」がベースとなっている。KubeVirtの開発には190の企業が参画しており、企業数は前年比で50%増加しているという。
仮想化ハイパーバイザーとしてはRHELに含まれる業界標準のKVMを利用しており、OpenShiftのライセンスによってRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の仮想マシンを好きな数だけ利用できる。ゲストOSとてWindowsにも対応している。
Mullick氏によると、仮想マシンをOpenShift Virtualizationに移行しても、ライブマイグレーションも含め、従来どおりのオペレーション機能が使えるという。
氏は、ワークロードのモダナイゼーション方法の6-R(6つの「R」)として、Retire(引退)、Rehost(同じプラットフォームを違うハードウェアに移行)、Retain(現状維持)より、Replatform(プラットフォームの移行)、Refactor(コンテナアプリケーションへの移植)、Repurchase(作り直し)を推奨すると語った。
OpenShift VirtualizationによるReplatformでは、レガシーの仮想化環境からOpenShiftに移行することで、クラウドの柔軟性や拡張性を得られる。さらにアプリケーションのモダナイゼーションによってDevOpsなどもサポートされるとMullick氏は述べた。
この移行を助けるために、Red HatではOpenShiftの中でMigration Toolkit for Virtualization(MTV)というツールを提供している。なおWebの製品情報によると、MTVでは移行元として、VMware vSphere、Red Hat Virtualization、OpenShiftに対応しているとのことだった。
仮想マシンをOpenShift Virtualizationに移行することで、OpenShiftで使えるさまざまな機能を利用できるようになる。その例としてMullick氏は、Ansible Automation Platformによって新しい仮想マシンの立ち上げを自動化して必要な時間を数分に短縮できるケースを挙げた。
OpenShift Virtualizationのパートナー企業も存在する。その中でAWSでは、Red Hat OpenShift Service on AWS(ROSA)においてOpenShift VirtualizationをサポートしているとMullick氏は紹介した。
なおMullick氏に、VMware社の買収と製品再編にともなうVMware Sphereからの移行がメインターゲットになるのか質問したところ「いまはたしかにVMware vSphereで動いている仮想マシンが多く、そこからの移行は考えている。しかし、1つのプラットフォームだけがターゲットなわけではなく、われわれのビジョンは統合されたアプリケーションプラットフォームを提供すること」との回答だった。
Lockheed MartionやGoldman Sachsの事例
OpenShift 4.15におけるOpenShift Virtualizationの新機能については、Lauterbach氏が解説した。
まず、インスタンスのタイプとサイズを選ぶだけの3クリック操作で仮想マシンが立ち上がる機能が追加された。
また、OpenShift Data Foundationを利用して、2つの拠点で災害復旧(DR)を構成する機能が加わった。
そのほか、OVN-KubernetesやipBlockによって外部ネットワークとの接続をほかから隔離する機能も追加された。
OpenShift Virtualization/KubeVirtの導入事例もLauterbach氏は紹介した。
航空機製造のLockheed Martionでは、データサイエンスのプラットフォームに採用した。AIモデルを元に、Windowsの仮想マシンを作成してシミュレーションを実行し、その結果から訓練済みAIモデルを作成するという。
また、KubeCon Europe 2024では、Goldman Sachsが事例を発表した。既存の数千の仮想マシンをOpenShiftに移行して、数万までスケールできるようにしたという。
さらにLauterbach氏は、金融、小売を含むEC、通信事業者、製造、政府、軍、メディアとテクノロジーなど、さまざまな業界で利用されていると語った。