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Oracle、生成AI「OCI Generative AI」をリリース、Llama 2およびCohereの両LLMをシームレスに統合

 米Oracleは1月23日(現地時間)、ドバイで開催した「Oracle CloudWorld Tour」において、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI) Generative AI」サービスの提供を開始すると発表した。

 OCI Generative AIサービスは、Meta Llama 2およびCohereの大規模言語モデル(LLM)をシームレスに統合するフルマネージドサービスであり、幅広いビジネスユースケースに対応する。日本語を含む100以上の言語をサポートする多言語機能を提供するほか、これまでのベータ版ユーザーの声を反映して、GPUクラスタ管理のエクスペリエンスの向上に加え、企業が持つ自社データを活用し、柔軟なファインチューニングができる機能を新たに追加した。

提供開始:OCI Generative AI サービス

 米Oracle AIプラットフォーム/Generative AI Service担当バイスプレジデントのヴィノード・マムタニ氏は、「生成AIを活用し、データをビジネスに生かしたいという経営層の声が増えているが、モデルをゼロから作るのか、プレトレーニングしたモデルを活用するのか、使用しているアプリケーションに生成AIを利用するにはどうしたらいいのか、といったことに悩んでいるケースが少なくない。Oracleでは、高性能かつコスト効率が高い形で、生成AIを活用できる環境を提案できる。またOracleだからこそ、データ管理やデータセキュリティ、データガバナンスを大切にしながら、生成AIを活用できる」と述べた。

米Oracle AIプラットフォーム/Generative AI Service担当バイスプレジデントのヴィノード・マムタニ(Vinod Mamtani)氏

 OCI Generative AIサービスは、2023年9月からベータ版の提供を開始しており、約4カ月間で一般提供につなげた。現在、Meta Llama 2-70Bを利用でき、6カ月後には、Meta Llama 2-7Bが利用できる。またCohereでは、Command、Summarize、Embedが利用可能だ。

提供版に含まれる新しいモデル

 環境としては、Oracle Cloudで利用できるほか、OCI Dedicated Regionによるオンプレミス環境での利用も可能になっている。

 「OCIによる堅牢で、コストパフォーマンスが高いインフラ基盤で利用でき、セキュリティやプライバシーを確保した環境も実現している。低遅延であり、3万2768基のGPUによって構築された高性能なスーパークラスタ環境が活用できる。また、Oracle Autonomous Databaseもフルサポートしている。ユーザーは、データを保存している場所から、データを動かさずに、データがある場所にLLMを組み込むことができる。また、いかなる推論テータ、学習データも、MetaやCohereとは共有しない」と説明した。

 OCI Generative AIサービスの具体的なユースケースとして、セールスやマーケティング、カスタマオペレーション、製品開発のほか、法務部門や経理部門、戦略部門など、幅広い組織で利用できることも示した。

ビジネス機能全体の生成AIユースケース

 一方、RAG(検索拡張生成)エージェントを搭載したOCI Generative AI Agentsのベータ版の公開も発表した。

 RAG技術を活用することで、独自のデータを使用し、基盤モデルを改良できるため、社内独自のモデル運用が可能。LLMとOCI Open Search上に構築されたエンタープライズサーチ機能を組み合わせることで、エンタープライズデータによって強化した検索結果を導き出すことができる。

 「OCI Generative AI Agentsでは、専門的なスキルを必要とせずに、ユーザーが自然言語を通じて多様な企業データソースと対話することが可能になる。検索結果の情報は最新のものであり、元のソースデータの参照情報も表示する。具体的には、管理者は、RAGを社内のナレッジベースに接続することで、自然言語で質問でき、責任あるAIによって、エージェントが適切な回答を行う。OCI Generative AI Agentsは、既存のデータベースに組み込まれていることから、データを移動させる必要がない」と述べた。

OCI Generative AI Agents

 ベータ版ではOCI OpenSearchだけのサポートとなるが、今後のリリースでは、より広範なデータ検索や集計ツールをサポート。Oracle Database 23cのAI Vector Searchや、MySQL HeatWaveのVector Storeへのアクセスも可能になる。

 OCI OpenSearchにデータを格納してインデックスを作成する場合、RAGエージェントを通じて回答を作成することができるが、AI Vector Searchが活用できるようになると、Oracle Databaseのユーザーは、既存のデータベースのビジネスデータを活用して、インテグレーションのコストを掛けずにRAGを利用できる。

 Oracleでは、Oracle Fusion Cloud Applications Suiteや、Oracle NetSuiteを含むSaaSアプリケーションのスイート全体、Oracle Healthなどの業界別アプリケーションに、事前構築済みエージェントアクションを提供する予定だ。

 「Oracleでは、2024年中に、さまざまなエージェントを発表する予定であり、今回の発表は、そのひとつにすぎない。今後、APIを呼び出して、ワークフローを自動化し、生産性を向上させる機能や、複数の会話のユーザーエクスペリエンスをサポートするマルチターンジェントなどを提供する」と語った。

今後のOCI Generative AI Agents

 さらに、OCI Data Science AI Quick Actionsのベータ版を、2024年2月に公開することも発表した。

 「AIのデプロイメントやファインチューニングにおいて、データサイエンティストに対する選択肢を提供することができる。MetaやMistral AIなどの主要プロバイダーを含む、さまざまなオープンソースのLLMに、ローコードでアクセスできるようになる」とした。

 Hugging FaceのTransformersやPyTorchなどのオープンソースライブラリを使用したLLMの構築、トレーニングや導入、管理を支援するためにOCI Data Scienceの機能も拡張するという。

 またOracleは、ERP、HCM、SCM、CXなどのクラウドアプリケーションのポートフォリオ全体に生成AIを組み込むことで、顧客が既存のビジネスプロセスのなかで、最新のイノベーションを活用できるようにするほか、生成AI機能をデータベースポートフォリオにも組み込み、顧客が独自のAIベースのアプリケーションを構築できるようにするという。このほか、Autonomous Database Select AIにより、顧客は自社のエンタープライズデータと生成AIを組み合わせ、アプリケーション開発を加速させ、新しいビジネスソリューションを作成できるようにするとした。

 「Oracleは、エンタープライズAIを効率化、合理化するために役立つテクノロジーを提供する。いずれもエンタープライズでのユースケースを具体的に想定したものであり、インフラ、データ、AIサービス、SaaSアプリケーションといったすべてのレイヤーにおいて、カスタマイズ可能なAIを提供している。それらはすべて、データのセキュリティやガバナンスを優先したものであり、ビルトイン型ベクトルデータベースによってAIワークロードをサポートすることになる」などと述べた。