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NTT、ドコモ、NECの3社、移動する複数ユーザーにより干渉が発生しても無線伝送品質を維持できる40GHz帯分散MIMOの実証実験に成功

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、日本電気株式会社(以下、NEC)の3社は10月31日、複数の基地局アンテナを分散配置する40GHz帯分散MIMOにおいて、複数の無線端末が同時に同一周波数チャネルで無線伝送する(以下、マルチユーザー伝送)場合に、各分散アンテナで形成されるアナログビームフォーミングの干渉抑制効果を最大限活用するマルチユーザー伝送技術により、移動する場合でも、静止時と同じ無線伝送容量を実現する実証実験に成功したと発表した。

 これにより、イベント会場や工場などで、XR(Cross Reality)端末や無人搬送車など多数の無線端末が集まる環境でも、40GHz帯分散MIMOの活用により、安定した大容量無線伝送が実現できる可能性を示したとしている。

 実証実験では、屋内の29×15mのエリアに、基地局として14台の分散アンテナを設置し、4台の無線端末が移動する環境を模擬した分散MIMO構成の実験系を構築。まず、ビーム幅の狭いアナログビーム(以下、狭いビーム)を分散アンテナと無線端末の双方に適用した。その構成で、受信レベルが高い状態で維持できるよう、分散アンテナ・無線端末・ビームの組み合わせを選択するマルチユーザー伝送技術を行った。

 実証実験の結果、従来技術では無線端末が移動する場合、無線伝送容量が10分の1に低下したのに対して、狭いビームを活用したマルチユーザー伝送技術では、無線端末が静止時の無線伝送容量をおおむね維持することを実証した。

 基地局と無線端末が双方とも、狭いビームを用いてマルチユーザー伝送を行うためには、互いにビーム先を向ける相手となる、分散アンテナと各無線端末アンテナの組み合わせを決定する必要がある。この組み合わせの決定手法として、各組み合わせで互いに最適なアナログビームを向けた時の受信レベルを観測し、受信レベルの大きい組み合わせから順に、かつ、分散アンテナが重ならないよう、選択していく手法を考案した。

 狭いビームは広い方向に干渉抑制することが可能であるため、分散アンテナ側と無線端末側の双方で狭いビームの適用を可能とする同手法は、無線端末が移動する場合でも、その干渉抑制効果を維持し、安定したマルチユーザー伝送の大容量化が期待できる。

狭いビームを活用したマルチユーザー伝送技術

 さらに、無線端末の移動先を予測し、電波が遮蔽(しゃへい)される前に最適なアンテナ・ビームを選択することにより、40GHz帯分散MIMOが遮蔽環境でも安定した大容量無線伝送を実現できることも実証した。

 遮蔽がある環境の中を無線端末が移動する場合、電波の回り込みが起きにくい高周波数帯では、遮蔽物の裏に移動することで、無線品質の急激な低下や切断が発生する場合がある。NECは、無線端末の移動先を予測することで、遮蔽による急激な無線品質劣化の発生を予測し、事前に最適な分散アンテナを選択する技術を確立した。今回は、この技術を、基地局の分散アンテナと、無線端末のアンテナの両側においてアナログビームフォーミングを行う分散MIMOに拡張し、無線品質の劣化が発生する前に最適な分散アンテナとビームを選択する技術を開発し、実証した。

 エリア内の各位置で、分散アンテナごと・ビームごとの無線品質を持続的に測定し、各位置における最適な分散アンテナとビームを学習しておくとともに、運用時には、分散アンテナごと・ビームごとの無線品質を随時観測し、機械学習により無線端末の位置を推定する。さらに、過去の無線端末の推定位置から無線端末の移動先を予測し、次の無線品質情報を取得するまでの無線端末位置と最適な分散アンテナ・ビームを予測する。これにより、現在の無線品質情報に基づき選択した分散アンテナ・ビームだけでは、移動に伴う遮蔽により伝送性能の急激な低下や切断の可能性がある場合でも、移動する無線端末の予測位置に基づき適切な分散アンテナ・ビームを選択する技術により、無線伝送を継続できる。

 今後は、分散MIMOの実用化に向けて、多数端末が存在する駅前やイベント会場などの実サービス環境において実証実験を進めるとともに、分散MIMOの適用周波数の拡大を目指して、サブテラヘルツ帯など、さらに高い周波数帯の分散MIMOの適用・拡大を検討していくとしている。また、同技術については、11月14日~17日に開催予定の「NTT R&Dフォーラム2023 -IOWN ACCELERATION」で紹介する。